家族?
神同士の言い合い初めてから数十分が経過し…
「だから、あんたは………いいから静かに………ちょ、飛び掛るな~………」
{うるさいのです………あたしに命令………が~~~………}
雄樹はそれを眺めていたが、麻奈は途中から、リビングを気にしながら調理に戻っていたので、ほどなくし、カレーのにおいが部屋を包み始めた。
雄樹の後ろに麻奈が近づき、小声で、
「お兄…もう、ほとんど、完成するのだけど…」
「ん…わかった」
(さすがにこれ以上は晩飯もあるし、話を進めさせるか…)
「それくらいにしろ、まったく…話が進まないし時間が惜しいから、こちらから質問したことに答えてくれ」
「む~…わかったわ…」
少し強めに言ったせいか、狐(神)はしゅーんとし、稲成之命は素直に頷いた。麻奈も、雄樹の後ろから覗いてた。
「まず、本題に入る前に聞くが…あんたのしゃべり方は、今の状態が素なのか?」
「うん。私もそれ、ちょっと気になってた」
雄樹が指摘し、稲成之命も気付き、わたわたとあわて始めた。
「いや~…その~…」
少し間を置き、観念したのか、
「そうです…威厳というか、神様に信憑性を出すためにしていました…」
項垂れながらそう言った。
「うん。そこの詳細は、後々聞くとして…しゃべり方がそうだったのなら、名前も稲成之命が本名なのか?」
「う…それは、どういう意味で…」
稲成之命は、言葉に詰まる。
「どうも、仰々しい感じがしてな…」
「う~……はぁ、その通り…本名ではありません。人前で名乗るときのもう一つの名です。わたしたちの世界では、わたしは枯葉といいます」
「ん…なら、今後、枯葉と呼んで問題ないか?」
「いいですよ…」
気を落とした風に、枯葉は納得した。だが、小声で…
「…折角考えたのにな~…」
「何か、言ったか?」
「いえ、何も」
と、首を振りながら否定した。
「さてと、次は…」
雄樹は、狐(神)の方に向き直った。
{なんでも聞いてもいいですよ。お父さん}
「あ~…聞く前に、まず、そのお父さんというのはどうにかならないか?落ち着かないんだが…」
{…?。お父さんの願いで、あたしは生まれたのです。お父さん以外ありえないのです}
雄樹は、困った顔で、麻奈をちらっと視線を向け、
「まぁ…それぐらい、いいんじゃない?お兄」
視線を、狐(神)に戻す。
「はぁ…じゃあ、質問するな。まず、枯葉と同じで名前はないのか?」
{生まれたばかりなのでないです。}
「さすがにそれがないと困るな…」
{でしたら、お父さんが名付けてください♪}
尻尾を揺らしながら、そう言ってきた。
「名付けるって…そういうことは、苦手なんだが…そうだ。麻奈がつけてみるか?」
「私?!考えてもいいけど、多分…」
と、麻奈が狐(神)に向けると、そこには、膨れた顔をした狐(神)が…
{嫌です。お父さんが考えた名前がいいのです。それ以外は、否定するのです}
ぷいっと、顔を逸らした。
「う~ん…」
雄樹は、頬を指でかきながら答えた。
「じゃあ…狐の子…ひとまず、ココでどうだ?」
「お兄…そんな、安直でペットに名前を付けるみたいに…」
麻奈が、呆れていた。
{ココ…はい♪では、ココはココと名乗るのです。ありがとうなのです、お父さん♪}
「いいの、そんな名前で?!」
さすがに、麻奈が聞き返した。
{ふん…あなたには、関係ないのです。お父さんが考えてくれたので、ココはココなんです}
「そ、そうなんだ…」
(一先ずって言ったんだが、一先ずじゃなさそうだな…これは…)
さらに、雄樹はココに尋ねた。
「なら、ココ…ココは、枯葉みたいに人型にはなれないのか?動物に話しかけ続けるのは、ちょっと、な…」
{さぁ…どうなのでしょう…?}
「わからないか…どうなんだ、枯葉?」
と、黙ってみていた、枯葉に聞いてみた。
「できるはずよ。わたしの力を分けたのだから、わたしと同じことはある程度できるはず。でも、自分で思い描いた姿になりなさいね。真似や空想的なものに長時間なると、疲弊してしまうから」
「ん。なら、ココ…できるか?」
{やってみるのです}
ココは目を閉じた。すると、光を放ち始め、狐だったシルエットが人型に変化した。ちょっとしたら、光が収まり始めた。
その姿は、狐の時と同じくらいの130cm、目は少し吊り上りの狐目、髪は床につきそうで狐の時と同じ黄色、外はねが強く毛先の数十cmは茶色くなっている。頭には、枯葉と同じく、動物耳がついていて、ぴくぴく動いていた。
{どうですか、お父さん?ココ、かわいいですか?}
雄樹が答えようとするよりも、先に、麻奈が答えた。
「かわいい~♪」
麻奈は、目を輝かせていた。
{あなたには聞いてないのです。で、どうなのですか?お父さん?}
と、再度、雄樹に尋ねた。
「あぁ…確かに、かわいいと思うよ…」
{やったなのです♪}
変身したばかりの姿で、飛び跳ねた。
「さてと…確認は以上なんだが…結構、時間経ってしまったな…」
「だね…晩御飯、出来てるよ」
「麻奈…食事の量、足りるか?」
「うん。ご飯はちょっと少なくなるかもだけど、カレーなどの量は多めにしてあるから、大丈夫だよ」
雄樹は時計を見ながら言い、それに、麻奈が答えた。
「仕方ない…晩飯を食べてから、続きをするか…構わないか?」
「うん。私は構わないよ」
「ん…そう、あわてる必要もないからね…」
{お父さんがそういうならいいのです}
各々賛同し、麻奈がキッチンに行った。
「まず、食器を増やさないとな…二人も、手伝うことな」
「ご相伴預かるのだから、そのつもりよ」
{わかったのです}
少し経ち、食事がテーブルに並び、全員が席に着いた。
「いただきます」
「「{いだたきます}」」
雄樹が先にいい、後に他も続いた。
(なんか、変な感じだな…これは…)
雄樹はそう思いながら、食事に手を伸ばした。