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第13話:ぬくもり。


らぶ(?)な展開になるはずが・・・

あれ?


本日もお楽しみください~(^-^)

 なにか暖かいものに包まれている。

 ゆるゆると眠りの世界から引き上げられ、花乃衣は目を開いた。


 目の前には、黒い壁。

 ・・・黒い、壁?


 蒼の着ているシャツであった。

 それを握り締めている自分の手を、花乃衣はぼーぜんと見ていた。


 「おはよう、花乃衣」

 花乃衣の頭上から、至極機嫌の良さそうな蒼の声が聞こえてきた。

 ・・・朝からつやっつやです、魔王様(汗)。

 なるだけそうっと、花乃衣は蒼のシャツから手を離した。


 花乃衣は蒼の腕枕で眠っており、彼の片腕は彼女の背中にまわされて、抱きしめられている。

 当然、花乃衣は動けなかった・・・恐ろしくて、顔を上げることもできない。


 あたりはもうすぐ夜が明ける頃だろうか。薄暗い森のなか、花乃衣は蒼に包まれて横になっていた。二人が同じ厚い布に包まれているせいか、寒さを感じることはなく、とても心地よい温度である。

 花乃衣は少し、体を起こそうと力を入れてみたが・・・自分を拘束する蒼の腕の力は弱まることはなく、むしろ余計に力を増したような気がする。

 「おはよう、蒼。あの・・・」

 「どうした?まだ夜は明けていない。もう少し眠ると良い。疲れているだろう?」

 そういいながら、蒼はますます腕に力をこめて花乃衣を抱き寄せた。二人の体の間に少しの隙間もないように。そうやって抱きしめられると、花乃衣は蒼のやたらと広い胸や、自分とはまるで違う体のつくりの違いをまざまざと感じさせられて、いたたまれない気持ちになる。


 蒼は痩せているように見えて実はしっかりとした体つきの男だった。

 花乃衣の体をしっかりと包む蒼の体は、思ったよりも肉つきは良いがちっともぷにぷにしていない。固い筋肉に覆われた彼の体は、普段自分を抱きしめてくれる満の体とはまるで違う。

 ヘンタイはほっそりしなやかな体つきをしていて、あまり男性らしさを感じないのだが、目の前にいる蒼は、誰とも違う・・・男性の体をしていた。


 「花乃衣・・・」

 蒼の声が掠れている。その声に反応するかのように花乃衣の体は戦慄いた。

 彼の声が自分の耳近くから聞こえているのを感じ、体がふるりと動く。

 「緊張しているのかい?こういうことを、誰かに・・・されたことはない?」

 彼の手が花乃衣の背中をなでる。ゆっくりと動く手はただ動かしているだけなのに、なんだか体の奥がずくり、と蠢いたような気がした。

 こんな感覚、私は知らない・・・

 「されたことないわ。あのね、蒼・・・私、こういうことをされると、その、なんというか・・・居た堪れないの。だから」

 離して。という言葉は、蒼の唇に吸い込まれていった。


 初めての口付けは、ただ触れるだけだった。それが、1回、2回と続き、蒼の唇が花乃衣の唇の上でゆっくりと動くと、その感触に声が出そうになって開いた口に、何か暖かいものが侵入してきた。

 蒼の舌が歯列を割り、花乃衣の舌を捉える。ゆっくりと口の中を蹂躙する彼に、彼女は反応できず、息をすることも・・・できない。


 窒息しそうです・・・(涙)

 花乃衣は半泣き状態であった。


 チュッとリップ音を最後に、蒼の唇はゆっくり花乃衣から離れていった。彼女の顔は真っ赤になっていて、体はくったりと彼に預けられている。そんな彼女の首筋に顔を近づけると、彼はゆっくりと彼女の首筋に口付け・・・思いっきり吸った。


 吸われた痛みで花乃衣は正気に戻った。何故ちくりと痛んだのか彼女には分からなかった(そんな経験もなし)。ただ吸われた部分に手を当てて、血が出てないかどうか確認する。


 「蒼って・・・吸血族?」

 花乃衣の言葉に蒼は吹き出しそうになった。彼女の言葉で色っぽい雰囲気が消えうせ、妙な脱力感だけが残る。彼は彼女をその腕から開放し、ゆっくりと、彼女が起きるのを見ていた。

 「違うよ。私は吸血族じゃない」

 肘をついたまま花乃衣の質問に答えた蒼だったが、満足そうな微笑を浮かべている彼に、彼女は怪訝そうな表情を向ける。

 「今の行為は・・・そうだな、『私のものだ』というシルシ、かな」

 「シルシ・・・?」

 花乃衣はやっぱりよく分からない、といった表情だった。蒼はクスクス笑いながら、彼女に続いてその身を起こす。

 「分からなければいい・・・だが」

 そういって蒼は真剣な表情で花乃衣をみつめた。体を起こして彼女の前に座り、彼女を引き寄せる。

 「私は、そのうち、君を丸ごと、私のものにする」

 腕に抱いた花乃衣の柔らかな髪に触れ、彼女の頬をなでる。

 「だから、君にも私を受け入れて欲しい」


 そう告白(?)された花乃衣の頭の中は、真っ白になった。

 だが・・・

 蒼が離れた瞬間、そのぬくもりを離したくない、とも思ったのだ。


次回は出発~

物語の舞台は帝都。

お読みいただき、ありがとうございました。

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