第十七話『問題児はどこまでも突き進む……』1
いよいよ三章終盤です!!
翌日。
いよいよ団体戦三回戦当日である。
今思えば、ここまで来るのに随分と理不尽な目にあってきた。
鶴川達のチームと対戦が決まったり、伊吹をこちらのチームに居てもらう為に交渉してもらったり、柊のために特訓に付き合ったり……とまあ本当に色々あったな。
とりあえず、今日が終わればひと段落だ。
まあ、罰則があるけどな。
それは今は気にしない。
鶴川と伊吹達のチームに勝ち、伊吹を俺達のチームに改めて入れる。
それだけを俺は考えていればいいんだ。
久しぶりに今日、伊吹の姿を見たが前に会った時とだいぶ雰囲気が変わっていた気がする。
伊吹も相当やる気のようだ。
恐らく俺の予想だにしていない手を使ってくるかもしれない。
だけど、俺だって負けてはいられない。
今回の試合形式はペア同士での対決だ。
ルールは簡単で、相手のペアのペンダントを奪い取るか戦闘不能にするかだ。
もちろん殺傷性の高い技は禁止で、戦闘不能は相手が降参したことで取られるようになっている。
団体戦も本格化してきた。気が抜けない試合が俺達に待っているだろう。
ちなみに俺のペアは七瀬だ。
まあ柊は元々参加出来なかったので、俺とペアになれるのは七瀬しかいなかったこともあるが。
伊吹のペアはもちろん鶴川だ。
昔から一緒に訓練しているわけだから、息はぴったりのはずだ。
とはいえ、こんな風に考えていても仕方がない。
為せば成るだ。俺はただ突き進めばいい。
闘技場の控え室ではただ精神統一をすればいいだけだ。
まったく、少し緊張しているかもな。
七瀬は先に試合フィールドで待っている。
俺は最後に一人で集中したいと頼んだからだ。
そのお願いを七瀬は一切断ることなく了承してくれた。
でも、今考えるとそれは必要なかったかもしれない。
一人にしてくれなんて変に考え事して逆にモチベーションが下がるかもしれなかったしな。
そんなくだらない後悔は置いておくとして、とりあえずもう大丈夫そうだ。
そろそろ試合フィールドに向かった方がいいな……。
俺はベンチから立ち上がり、能力消滅剣を手にする。
「さて、行くか!!」
自分を奮い立たせ、一歩一歩足を進める。
控え室を出た後、試合フィールドまでの一直線の廊下を歩く。
この廊下を歩くのもこれで三回目だというのに何だか新鮮な気分だ。
少しずつ奥から歓声が聞こえてくる。
もうそろそろか……。
気が付いたころには試合フィールド前に俺は来ていた。
「あっ、やっと来ましたね」
俺の姿を見つけた七瀬が俺のもとに走ってくる。
「悪いな、七瀬。結構待たせてしまった」
「いえいえ、気にしないでください」
少し時間を掛けてしまったが、七瀬は気にしていない様子だ。
試合開始二分前とはいえ間に合っているのだから大丈夫か。
「色々と大変だったみたいですね」
「まあ、そうだな」
昨日まで柊の為に奮闘していたからな。
もちろん、大変だったのは説明するまでもない。
七瀬にもそれは伝わっているから俺にそんな話をしたのだろう。
「とりあえず、ここまでお疲れさまです。でも、これからが本番ですよね?」
「それは当たり前だ。これは俺と七瀬、柊にも関わることだからな」
柊の一件は終わった。
だから、俺の目的は一つだけである。
「なら、大丈夫そうですね。一緒に頑張りましょうね」
そう言って七瀬は微笑んだ。
「ああ、もちろん。よろしくな、七瀬」
「はい!!」
準備はこれで完了だ。
後は伊吹と鶴川達だな……。
そう思っていると、
「司君、来ましたよ」
七瀬がそう呟き奥から出てくる伊吹達を指差した。
ふっ、楽しみだ……。
俺は伊吹達に視線を移す。
「待ってたぞ、伊吹」
「僕もだよ、司。早く試合をしたかった」
「見てなさい、あなたたち。コテンパンに捻りつぶしてあげるから」
凄いやる気だな……。
表情からもそれがよく伝わってくる。
いつも天使と間違えるほどの伊吹も今日は真剣な表情を浮かべている。
鶴川はもう短剣を構えて、やる気満々だ。
「本気でかかってこい」
「もちろん、そのつもりだよ!!」
なら、もう言葉は必要ない。
両チームが揃ったのを確認した審判が後ろから出てくる。
「それでは、両者構え!!」
その指示で俺達は武器を構えた。
それを確認した審判は手を大きく振り上げそして、
「両者、始め!!」
勝負だ……伊吹。
こうして、試合の火ぶたが切って落とされるのであった。
次回から再び戦闘シーンです。