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第19話:帝国の『闇』


 ・・・ずいぶん間があいてしまいました・・・スミマセン(涙)

 しかも今回は説明のみ。


 ・・・よろしくお願いします(ぺこり)

 花乃衣たちは夜が明けてからすぐ移動した。

 旅馬車の始発に乗り込み、帝都『炎竜』を目指す。


 始発にもかかわらず、旅馬車は定員いっぱいだった。広々とした車内だが、今日はのびのびとした気分が味わえず、三人とも指定の席について帝都に着くのをひたすら待っていた。


 今日三人が乗った旅馬車は乗り心地もさることながら速さもある。

 通常1日かかる帝都までの移動は、この馬車なら夕刻までに着く予定だ。

 かなりのスピードが出ているのにも関わらず、車内は静かだった。


 花乃衣は少し緊張していた。

 久しぶりの帝都。

 異父兄たちの住む皇城に向かうのは、実に10年ぶりのことだ。

 その時でさえ、花乃衣はその場にいるのがいたたまれず、2日もしないうちに皇城をお暇した。

 自身の祝の席であったにも関わらず。


 その時は、海の魔獣の中でも最大の「海王」と呼ばれる16本足の化け物を退治したことを祝う皇帝主催の宴席だった。

 海に面する帝都は、目の前の大陸との交易に、船を利用している。

 その海域に、「海王」が出現し始めたのは、10年前のことだった。

 「海王」を退治すべく、様々な戦士団や方術団を向かわせたが敵わず、ついに花乃衣にもお呼びが掛かった。

 花乃衣の召還術で「海王」を退治することはできたが、花乃衣もかなりの力を使い果たし、1週間ほど昏倒していた。それだけ、強い相手だったのだ。

 光君やその他3体ほどの召還獣を従えて、夜明け前から戦い、決着がついたのはその日の夕方だった。

 海域にも被害が生じたが、復旧にさほど時間のかかるものではなかった。


 公にされてはいないが、宴席に呼ばれた身分あるものは皆、花乃衣と焔帝が異父兄妹ということを知っている。

 そのことをあからさまに言ってくるものは少ないが、花乃衣を見る目に好意的なものはほとんど無い。

 そういう人間は、「海王」を討ち取ってもらった感謝ではなく、海域における被害をあげつらい、花乃衣を容赦なく攻撃する。その雰囲気にいたたまれなくなり、彼女は宴を中座したのであった。



 帝国の中でも稀有な存在であるにも関わらず、彼女はその出自のため正当な評価を得られないでいる。

 焔帝はそのことについて何ら手を打つこともなく、静観していた。

 だから、花乃衣は皇城に行くことを嫌っていた。


 だが、今回は正面きって出入りするわけではない。

 豊穣祭の隙を突いて、こっそりと侵入する予定だ。

 もちろん、花乃衣は焔帝に今回の旅のことを伝えてはいなかった。

 (まあ、満のほうから情報が流れているだろうが・・・)




 帝国の『闇』

 それは帝国の中枢部でも一握りの人間しか、その存在を知らされていない。



 初代皇帝の寵妃であった女性は、不思議な力を持っていたという。

 その力で、自分の意に沿わぬ人間を操ったり、力ある魔族を使役して、自身の地位を確固たるものとした。

 彼女の一族は、彼女のように多かれ少なかれヒトの意識を操る力を持っていた。

 かの一族はその力を必要とする時の皇帝の手足となり、皇帝の治世を磐石のものとする。


 しかし、過ぎたる力はまた、新たな禍根を生んだ。

 寵妃の死後、彼ら一族は次代の皇帝・・・皇妃の生んだ子どもである・・・に疎まれ、皇帝とその宰相により、一族郎党ことごとく惨殺された。


 皇帝の父は、絶大な力を誇ってはいた。

 しかしその治世は血塗られた恐怖政治そのものであり、帝国内の全ての事象が、ことごとく停滞していた。

 皇妃の生んだ皇太子・・・次代の皇帝である・・・は、その原因たる一族を密かに根絶やしにすることを、皇太子の頃から望んでいた。

 そして、帝国は新たなる時代を迎え、次代の皇帝・・・暁帝あかつきのみかどは賢帝と讃えられ、帝国内の様々な産業は成長し、帝国民はかつてないほど潤っていった。


 だが。

 かの一族は、ことごとく滅んだわけではなかった。

 皇太子の動きを察知し、地下深く潜った者。ちょうどそのとき、『里』におらず、その災厄から逃れられた者。

 少ないながらもかの一族は血を繋ぎ、再び華帝国の皇帝のそば近くに、現れた。


 だが彼らは歴史を学んだ。その存在については時の皇帝の意を絶対とし、彼らは『闇』と呼ばれる、帝国の闇の部分を司る、皇帝直属の「部隊」となった。

 彼らは闇の方術を得意とする。その詳細は不明だ。かの一族の者たちしか伝わっていない方術で、その力の源すら、分かっていない。


 『闇』がどこに存在するのか分からない。

 だが、「暗君」を救うためには、彼らを見つけ出し、彼らが「暗君」の力を引き出した方術の型式を理解しなければならない。

 そして、この方術・・・『邪法』が、今後二度と使われないよう、その方術を永遠に封じなければ。


 そのためには、蒼の協力が不可欠であった。



 人間と魔族の間にうまれた人間は、歴史上存在しない。

 魔族と人間は、相容れない存在だから。

 何より、「光」の部分が多い人間は、「暗」の部分がほとんどの魔族とは、肉体を構成するものから異なっている。

 だから、人間の姿形を魔族が取り、ヒトと生殖行為を行っても、子どもができることはない、と言われている。

 だが、稀に人間の中に、光の部分が少なかったり、どのような奇跡からなのか、魔族との間にこどもを儲ける女性がいた。

 それが、花乃衣の母である麗花であり、蒼の母親である「東の魔女」だ。

 魔族との間にうまれた子どもは、その身の内に膨大な魔力や方術のチカラを持っていたり、常人とは異なる寿命や、見かけであったりした。


 蒼は、その身に「魔力」を有するだけでなく、母親の「東の魔女」から、この世のあらゆる方術・・・人間がその歴史の中で産みだしたもの・・・を受け継いでいた。


 花乃衣は召喚師だから、召喚の知識は深くとも、方術の知識は普通にあるのみで、方術に詳しくは無い。

 だが、蒼ならば。その身にある膨大な知識で、私の助けとなってくれる。

 花乃衣は彼女をじっと見つめる蒼に、心の底から感謝の微笑を見せた。



 ・・・蒼がしばらく呆然としていたのは、花乃衣の気のせいではない。


 次回は帝都に着きます。

 今度こそ・・・

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