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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十八話『不思議な出会い』4

 翌日。

 まだ日が昇り始めた頃に俺は学園に登校していた。

こんな早起きは中々しないので、まだ瞼が重い。

 もちろん早朝に来ているのには理由がある。

 昨日、瀬那先輩に神人の生徒について知りたいとお願いしたところ、

「準備しておくから、早朝に来い」

 と言われたからである。

 俺はてっきり嫌そうな素振りを見せて許可してもらえないと思っていたが、案外簡単に了承してくれた。

まあ、集合場所は昨日と同じ風紀委員室だ。

 話す場所としては申し分もないだろう。

 さて、そうこうしている内に風紀委員室の前だ。

 俺はいつも通りノックをする。

「瀬那先輩、俺です」

「ああ、開いてるぞ」

 また書類で大変なことになっているだろうが、気にしない。

そう思って扉を開けると、昨日とは見違えていた。

「随分とすっきりとしましたね……」

 山積みになっていた書類が全て片付いている。

さらには本の整理等もされている。気分も楽になれるスペースに変わっていた。

「姉さんが手伝ってくれたんだ」

「瀬那生徒会長と瀬那先輩だけ……あの量を片付けたのは驚きです」

「いや、それは違う。私がやったのはほんの一部だ。

 ほとんどは姉さんが片付けてくれた。ついでに本の整理もな」

「それはさらに驚きですね……」

 どんだけ仕事が早いんだ、瀬那生徒会長。

 柊の母親を思い出すな。まあ、柊とは似ていないが。

「凄いよ、姉さんは。私よりも手際が良いし頭も良い。しかも私よりもスタイルがいいし……ついでにグラマーだし……」

「あの、瀬那先輩?」

「い、い、いや何でもない!! い、い、今の話は聞かなかったことしてくれよ……」

 へぇ……あの瀬那先輩が嫉妬か。

 意外に可愛い所があるんだな。俺としては少し嬉しい。

もちろんやましい気持ちはない。

「どうした、急に?」

 どうやら笑みが零れていたらしい。

「いえ、何でもありませんよ」

「そうか……なら構わない。それよりも神人の生徒について知りたいのだろう?」

 俺は瀬那先輩の問いに首を縦に振る。

 見ていた犯人を捜すために俺はここに居るのだから。

「とりあえず、事情を聞こう。まあ、また面倒な事に巻き込まれているのは分かっているが」

 さすがは幼馴染みだな……。

ついでに俺の扱いを改善してもらえるとありがたい。

「実は俺、誰かに見られているんです……」

「それは自意識過剰とかではなくてか?」

「当たり前です。いつも俺をどう思っているんですか」

「まあ、問題児だな」

「それが幼馴染みに掛ける言葉ですか……まあ、いいです。話を戻します。

 この違和感に気が付いたのはちょうど一週間前です」

 初めて覚えた違和感は一週間前の放課後だ。

俺が柊の部屋へと一人で向かおうとしていた時、それを感じた。

 あの時は気のせいかと思ったが、もうそれは気のせいではないのは分かっている。

「違和感を感じたのは司が一人の時か?」

「まあ、だいたいそうです。場所もほとんどが廊下です」

「一人で廊下にいたときに見られている感覚がしたのか……」

 俺に質問をした後、瀬那先輩は少し考え込む。

俺も考えたいところだが、残念ながら人望はないに近いからそういう事に関しては考えても無駄だ。

 ここは潔く瀬那先輩に任せよう。

 数十秒後、答えが出たようで瀬那先輩は顔を上げ、そして俺に驚きの表情を見せる。

「司……今回は珍しい奴に目をつけられたな」

「それはどういうことですか?」

「ちょっと待ってろ。心当たりがある」

 そう言って用意して神人の生徒資料に目を通し始めた。

 どうやら瀬那先輩は知っている人物らしい。

 相談した甲斐があったな。

俺がそんな感想を心の中で呟いていると、瀬那先輩はぱらぱらとめくった所で、あるページに目を止めた。

「これを見てくれ、司」

 言われた通りとあるページに視線を移す。

 そこには所属クラスである一年三組と宮美千草みやびちぐさという名前と無表情な顔をした少女の写真だけが載っていた。

「瀬那先輩、どうして彼女が俺を覗いていた犯人だと思うのですか?」

「もちろん絶対とは言えないが、ほとんどその可能性が高い。

 前からよく見知らぬ男子を後ろから見ているという話は出ていた。だけど、一か月前から無くなっていたからあまり気に留めなかった。

 まあ、まさか今の標的がお前だとは驚いたが」

「ちなみに彼女に見られて被害に遭った者はいますか?」

「いや、それが何も起きていないんだ。彼女は誰かを見ているだけで何もしないのだよ。

 そしていつの間にか他の者へ視線を移している。私にはよく行動が理解出来ない人物だ」

 そうなのか。

 とりあえず、危険な人物ではないことは分かった。

俺はそっと胸をなで下ろした。これで命の危機に関わることだったら大変だからな。

「さらに今回余計に分からないな」

「分からない……と言いますと?」

「彼女が誰かを監視していた期間はせいぜい一日か二日だ。それなのにお前だけどうしてそんなに監視する必要があるのが分からない」

 まさか俺に特別な感情を……持っているわけないか。

変な妄想は止めよう。これだから他の奴らに時々変な目で見られるのだ。

 なるべくそういうのは表に出さないように努力しよう。

「司は何か分かるか?」

「そうですね……残念ながら俺にもそれは分かりません」

「そうか。なら、ちょうど良い機会だ。今日、合同委員会の件があるだろう」

「そういえばありましたね……」

 嫌な事を思い出せないでください、瀬那先輩。

「最初は親睦深めの第一ステップとして一年三組に行ったらどうだ?」

「確かにそれは名案ですね……」

 嫌だとはいえ仕事も出来て彼女の事情も聞ける。まさに一石二鳥だな。

 それを断る理由はない。

「どうだ?」

「もちろん、いいですよ」

「よし、そうと決まれば……はいこれ」

「えっ……これはどうゆう?」

 昨日のように雑巾とバケツを渡される。

 まさかまた掃除ですか……。

「もちろん掃除だ。こんなに朝早く来たのだからあるに決まっているだろう」

 ですよね、分かっていました。

「はぁ……分かりましたよ」

「それじゃあ、頼んだぞ」

 そう言って瀬那先輩は自分の部屋へと向かおうとする。

「あの、瀬那先輩? 俺はどこを掃除すれば……」

「ああ、今日は教室な」

 笑顔でそう言い放ち風紀委員長室へと入っていった。

 なんて理不尽なんだろう。

 




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