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何かの訪問者

作者: 小伏史央
掲載日:2011/10/31

 帰宅して間もなく、家の呼び鈴が鳴った。寒くなりつつある風が、何かを知らせるように窓を叩く。窓の外の闇は深まっていく。風よりも強く、ドアの外側から音がした。

 こんな夜遅くに、一体誰だろうと、私はくずしたカッターシャツ姿のままドアを開けた。

 不気味な笑顔だった。真ん丸い両目と、半円を描いた口、そして爬虫類のような鼻が、くり抜かれたように形成されていた。肌は明るい狐色だが、猫の舌のようにざらざらしているように見える。不気味な身なりだった。濃い紫のマントで、首から下の小さな体を包んでいる。

 その、得体の知れない何かは、わたしの顔を見たなり意味の分からない言葉を話した。短い言葉だ。外国の言葉だろうか。

 訳が分からないまま、私はそれを眺めていた。すると、それはマントから鋭利なナイフを取り出したではないか。そうしてまた、元気で不気味で幼い声で、さきほどの言葉を言う。

 私は恐ろしくなって、ドアを閉めようとする。だが、既にそれは玄関にまで入ってきていた。短い言葉を言う。両目も口も鼻も、全く動かない。

 ナイフに気をとられながらも、私は少し、少しずつ後退していく。私の動きに合わせて、それも家に入っていった。ボタンを外したカッターシャツが鬱陶しい。

 とうとう私とそれは部屋の中にまで入ってきた。篭る声でそれはまた同じ言葉を唱える。魔物の呪文なのだろうか。この得体の知れないものは、魔物なのか。

 部屋の明かりがナイフを照らす。不思議にも、ナイフは光を反射しなかった。このナイフも特別なものなのか。

 魔物は部屋を見回していた。何かを探しているのか。そして魔物は見つけたようだ。魔物はそれを摘み取る。マントから細い腕が覗かせていた。

 それはキャンディーだった。魔物は、貰ってもいいか、とでも訊くようにキャンディーの袋を振る。私は慎重に頷いた。

 魔物はあっけなく家を出て行った。最後家を出るとき、魔物は人間のように礼をしていた。

 結局、あの言葉はどういう意味だったのだろう。「とりっくおあーとりーと」という言葉を私は未だに忘れられない。

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