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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第四章 決断編
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第十八話『不思議な出会い』2

「はぁ……ようやく終わったな……」

 時間は既にお昼を回っている。

くっ、俺の大切な休日が……。

 自分自身を恨みつつも、俺は瀬那先輩に報告するために風紀委員室に移動する。

 それにしても俺はどれだけあの部屋に行っているのだろうな。

もう数えられないほど足を踏み入れている。もちろん、ほとんど強制だ。

 普通ならほとんど風紀委員室はもちろん、委員長室にも入ることはない。

改めて自分が問題児であることを実感してしまう。いや、俺は問題児じゃないぞ。

 とりあえず、俺は疲れているとだけ言っておこう。

 まあ、そうこうして中に入るのが憂鬱な部屋に辿り着いた。

「瀬那先輩、俺です」

 一応ノックし、中に向かってそう言った。

 数秒後、

「司か? 入れ」

 瀬那先輩の許可が下りた。

それを確認し、中へと入る。

 以前と比べて書類が山積みになっている。

瀬那先輩も大変なんだな……。とはいえ、扱き使うのには納得いかないが。

「神人フロアの窓ふき、全て終わりました……」

「おう、それはご苦労様だ。机の上に昼食を用意してある。お腹が空いているだろう?」

「まあ、そうですけど……」

 あの瀬那先輩が……昼食を?

少し疑心暗鬼になる。

 今まで俺にそのようなご褒美はなかった。

 たまにいいことがあるようだ。

「安心しろ、変なものは仕込んでないから」

 呆れた表情を浮かべながら瀬那先輩はそう答えた。

「そうですか……」

 まあ、たまには優しい所があるのだろう。

そう思って俺は黒い長机の下へ移動した。

 が、

「……えっ?」

「どうした? 食べないのか?」

「いや、食べますけど……これだけですか?」

 明らかにおかしい。

 今どき昼食におにぎり一個って……。

いつの時代のブラック企業だ。

 もしかしたら他にもどこかに用意しているのではないかと淡い期待を抱いたが、それはすぐに粉砕される。

「当たり前だ。問題児にはそれだけで充分だ!!」

「……それ、八つ当た――」

「何か言ったか?」

「いえ、何でもありません……ありがたく頂きます」

 もう、その目と銃のダブルコンビは恐ろしいので止めてください……。

本当に寿命が減るから。

 なんて理不尽だろう。

 俺は文句を言うのを諦め、素直に一つのおにぎりを食べる。

……具無しかよ……しかもしょっぱい……。

「はぁ……」

 ついため息を吐いてしまった。

 とりあえず、空腹にはならないから良しとしよう。

それにしても、瀬那先輩やっぱりいつも機嫌が悪いよな。

 あの疲れ切った目と表情は疲労とストレスの証拠だ。

「まったく……どうして……私ばっかり……」

 ついに愚痴をこぼし始めた。

「大丈夫ですか、瀬那先輩?」

「これが……大丈夫に見えるか、司?」

 なに、その引き攣った笑みは。

今日、本当に機嫌悪いな。

 さすがに可哀想になってきた。

「一度、休んだらどうですか」

「そうしたいのは山々だが、神人の奴らが仕事をしないからな……」

「……? どうしてそこで神人の話が出てくるんですか?」

 俺がそう尋ねると面倒くさそうにとある資料を投げつけてきた。

「それに書いてあるから、自分で確認しろ」

「はい……」

 瀬那先輩に言われた通り資料に視線を向けてみる。

どれどれ……第十五回『神人王座決定戦』略して――『神王戦』か。

 もう少し詳しく見るとどうやらその神王戦と呼ばれる選抜メンバーを選ぶための準備らしい。

 女神コスモス学園にこのような事をやっていたとは知らなかったな。

「ん? 瀬那先輩?」

「どうした、司?」

 俺は大体内容を理解した後、少し気になったことがあった。

「あの、ここの仕事担当が神人風紀委員になっているですけど……どうしてその仕事を瀬那先輩がやってるんですか?」

 今の書類処理は本来は神人側の風紀委員がやるべきであっても瀬那先輩がやることではない。俺が見た限り、仕事担当の欄には瀬那先輩側の風紀委員分担はほとんどなかった。

それなのに瀬那先輩を様子を見ると、他の仕事もやっているように思える。

 俺はそれがどうしても気にかかった。

 質問を受けた後、瀬那先輩は少し怪訝そうな表情を浮かべながら、

「全て丸投げされたんだよ……」

「丸投げですか……」

「ああ、まったく神人の風紀委員は気に食わない。特に委員長にはな!!

 実力があるからって……調子に乗りやがって」

 今まで見せたことのない暗い表情を瀬那先輩はしている。

よほど最低な奴なのだろう……。ひいらぎみたいな優しい神人ばかりではないということか。

 まあ、分かりきっていることだな。

 瀬那先輩はだからと言って話を続ける。

「だから、少しくらいストレスをお前にぶつけても文句を言うな。私だって大変なのだ……」

「はぁ……分かりました」

 やっぱり個人的な恨みが入っていたか。

そいつに会ったらとことん文句を言ってやりたい。

 とはいえ、すぐに手出し出来る相手では無さそうだ。

 俺が瀬那先輩に共感していると、、

「それにもう一つ私がこうなっている原因があるんだ……」

「もう一つあるんですね」

 何だか瀬那先輩を話を聞いていると自分が情けなくなってくる。

これからは多少は我慢することにしよう。

 それはさておき、その原因を聞こう。

「実はだなあら――」

 瀬那先輩が説明しようとした瞬間、バタンという音がし、

「真央ちゃん!!!!」

「ひいっ!! 来るな、この変態!!」

 入ってきた聞き覚えのある男性に銃を発砲した。

「ぎゃあぁぁぁ!!!!」

 その男性は近くの壁に吹き飛ばされ、傍にあった資料に埋もれた。

「瀬那先輩……容赦ないですね」

「こいつだけは……本当に嫌いだ!!」

 こんな会話を以前したのを覚えている。

まあ、そんな言うほど時間は経っていない。

「いきなり発砲とは……さすが僕の真央ちゃんだ」

「誰がお前のだ!! それにその呼び方止めろ!!」

「はっはっ……そんな恥ずかしそうにしている真央ちゃんも可愛い」

「相変わらずなんですね……先輩」

 もう変態に近いこの人は荒井崇人あらいたかと先輩だ。

瀬那真央せなまお先輩のことが好きで好きで仕方がない残念な先輩。

 まあ、言動以外は普通の人より上で美形だ。噂だと普通に人気があるらしい。

いや、全然羨ましくないからな。

「おっ、君は涼風君ではないか!! 元気そうでなによりだ」

「荒井先輩の方こそ、元気そうで良かったです」

 もう体調は大丈夫そうだ。

 荒井先輩は神の作り手ゴッドメーカーに利用されていたからな。

今でもそんなのは一切感じない。本当に安心している。

「ああ、僕は真央ちゃんがいるから元気だ!! 涼風君にはやらんぞ?」

「俺と荒井先輩はいつからライバルになったんですか……」

 前より変態ぶりに磨きがかかっているのは気のせいだろうか。

 きっと気のせいだよな、たぶん。

「何を言う、涼風君? そんなの決まっているだろう……会った時からだ!! 友でありライバルではないか」

「はぁ……そうなんですね」

 勘違いが酷いな、まったく。

 俺が呆れていると荒井先輩から握手を求められる。

「これからもよろしく頼むよ」

「はい、こちらこそ」

 その男前スマイルに嘘はないと信じ、握手を交わした。

 まあ、悪い先輩ではない。

「それで、荒井先輩はどうしてここに?」

「それはもちろん真央ちゃんの手伝いさ。ねえ、真央ちゃん?」

「一回、死んでくれ」

「うん、そんな真央ちゃんも悪くない!!」

 これは茶番なのだろうか……。

 とりあえず、分かることは瀬那先輩の怒りが頂点に達していることだ。

非常にまずいな。本当にやばい。

「だから……だから……何で私ばかりこんな目に遭うんだ!!」

 怒りが爆発してしまった瀬那先輩は俺達を睨み付ける。って俺も?

 銃口は俺と荒井先輩、どちらにも向いている。

いや、瀬那先輩ってやっぱり怖いな……。

 こういう時は、先輩である荒井先輩に、

「いいぞ、真央ちゃん!! 僕達にその怒りをぶつけてくれ!!」

「いや、俺を巻き込まないでください!!」

 駄目だ、これは。

 これはもう諦めるしかないな。

そう思った矢先、再び扉が大きく開き、

「真央、落ち着きなさい」

「姉さん……いたのか」

「まったく、少し我慢するように。まあ、そこが可愛いだけどね」

 今度は少しシスコンな瀬那麻里せなまり生徒会長さんの登場だ。

でも、救われたので嬉しい限りだ。

 冷や汗がやばいな。

「とりあえず、一度みんな休憩にしましょう。司君も何だか不服そうだし……」

 まさか表情に出ていたか。

 まあ、本当の事だから否定はしない。

「まあ、姉さんがそう言うなら……」

「よし!! 真央が休憩するから昼食にしましょうか。もちろん司君、荒井君もね」

「ありがとうございます!!」

 荒井先輩と瀬那生徒会長、凄い嬉しそうだな。

 まあ、いい。

 とりあえず、ようやく俺は休憩というなの安らぎを得た。

今度はしっかりとした食事が出来そうだ。


 

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