第16話:ひとやすみ、ひとやすみ・・・
久しぶりの投稿になります。
が、話的にはあんまり進んでない・・・
まあ、ひとやすみ、ひとやすみ、といったところで・・・
花乃衣たちが旅馬車の襲撃者を片付けたのは良かったが、馬車自体は片輪がとれて走行不能になっていた。御者は「このまま走るのは不可能」と早々に白旗を掲げていたので、乗客は旅券を返してもらい、近くの街まで徒歩で移動することになった。その街から代わりの旅馬車に乗れるよう、業者が融通を利かせてくれるとのことだ。
満は花乃衣と蒼に近づくと、この近くの街、「彩華」で一泊しようと提案した。そこから代わりの旅馬車が出るのだが、満はこの旅馬車に乗るのはイヤだ、いつものランクのに乗りたい、とダダをこねた。
結局、花乃衣が満に折れる形で、そうすることが決定した、のだが・・・
「花乃衣は蒼と同じ部屋で寝てね?」
さも当然、とばかりに満がそういうと、蒼は嬉しそうな表情、花乃衣は一瞬ナニを言われたのか分からない・・・と固まっていた。
「しばらく光君も出てこれないでしょ?蒼に守ってもらわなきゃダメよ」
さらりといわれた満の正論に、花乃衣は反論することもできない。
花乃衣は「召喚師」であるため、あまり守りの術等が得意ではない。
いつもは光君に守ってもらっているのだが、今、光君は眠りについているため、守護の力がほとんどない状況であった。
・・・本当はもう数体、召還神がいるのだが、諸事情のため、今呼び出すのは躊躇われる。
だから花乃衣は、満の言い分を聞かざるを得なかった。
目の前には「彩華」の朱塗りの門。
帝都へ向かう「公道」の街の中でも、一番華やかなのが、この中原の都市「彩華」である。
たくさんの人が出入りする門をくぐりぬけ、三人はまず宿舎を探すことにした。
帝国の街はどの街も、門からまっすぐ歩けば、その街の行政府にたどり着くことができる。
街は人間二人分の高さの壁に囲まれており、大通りの最奥に行政府があるのが、華帝国の公道沿いの街のつくりに共通している。どこの街に行っても、迷うことなく行政府にたどり着ける。だから、何か困りごとや旅券の再発行等あれば、どの街でも門よりまっすぐ伸びた道沿いに行けばまず困ることはない。
公道沿いの街は、四角に区画が分かれているので、道の名前さえ分かれば迷うこともない。
大通り沿いに大店とよばれる商人達の店が立ち並び、それに混じって人気の宿舎が軒を並べていた。
三人は大通り沿いの一角にあるしっかりした造りの宿舎に泊まることに決めた。受付を済ませてそれぞれの部屋に荷物を置き、旅装を解く。
「疲れた」
そういって花乃衣はベッドの上にうつぶせになった。
昨夜は強制的に眠らされたが、固い土の上だったせいか体の疲れが取れておらず、また、旅馬車の襲撃で自分の術力を使ったため、彼女はかなり疲労していた。
対する蒼は彼女の隣のベッドに荷物を置き、かぶっていた黒いフードをはずすと近くの椅子の上に置いた。
長い金色の髪がさらりと揺れる。蒼の表情も少し冴えない。
「蒼、調子悪いの?」
うつぶせの状態から蒼のほうを見ていた花乃衣がその体勢でたずねると、彼は彼女の方を向いて首を振る。
「いや。それほどでも。・・・それより先にこの部屋に結界を書こうか」
そういいながらどこかから羽ペンを取り出した。
先の鋭いところで蒼は自分の手のひらに傷をつけ、二人のベッドの間に魔方陣を描く。
『守りの盾となれ』
蒼がそう呟くと、魔方陣が青白く輝いて、消えた。
結界を敷いた後、蒼はベッドにごろん、と、横になると、花乃衣のほうを向いて、横になった。
「これで大丈夫・・・花乃衣、私は少し横になる」
そういって、ゆっくりと目を閉じた。
「・・・おやすみ」
何だか拍子抜けした花乃衣は、上手く説明の付かないもやもや感をもてあましていたが、蒼の綺麗な寝顔をみてちょっと得したような気分になり、
そのまま安心して、ベッドの上で眠り込んでしまった。
そしてそのまま一夜が明け、二人が驚きのあまりぼーぜんとなったのは言うまでもない。
というわけで、また旅が続きます。
次回もお読みいただけたら嬉しいです。