第十七話『問題児はどこまでも突き進む……』4
三章、クライマックスです!!
「はぁぁああああ!!!!」
「やぁぁぁあああああ!!!!」
俺と伊吹の声が重なる。
力強い気合。もちろん、俺も負けていない。
剣と槍の衝撃が返ってくる。相変わらずとんでもない力だ。
俺はこんな面白い相手と戦ってみたかったぞ、伊吹。
ふっ。ふと笑みがこぼれる。
案外、俺って変なのかもな……。
「僕もだよ、司」
「お、お、おう……」
まさか俺の思っていた事が分かるとは驚きだ。
伊吹はそう言い、俺の方を見て笑っている。天使の笑顔とはまた違う表情。
伊吹も楽しいんだな、まったく。
だから今まで気が合ったのかもしれない。
「あのさ、司」
「ん? 何だ、伊吹?」
「僕ってね、司のようにまっすぐ突き進める性格じゃないし……最初司が僕をどちらのチームに居させるか勝負で決めるって言った時正直不安だったんだ……。
もう少し平和的な解決はなかったのかなと思ってね」
「それは……すまん」
そのことに関しては謝るしかない。
俺だってあの時は焦っていたからな。
「別に気にしないでいいよ。自分の本当の気持ちに気が付けたからさ。
司のおかげでここまで頑張れた。司と戦いたいという気持ちが僕を動かしたんだ。
だから、僕も今が楽しい。司と同じように僕も変だね」
「そうだな、まったく」
会話をしながら、攻撃を仕掛けてくるなんて本当に予想外だったけどな。
これが、伊吹の誠意なのだろう。
一つ一つの突きから伊吹の思いが伝わってくる。
楽しい。
今の俺にはそれだけで十分だ!!
「さて、伊吹。話はもう終わりだ。
さすがに俺もそれでは集中力が削がれるしな」
「それもそうだね。僕も疲れてきたよ。
さすが最強だね」
「当たり前だ。俺は最強の問題児だからな!!」
俺は能力消滅剣を伊吹に向ける。
もう、伊吹の弱点は分かっている。
速いが故に、遅い動きに対応できない。それが勝利のカギ。
もちろん、伊吹も自分の弱点は理解している。
次の一撃で終わらせる。終わるのだ、この試合が。
取るか取られるか。まさに瀬戸際だ。
でも、負けない。
「行くぞ、伊吹!!」
「来て、司!!」
伊吹も槍衾を構えた。
最後の勝負だ、伊吹!!
束の間の静寂、そして……
「はぁぁぁあああああ!!!!」
「やぁぁぁぁああああああ!!!!」
力強い雄たけびとともに俺達は放つ。
――光速切り。
――疾風突き。
発動したのは数秒にも満たない。
だが、これで決まるのだろう。
やっぱり速いな、伊吹の突きは……。
何度見ても驚いてしまう。
ふっ。再び笑みがこぼれる。
こんな瞬間でさえ、俺は楽しい。
相手と戦って苦戦して、最後に大逆転して勝つのが本当に楽しくて仕方がない。
だから、今回も大逆転だ!!
シャイニングブレイクはゲイルショットにはもちろん勝てない。
そんな事は百も承知だ。
さあ、見せてやる。俺の最強を。
俺だって速さに自信があるからな。
技が激突する寸前、俺は走る。
そして、スキルキラーで自分の技を粉砕した。
「――っ!?」
一瞬、伊吹が動揺した。
伊吹の槍先はシャイニングブレイクだった。
フェイントに引っかかったな伊吹。
後はファランクスを払うだけだ。
これで終わりだ、伊吹!!
「「……」」
キイイイィィィン……!!
鈍い音が辺りに鳴り響く。風も発生する。
だが、もちろん今までの鈍い音とは違う。
スキルキラーに跳ね返され、ファランクスが遠くに飛んで行った音だ。
飛んで行った伊吹の槍はその後、地面に突き刺さった。
「俺の勝ちだな、伊吹!!」
「うん、僕の負けだよ」
俺は伊吹のペンダントを外し、上に掲げた。
「勝者、涼風・七瀬ペア!!」
『うぉぉぉおおおおおおお!!!!』
審判の試合終了の合図とともに大歓声が起きた。
はぁ……何とか勝てたな。
俺は地面に座り込む。
「勝ちましたね、司君!!」
鶴川と戦っていた七瀬が俺の元へきて嬉しそうにそう言った。
「ああ、そうだな」
「まったく、楽しみ過ぎですよ……」
「すまん。つい我慢できなくてな。なあ、伊吹?」
「うん!!」
鶴川と一緒にいる伊吹は輝いた笑顔で頷いた。
やっぱり伊吹は可愛いな。
まあ、とにかく何とか無事に終わってよかった。
俺は心の底から安堵した。