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最強の問題児と最弱の神人少女  作者: 鈴夢 リン
第三章 奮闘編
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三章 エピローグ

「はぁ~……。疲れたな……」

 訓練の疲れもあってか、俺は柊の部屋の椅子にぐったりと座っていた。

「そうね、久しぶりのみんなとの訓練だから少し張り切り過ぎたわ……」

「僕も技の練習しすぎで足が痛いよ……」

「もう皆さん、無理は駄目ですよ」

 俺と同じように疲れたように椅子に座る柊と伊吹。

そんな俺達を見て呆れた表情を浮かべる七瀬。

 いつも通りの光景だ。一週間とはいえ、どこかにはこんな光景が恋しい俺がいる。

きっと俺がこんな日常が好きだからだろう。

 ようやく忙しい状況は終わったしな。

 俺はついに休息が得られる。

 そう思っていると、ふと気になっていた事を思い出す。

「そういえば、柊って紅茶を組めるか?」

「何よ、その藪から棒に……」

 俺がその質問をすると、柊は少し怪訝そうな顔をした。

まあ、疲れているからだろう。

「まあ、何となく。それで、どうなんだ?」

「……組めなくはないけど……」

「そうか。じゃあ、俺に紅茶を飲ましてくれないか?」

「ど、ど、どうして司に紅茶を組まなきゃいけないのよ?」

 柊はより嫌そうな表情をする。

そんなに紅茶を組むのが嫌なのか……?

「いいだろう、別に。今回は柊の為に特訓に付き合ったんだし、それぐらいの見返りは求めていいだろう」

「……問題児」

「だから、問題児は関係ないだろう」

 それに俺は問題児……だったな。

もう、言い訳は出来ない。

「分かったわよ。少し待ってて」

 そう言って、柊は部屋の隅に移動する。

 よし、これで確かめられるな。

 すると、伊吹と七瀬が俺の下に近付いてきた。

「司、今のはどういうこと?」

「私も少し気になります」

「伊吹と七瀬には話すが、実はな――」

 俺は伊吹と七瀬に小声で説明した。

 その話というのは俺が柊の試合を見に行った時に柊の母親に会ったというものだ。

「柊さんの母親とまさかお会いしていたとは……知りませんでした」

「うん、僕も初耳だよ」

「でも、それと柊さんの紅茶組みにどう繋がるのですか?」

「いや、その俺が柊の母親と会ってまず思ったことが……柊と全然似ていないと思ってな。

 柊の母親は清楚で美人で優しい……まさに男子の理想だった。だけど、柊は時々素直じゃないし、俺に冷たい。

 俺から見て到底親子だとは思えなかった」

「司、それは柊さんに対して酷いと思うよ?」

「いや、別に悪口を言ってるわけじゃない。ただ少し疑問に思ったんだよ」

「まあ、言いたい事は分かりました。私も母親に会ってみたいものです……」

「僕も気になって来たよ」

 どうやら理解してくれたらしい。

いや、本当に柊の悪口は言ってないからな。

 これはただ俺が気になっただけだ。

 きっと彩那さんのように紅茶は美味しいはず……。

「……お待たせ」

「おっ、来たか。……ってえ?」

 これは何だ。

 まず俺はそんな感想を覚える。

 なるほど、柊がこんなに嫌がっていた理由はそういう事か。

伊吹も七瀬も少し絶句している。

「ほら、紅茶よ。さっさと飲みなさいよ……」

「ああ、飲む」

 色はないけど、しっかりした紅茶のはずだ。

そんな淡い希望を持ちながら、俺はほとんどお湯に近い飲みものに口を付けた。

 うん、やっぱりお湯だ。

 どうしたらこうなるんだよ……。

 紅茶のこの字もない。

薄め過ぎだ、これは。

「ほら、どう!! これが私の紅茶よ!! 紅茶を組めなくて悪かったわね!!

 バカにするならバカにしなさいよ、問題児!!」

 少し怒り気味で柊は俺にそう言い放った。

 なるほどな……。

俺は一つ理解出来た。やっぱり柊の母親と似てない。

 だけど、改めてこれが柊らしさなんだと感じた。

「バカにしないの……?」

「確かにこれは紅茶じゃない。だけど、俺の為に頑張って淹れてくれただろう」

「べ、べ、別に司の為じゃないわよ!! ただ、お礼としてやっただけだから」

「それは分かってる。だから、これは喜んで飲むさ」

 俺はそう言って、飲み物を飲み干した。

 まあ、お湯だけどな。

でも、柊が組んでくれたものなら飲める気がする。

「ありがとう、柊。疲れが吹き飛んだ気がする」

「む、む、無理して気を使わなくていいのに……」

「俺は全然気なんて使ってない。ただ嬉しかっただけだ」

「……そういう時だけは優しいだから……」

 柊は少しいじけながらそう呟いた。

「まあ、とにかくありがとうな」

「お、お、お礼なんていらないわよ。今日はもう帰るから」

「そうか。じゃあな」

「ええ」

 柊は少し急いでいるように部屋を出て行った。

 やっぱり嫌だったのか……。

まあ、でもこれで良かったよな……たぶんだけど。

「何か分かったの、司?」

「まあ、一応な」

 伊吹の問いに俺はすぐに答える。

「なら、いいや。僕もこれで帰るね」

「また明日な」

「うん」

 続いて伊吹が部屋を退出した。

そして、

「もう少しくらい柊さんの気持ちを考えた方がいいですよ」

「ん? どういう意味だ?」

「こういうのは司君駄目ですよね……。まあ、いいです。それでは私もこれで」

「おう、分かった」

 何やら意味深な言葉を俺に言って七瀬も部屋を出た。

 柊の気持ちか……。

あいつ、素直じゃないから俺にはまだ理解出来ていないことが多いのだろう。

 これから少しずつ分かっていけばいいか。

 さて、俺も帰るとしよう。

 片付けをし、部屋を出ようとした。

だが、

「待て、司」

 そこに鬼のような顔をした瀬那先輩がいた。

 あ、忘れてた。

今になってようやく思い出した。そして、嫌な予感が同時にしてくる。

 というより、瀬那先輩いつの間に入って来たんだよ。

「な、な、何でしょうか、瀬那先輩?」

「決まっているだろう……? お前が問題児だからだ!!」

 カチャ。

 俺は銃口を向けられる。

「今からたっぷりと可愛がってやる」

「いや……俺はもう帰宅するので……」

 俺が何とか銃口をどけようとするが、

「いいじゃないか。幼馴染みの仲だし、ゆっくりと話そう。

 なあ、司?」

 まずい、このままでは……。

 ここは瀬那先輩を褒めよう。

「そういえば、瀬那先輩大きくなりましたね~。少し成長したんじゃないんですか?」

「貴様、死ぬ覚悟は出来ているか? 私の身長は伸びも縮んでもいない!!」

「あ、あ、あれそうでしたけ?」

「さて、司。歯を食いしばれ」

「顔が笑っていないですよ。ほら、スマイルスマイル」

 終わった……。

 ついに瀬那先輩の怒りは極限に達した。

「この問題児が!!!!」

「どうしていつもこうなるんだ!! ぎゃあああぁぁぁ!!」

 どうやら俺の休息はまだ訪れないらしい。

むしろこれからが余計に忙しくなりそうだ。

 だが、仕方がない。

 俺はもう問題児だから。

 はぁ~……最悪だ。

俺は大きなため息を吐きながら、瀬那先輩に散々と言われるのだった。



 第三章奮闘編 完

 



 


 以上で三章完結です。本当にここまで読んでくださってありがとうございます!! まだまだ続きますのでこれからもよろしくお願いします!!

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