誕生
雄樹は、鍵を開けて麻奈と一緒に家に入った。
一直線にリビングへ向かい、テレビをつけ、ソファに鞄と一緒に飛び込んだ。
「は~。つまらない一日が、また、終わった~」
「お兄。まだ、終わってないよ。晩御飯の準備などがあるでしょ」
麻奈がエプロンをつけ、キッチンに向かいながら、ソファで横になっていた雄樹に言う。
家の中だと、麻奈の兄への呼び方が変わるのは、子供の頃、兄がそう呼ぶようにと言ったことが原因である。
「へいへいっと。今日は何を作る気だ。」
キッチンの冷蔵庫を覗いてる麻奈の背中に聞いてみる。
「そうだね~。じゃがいもが少し多めにあるから、カレーや肉じゃがかな」
「なら、カレーで頼む」
「わかった。本当に、お兄はカレーが好きだよね~♪」
麻奈は、冷蔵庫から材料を出しながら答えていた。
「まぁな~…子供のころからの名残というか、やっぱり、おいしいからな」
「あはは♪それじゃ、腕によりをかけましょうかな?♪」
「あぁ、頼むぞ。まぁ、いつもうまいから、かけなくてもよさそうだがな」
「褒めても何も変わらないけど、ありがとう♪それじゃ、食器などの準備お願いね」
「OK」
雄樹は食器棚から、カレー用食器やサラダ分け用などを出し始めた。それと同じくらいにに、キッチンでは、水や包丁の音がし始めた。
ほどなくして、先に雄樹の方の準備が終わった。
「何か、手伝うことはないか?」
テーブル近くで、そう問いかけた。
「もぅ…いつも言ってるでしょ?キッチンは、女性の見せ場なの。お兄は、テレビでもみてていいからさ」
「確かに、いつものことではあるのだが、それはよくわからないんだが…わかった」
麻奈に言われるまま、リビングのソファに座りテレビを見た。まだ、ゴールデンタイムより早いので、ニュース関連が流れていた。
「あ…弁当の容器出してね」
キッチンから、麻奈がそう言ってきた。
「そういえば、そうだったな。カバン、カバン…」
雄樹がカバンを手に取り開けた。勉強道具などは、基本、学校に置いてあるのでさっぱりしてる。
と、弁当の容器を取り出そうとし、ついでに、帰りに拾った玉も目にとまった。
「そういえば、これも、入れてたんだっけな…」
容器をキッチンに持っていきながら、それも手に持ちながら向かった。
「帰りに拾った玉?」
「そうそう」
頷きながら、玉を弾ませようと床に落とした。ところが、床にぶつかったのだけど弾まなかった。
「ん?なんだ、これ?」
「どうしたの?」
と、煮込むまでできた麻奈が、キチンから出てきた。
「いや…ボールだと思って床に落としたら、まったく、弾まなくてな…」
「?」
麻奈も、雄樹の説明で不思議に思った。
雄樹が、玉を拾い上げた。
「不思議な玉か…日常も、こんな風に不思議が多ければ、楽しいのだろうな…」
そのセリフを聞いた麻奈が呆れ顔で答えた。
「また、それ…そうそう、面白い日常なんてないのだからあきらめなさいよね~…」
「あはは…そうなのだかな…ん?玉が光ったような?」
「光るの?って、ほんとだ…」
雄樹のいうように、玉が発光し始めた。
その光は、どんどん強くなっていき、とうとう、二人が目を開けれないくらいの光になっていった。
「まぶしっ…!なんだこれ…」
雄樹は、光った玉を投げ捨てた。
「目が開けれない…」
麻奈も困った声を出していた。
少し時間が経ち、まだ、目を開けれない二人に、聞きなれない声(?)が聞こえた。
「コンッ」
その声(?)に先に反応し、雄樹が声かけた。
「ん?何か聞こえなかったか?」
「うん。聞こえた」
続いて、麻奈もそう反応し…
二人の目が開けれるようになり、開けてリビングを見回した。
すると、ソファの横に、白い狐がいた。
「きつ…ね…か?」
「うん…わたしにも、そう見えるけど…」
体長130cmくらいで、ふかふかそうな太いしっぽをパタパタとしながら、狐がこちらを見上げながら座っていた。
二人があっけにとられながら狐を見ていたら、さらに、別の声が聞こえてきた。
「ようやく誕生したのじゃ…まったく、待ちくたびれたわ…」
兄妹は、驚きその声がする方に顔を向けるとそこには、奇怪な姿をした人が立っていた。
和服姿で、身長は150cmくらい、銀色のウェーブのかかった髪に頭に動物耳(?)が付いてる。
「「…誰…」」
兄妹が、見つめていると…
「あ…一応、挨拶しておこうかの…こんばんわと失礼するの」
突如、登場した人物はそう答えてきた。
ここから、兄妹(主に兄)を中心とした非日常な日常が始まった…