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第8話:くらいうみ

 過去編のプロローグ、です。

 とうちゃん登場・・・

 渦を巻く暗黒の視界の中に、一点、光を見つけた。


 花乃衣の意識は真っ暗闇の中を、まるで波間に漂う船のように、ゆらゆらと彷徨っていた。

 体の感覚はない。

 今は意識だけ、先ほど扉から出てきたものに連れて行かれたようだ。


 体の方は蒼が守ってくれるから、心配はないだろう(違う意味では危険かもしれないが)。

 だが、あまり長いこと体から離れるのはまずい。

 ただでさえ、魔族に好かれる自分なのだから。

 うつわに魂のない人間の体は、放っておくと体が動かなくなり、死んでしまう。

 肉体の死だ。

 心は生きていても、うつわイコール肉体のないものは、いずれ無明の闇を彷徨う『幽鬼族』と成り果て、魔族同様人間に仇なす存在となってしまう。

 高位の魔族であれば、自分の体だけのっとることは可能で、そうなると「自分」が「人間」を食らうものとなってしまう・・・


 そんなことをつらつら考えているうちに、ひかりが近づいてきた。

 花乃衣を取り巻く真っ暗なものは、彼女を優しく包み込んでいる。

 大切に抱えられている感覚に、彼女は優しい母の腕の中を思い出した。

 「母様・・・」


 花乃衣がそうつぶやくと、とたんにまばゆい光の中に飛び出した。



 目の前に、母がいた。

 にこやかに微笑んで彼女の手を取る、絶世の美男子の横に、立っている。

 その顔は、蒼にそっくりだった。

 おじさんにも。

 「・・・ととさま?」


 その瞬間。

 父親が花乃衣の方を見たような・・・気がした。



 そんな男の様子を訝しげに、麗花は見上げた。

 この大陸の女性の中ではかなり身長が高めの彼女が、見上げなければならない相手が、目の前にいる男・・・魔族の頂点に立つシャラザード一族の長の弟、イルフレンであった。

 そのときのイルフレンは、麗花が今まで見たことがないほど、厳しい顔つきをしていた。

 「何かいるのか?」

 麗花もイルフレンと同じ空間を「視て」みたが、特に何も感じることはできなかった。

 イルフレンは花乃衣のいる方向をしばらくじっと見つめた後、何でもなかったかのように麗花を見た。

 イルフレンの表情につられて、眉間にしわを寄せるほど厳しい表情をしている麗花の顔に手を伸ばし、

 「眉間にしわ。美人が台無しだよ」

 そういって、イルフレンは親指の腹で麗花の眉間を優しくさすった。その表情は先ほどの厳しい表情とは一転、彼女への愛情に満ちた優しい表情であった。



 花乃衣は、こんな表情の二人を見たことがなかった。

 自分が覚えている両親はいつも青白い顔をしていた。いわゆる先の見えた(寿命の尽きた)、病人の顔だ。

 静かに、命の尽きるのを待つ二人に花乃衣は育てられたせいか、物静かで、表情の乏しい女の子だった。

 このときの父と母は、幸福の絶頂にいるような・・・そんな雰囲気を漂わせている。見ているこっちが恥ずかしくなるくらいラブラブな雰囲気だ。


 この二人が、どうして・・・


 眩しいくらい生にあふれた二人の雰囲気に、どうしてか納得のいかない花乃衣であった。

 自分の知らない、父母の姿。


 二人のことをもっと知りたい、と願った。


 そして花乃衣は、また、あの昏い海(くらいうみ)のような闇に、飲みこまれていった。

 だんだんと、両親の過去が明らかに・・・

 もうちょっとお付き合いくださりませ(ぺこり)。


 12/3 ちょこっと修正(辻褄あわないところ発見・・・)

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