第12話:旅の途中で・・・
昨日はこーしんをせず、ひたすら他の方の小説を読みまくり(^-^)
はぁ・・・もえもえです(うふ)
今、目の前には、色気ダダ漏れな魔王様がいる。
魔王様の名前は「蒼」だ。
対する花乃衣は、そーゆー男女間の状況に陥ったことがないため、いや~な汗をかきながら、すこーしずつ、後退していた。
夜営の場所に選んだのは、もう少しで「大森林」を抜けるところであった。炎華の麓にあるためか、そこかしこから蒸気と共に熱湯が湧き出ており、花乃衣達の夜営の場所も、そんな熱湯の湧き出る泉の近くである。
地熱のせいか、夜営するには肌寒い季節に近づいていても寒さは感じず、泉の近くには人間を恐れない小動物たちが、今夜の寝床とばかりに枯葉の積もった土の上に丸くなっている。
花乃衣と満、蒼の3人(水君は神竜界に戻っている)は、本日朝早くに屋敷を出発し、ほぼ休息なしで大森林の淵まで歩いてきていた。馬などの移動のための獣は今回は使わず、(というか、蒼のせいで馬達が怖がって使えない)大森林を抜けるのは自力で行わざるを得なかった。
大森林を抜けると、炎華の麓の街『砂華』があり、そこから帝都までは乗り合い馬車での移動となる。
だから、野宿は今日だけで大丈夫、のはずなのだが・・・
「私、水君と一緒に眠るから、蒼は花乃衣をお願いね」
さらり、といわれた台詞に、花乃衣は固まった。
満は当然、といわんばかりの表情で、蒼に釘を刺す。
「蒼、分かってるわよね。無理強いはダメよ」
「私が花乃衣の嫌がることをするわけがない」
「アンタは平気で『イヤよイヤよも好きのうち』とかいいそうだもの。いい、花乃衣。いつもの調子でガツンとやりなさいよ?ガツンと!」
そういいつつ、満は彼女を迎えに来た水君に優しく抱き上げられ、二人に向かってひらひらと手を振った。
残された花乃衣は固まったままだった。
蒼はそんな彼女を見て微笑んだ。
その笑顔はなんというか・・・花乃衣から見ると、まるで『魔王の微笑み』だ。
・・・いろいろとキケンな感じがした。
と、いった風な感じで、冒頭の二人に戻るわけであるが・・・
明かりと暖をとるためにつけている焚き火のそばに座っていた花乃衣であるが、なんとなく、蒼との距離をとってみた。
何があってもすぐに対処(?)できるように。
対する蒼はそんな花乃衣の様子をほほえましく思っていた。
自分のことを「意識」していないと、こういう動きはしない。
男、だと・・・明らかに異性として意識されている。
そのことが、蒼にはとても喜ばしいことであった。
白亜の城での出会いから20年以上経つが、花乃衣の中で自分が「魔法使いのおじさん」のまま、肉親のように思われていたら少々(いや、だいぶ)イヤだなあ・・・と思っていたので、今の自分に対する彼女の態度は上々の状況だ。
蒼は、それこそ花乃衣が3歳のころから、彼女のことが愛しくて愛しくてたまらなかった。
永き生の中で、自分の感情をこれほど動かす存在に、蒼は出会ったことがない。
魔族としての自分。
人間としての自分。
どっちつかずの半端な自分。
どちらの種族の中でも、自分の存在感を感じることなく、宙ぶらりんな感じ。
花乃衣は、自分が見つけたただひとつの大切なもの。
血族というだけでなく、自分と同じ、どちらの世界にも属してはいるが、どちらの世界からも半端モノと扱われる自分達。
だが、彼女は自分とは違う。
浮の世界で、しっかりと根を張り、この世界を守ろうと行動している。
その気持ちは、どこから来る?
花乃衣を知りたい。
彼女の瞳には、この世界がどのように映っているのだろう?
「花乃衣」
蒼が彼女を呼ぶと、彼女は目をあわさず、顔だけを向けてきた。
「こっちにおいで」
へ?という表情で、蒼を見る花乃衣の顔はかなり間抜けだったが、そんな彼女も愛しいと思う。
蒼は花乃衣の隣に移動すると、彼女を自分の膝の上に乗せる。
あっという間の出来事だった。
花乃衣を膝の上に乗せ、彼女の頭のてっぺんにキスする。
それから蒼は彼女の頭のてっぺんにあごをのせた。
「今日は私のそばで眠ってくれ」
驚きのためか返事をしない花乃衣の顔を覗き込む。
どうやら思考が許容量オーバーを起こして頭の中真っ白になっているらしい。
ちょっとやりすぎたか。
自分の魅力を十二分に知っている蒼は、これを機に花乃衣の体をしっかりと包み込み、そばにある大木の幹に自分の体を預けた。
そして、一息つくと目を閉じる。
腕の中にある花乃衣は暖かく、柔らかい。
その感触を存分に味わいながら、ゆっくりと花乃衣に向けて「睡眠」の呪を流し込んでいく。
花乃衣は特に抵抗せずに、蒼に自分の体を預け、小さく息を吐くと、すぐに眠りについた。
夜は静かに更けていった。
本日もお読みいただき、ありがとうございました~(^-^)