第十八話『不思議な出会い』3
だいぶ内容を修正しています……すいません。
「「おお~!!」」
瀬那生徒会長が用意したランチボックスを開けると多種多様なサンドイッチが入っていた。
それに思わず俺や荒井先輩は驚きの声を出す。
先ほどのおにぎりとは大違いだ。
俺と荒井先輩の反応を見ていた瀬那生徒会長は嬉しそうに微笑んだ。
「どうぞ、たくさん召し上がってね」
「はい、いただきます!!」
「僕もいただきますよ」
選り取り見取りで豪華だな……。
少し迷ってしまう。よし、まずは定番のツナサンドをいただくとしよう。
手を伸ばし、ツナサンドを口に運ぶ。
「……!! 美味しい……」
ツナサンドってこんなに美味しい食べ物だったのか……。
とにかくこのツナサンドは本当に美味しい。
「最高です、瀬那生徒会長!!」
「それは良かったわ!! そんなに美味しそうに食べてくれるなら、作ったかいがあったわ」
「僕も涼風君と同意見です」
どうやらカツサンドを食べていた荒井先輩も美味しかったらしい。
まあ、それはそうだよな。このサンドだけが非常に美味しいわけではないよな。
「まあ、姉さんは料理得意だからな……」
瀬那先輩が少し拗ねたような口調で呟く。
「あら、真央ちゃん。もしかして料理作るの苦手なのかしら~」
「ば、ば、ばかを言うな!! ただ面倒くさいだけだ!!」
「いいのよ、真央ちゃん。そんな所も私は好きよ」
「普通に真央と呼んでくれ……」
この会話を見ていると気分がだいぶ軽くなるな。
瀬那先輩は諦めたかのように玉子サンドを頬張っているけど、楽しんでいるのには違いない。
「でも、やっぱり姉さんは上手だな」
先ほどよりは機嫌が良くなっている。
それは何よりと思い、俺は内心ほっとする。
「うんうん、真央ちゃんが機嫌を直してくれて良かったわ」
瀬那生徒会長も楽しそうに笑みを浮かべている。
とりあえず、腹はこれで満たされそうだ。
「あっ、そういえば」
俺はとある疑問を思い出す。
「どうしたの、司君?」
「いや、今更ですが瀬那生徒会長と荒井先輩はどうしてここに来たのですか?」
サンドイッチをいただいておいて失礼だと思うが、それでも気になるのだから、仕方がない。
すると、俺の気持ちを察してくれたのか、瀬那生徒会長は嫌そうな表情をすることなく話してくれた。
「理由は簡単、真央にどうしても話しておきたいことがあったからよ。もちろん、隣にいる彼も司君にもね」
「俺にもですか?」
瀬那生徒会長は頷く。
俺に関わる話とはいったい何だろうか。
サンドイッチをつまみつつ、話の続きに耳を傾ける。
「司君は神王戦についてはご存知かしら?」
「まあ、分かります」
さっきその資料に目を通したばかりだしな。
「なら、話は早いわ。実はね……今年から人間と神人の合同で神王戦の準備をすることにしたの」
「……!! 姉さん、それ本当か!?」
瀬那先輩は驚きのあまり、サンドイッチを落としそうになっている。
そんなに驚く事なのか……。俺はその反応にびっくりだ。
瀬那生徒会長は先ほどのように頷いた後、すぐに話を再開する。
「ええ、本当よ。今までの神王戦を一週間で確認していた時に気が付いたわ。
今こそ人間と神人の親睦を深める良い機会だとね」
「でも、それは難しいと思います。何せ、神人は人間に対して敬意も好意などの感情を抱いていないですから」
「確かにそうね。だからこそ、今から始めるべきだと思うの。
それに今までは権力の強い者が、この学園を握っていたのを今年で変えたい」
確かにその通りだ。
俺は別に気にしていなかったが、人間の生徒達の中にはそのような大会に参加したいと思っているはずだ。
その中には神人を超える者もいるかもしれない。
そんな可能性ですら潰してしまうのはあまりにも酷い。
俺だってそう思う。あくまで客観的にだけどな。
「姉さん、言いたい事は分かったが……それを私に相談してどうする?」
「えっ? そんなの真央に許可をもらうためよ? 一応司君の指導役でしょ」
「どうしてそこで俺の名前が出てくるんですか……」
「もちろん司君に合同委員会に参加してもらうためよ」
えっ……聞いていないな、それ。
まさかその為にこんな豪華な昼食を用意したわけじゃないよな。
「大丈夫よ、司君。このサンドイッチで見返りを求めようなんて思っていないから」
「でしたら、どうして俺や荒井先輩なんですか?」
荒井先輩は良いとしても俺みたいな問題児が介入したら間違いなく破滅すると思う。
あの一件で俺は柊を除いた神人から冷たい目で見られるようになった。
それなのに瀬那生徒会長は俺を参加させようとしている。どうしてだ、俺には見当もつかない。
すると、瀬那生徒会長は申し訳なそうな表情を浮かべた。
「残念ながら人間の中で協力しようとする者を探していたけれど見つからなかったのよ。だから、最後の望みとして知り合いの司君と荒井君にしかいないの」
「もう既に親睦を深めるなんて不可能に等しい気がするのですが」
「そんな事を言うな、司。協力してやれよそれぐらい。私は許可する」
「えっ? いや、俺だって色々と事情が……」
「罰則、忘れたか?」
「……分かりました。ある程度は協力します」
こんな時でさえ、あの無期限罰則が俺を邪魔をするとは。
あの時の自分を恨みたい。
「本当に? ありがとうね、司君!! 後はどう、荒井君?」
「僕は全然大丈夫です!! あの、真央ちゃんも参加するんですか?」
その質問を聞いた瀬那先輩はものすごく嫌そうな顔をする。
「もちろん、参加してもらうわ」
「姉さん、私は……」
「二人が参加してくれるのだから、当たり前でしょ」
「そうだよな……」
荒井先輩は嬉しそうに、瀬那先輩は今にも消え入りそうな暗い表情をしている。
まさに正反対だな。
そんな感想を持ちつつ、俺も抵抗するのを諦めた。
俺を覗いていた奴を探すのに丁度良いし、こんなに瀬那生徒会長が懇願しているのだから断るのは悪いか。
神人フロアに、特別なことがない限り人間は入ることは出来ない。恐らく神人の生徒のはずだ。
後で、生徒の資料だけ瀬那先輩にお願いして確認するか。
「とりあえず、全員大丈夫で良かったわ!! それじゃあ、明日からお願いね」
「分かりました……」
いきなりですか……。
最近、俺の扱い酷いのは気のせいだろうか。
まあ、我慢するしかない。
荒井先輩は瀬那先輩がいるおかげでやる気満々だし、瀬那先輩は消沈しているからな。
とにかくやるしかない。
そう思いつつ俺はもう一つサンドイッチを口にする。
くっ、どうしてこんな時まで美味しいんだよ……。
俺の苦難はまだ始まったばかりだ。