第7話:灯台もと暗し?
本日はちょっと短め。
主人公ズのターン。
本日もお楽しみいただければ幸いです(^-^)
蒼に手を引かれて渡ってきた場所は、花乃衣も見知った空間であった。
「・・・うちの、地下?」
「そうだよ」
そう答えた蒼は、どことなく緊張した面持ちだ。
「どうして蒼がこの場所を知っているの?」
そんな蒼の様子を訝しがりながらも、花乃衣は握られた彼の手を、きゅっと握り返す。
彼女の手の強さにはっとして、蒼は緊張している自分の思いを隠し、余裕の表情を作った。
「・・・一度、訪れたことがあるからね」
そういった蒼の表情は、どことなく読めない。
花乃衣自身も、ここに入るのは2度目だ。
1度目は、母親が亡くなったあと、遺言に『この場所を封印すること』が書かれていたため。
入口を、光君と水君の力を借りて、閉じた。
中に入ることは固く禁じられていた。
今いるこの場所は、花乃衣がかつて閉じた場所の内側にあるらしい。
背後から、光君・水君の気配がした。
「・・・この場所をなぜ、君の母上は閉じたと思う?」
蒼は唐突に語り始めた。しかも聞かれた内容に驚いた。
彼はどうして、この場所が閉ざされた空間だということを知っているのか?
「何か、いるから?」
花乃衣はずっと昔から、自分を『喚んで』いる声が、ここから聞こえてくるのを知っていた。
彼女の答えに、蒼は驚愕の表情を見せた。
「・・・そうか、君は『召喚師』だからね」
自身の出した答えに頷き、蒼は瞳を閉じた。まるで何かをこらえるかのように。
それから、おもむろに話し始める。
「ここには、黒竜・・・『暗君』が、いるよ」
蒼はまっすぐに、花乃衣を見つめた。
「もっとも、今は眠っている・・・君の父上、母上、そして僕の父・・・君の言うところのおじさんが、眠らせたからね」
明かりとりの窓さえついていない真っ暗な空間であったが、花乃衣は自分の手をしっかりと握っている蒼に引っ張られながら、地下の通路らしきところをまっすぐに進んでいた。
半時ほど歩いたかと思われるが、蒼は歩くのを止めた。つられて花乃衣も立ち止まる。
唐突に、ひかりが現われた。それは蒼の右手の平の上にあった。丸い石ころ程度の大きさの火の玉だ。
蒼が右手を掲げると、目の前に大きな両開きの扉があるのが見えた。
その扉には、たくさんの印が見えた。
中に、何かいる。
その気配・・・なぜか知っているような気配に、花乃衣の体を寒気のようなものが駆け上った。
足元から冷えていくような感じだ。
禍々しい気配。でも、なんだか懐かしい・・・
「この扉の奥に、暗君がいるよ」
蒼はそうつぶやいた。花乃衣にはつぶやいた彼の表情は見えない。
彼はゆっくりと花乃衣のほうに振り返ると、真剣な表情で彼女を見つめた。
「私が君に話すのが正しいことなのかどうか分からない・・・」
蒼は苦悩の表情を見せた。
「だが・・・真実を知らしめるためには、この方法が一番良いと思われる」
そういって、蒼は振り返り、何のためらいもなく、扉の取っ手を握った。
瞬間、青白い火花が散る。
それでも、蒼は取っ手を放さない。
蒼は何事かをつぶやき・・・おそらく、解放の呪文であろう・・・取っ手を思いっきり引っ張った。
とたんに花乃衣は、何か黒い物体に包まれた。
「ぐっ・・・」
苦しい。
外からぎゅうぎゅうに押しつぶされていくような感覚。
それは彼女を包み、取り込もうとしていた。
あまりの圧に、空気という空気が彼女の体から抜け出し、窒息するかのようだった。
やばい、本格的に・・・
花乃衣の意識が落ちた。
さて、どうなる!?
次回は過去編です。
とうちゃんズ登場。(多分)