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君との恋の方程式……天才数学者の僕が解き明かすよ✌︎('ω'✌︎ ) 〜イケメンとのハッピーエンド直前ですが、数学用語で愛を囁かれるのに耐えられないのでお断りさせていただきます〜

作者: 飽きのこないタルトのルセット
掲載日:2026/08/11

「何故、僕の愛を受け取ってくれないんだ」


イケメンに悲しそうな表情で見つめられても、私の心は揺らがない。揺らぐにはあまりにも彼を知り過ぎていたのかもしれない。


「だって……」

「だって?」

「数学系キャラなんだもん」

「……え?」


彼がぽかんと呆ける。そりゃそうなるわ。


立川晶、27歳。それが前世の私だ。猫と間違えて道路上のビニール袋を救出してトラックに撥ねられ、気が付いたら昔やっていた乙女ゲームの世界に転生していた。


まあどうしましょうと思いはしたがどうしようもない。だって元の世界に戻る手立てを探しても仕方ない。感触で分かったのよ、後頭部の頭蓋骨が割れたのが。あれは死んでるわ。つまりこれは転生ってやつ。


幸い独身で恋人もペットもおらず、両親もすでに他界して天涯孤独の身だったし。それなら前世に心残りなく第二の人生を謳歌してもいいんじゃないか。そう思って素直にゲームの世界に飛び込んだ。


そして好奇心が湧いた。ゲームクリア後ってどんな感じなんだろうって。付き合った先のことは描かれてないわけだから、それを知れると思った。だけどストーリーを進めるとなると当然恋愛しなくてはいけないわけで。私が消去法で選んだのが、今目の前で困惑してるイケメンというわけだ。


消去法ってどういうことかって? それは入学して僅か数日後まで遡ることになる。


「俺の許可なく離れんな、バカ女」


ドン引きした。よくも知り合って然程経っていない相手に対してこんな口が利けるものだわ。何故そんなにも自分が偉い人間だと勘違いしてしまったのかな。俺様キャラなんだろうけど、こいつ絶対モラハラ。人権の概念あるのかな。あとバカ言うな、失礼だろうが。


「僕のことだけ見ててよ。君の世界には僕以外いらないよね。君の頭の中ぜーんぶ、僕で埋め尽くしてあげる」


ドン引きした。自分の存在で他者の人生を支配できると思っているらしい。傲慢という意味では俺様系と似通っているところはあるのかもしれない。これは多分ヤンデレ。こういうのは殺すと決めたら殺してくるので、法が抑止力にならない危険人物。


「私の人生はあなたにお仕えするためにあります」


ドン引き……とまではいかないけどさ。あ、ちなみに執事。なんかお嬢様と御曹司ばっかり集まるお金持ち学校が舞台なもんで。にしても重いって、他者に人生委ねるの止めろって。あと定年退職した途端ボケるタイプだこれ。


「君の心の方程式……僕が解き明かしてみたいな」


吹き出しそうになった。学生の頃に画面越しにゲームキャラとして見る分には別によかったのに、本人に真面目な顔でこんなん言われたらもう笑いを堪えるのに必死で。あと共感性羞恥がそれなりにきつい。


前者2人は身の危険を感じるのでまず後者2人に絞り、あとはやっぱり趣味とか生きがいとか持ってる人の方が良いかなって。依存されるの好きじゃないからさ。


好感度の一番高いキャラクターからの、ラストの告白シーン。ドアップのスチルになっていそうな場面、イエスかノーの選択肢が表示されているであろう山場。イエスを選べばハッピーエンド、しかし私は今ノーを選んでしまった。


……ということを掻い摘んで話したところ、目の前の数学系イケメン、もとい夕凪隼人は額を抑えて天を仰いだ。


「なん……え?」

「あの……一番無害そうだったから……」

「じゃあいいじゃないか!」

「きついんやて! 普段の会話から数学用語出してくんの!」

「ナビエ・ストークス方程式よりも難解なこの気持ちが、ようやく君への愛だと分かったのに!」

「そういうとこ、そういうとこ! あとなんかめっちゃ天才キャラだけど……オープニングムービーの登場シーンの背景の数式、因数分解だけだかんな!」


開発陣は絶対『数学 背景 フリー』で検索して出てきたの貼っつけただけだと思う。マジで。てかなんで王道爽やかスポーツマンとか王子様系おらんねん。攻め過ぎやろこのゲーム。


ちなみに俺様キャラは王冠、ヤンデレは包帯と手錠、執事はティータイムセットだった。やっぱ前者2人はやばいな。


「……とにかく、会話に数学用語を出さなければいいのかい」

「オナシャス。数学はご自分だけの趣味として楽しんでいただければ」

「分かった、努力しよう。こんなことで君との恋の連立方程式が解けないだなんて、僕としても望むところではないからね」

「出てるよー、中学数学出てるよー」

「数学用語さえ出さなければ君ともワンチャンあるわけだし」

「ワンチャン言うな。逆に確率や可能性の話こそ数学であれよ」


ここまで言っても諦める気はないらしい。いや、こちらの主人公補正のせいなのかもしれない。だとすればシステムに心を縛られる哀れな男である。


「サイン・コサイン・タンジェントォ!」

「もう言いたいだけだろアンタ!」


ラストシーンの向こう側。どんなものになるかは分からないけれど、どうやらノーでも付き合いは続くようである。

思い付きで書きました。

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