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1.夢の始まり~第一幕~

―ついにやってしまった―


―今まで僕を苦しめた奴を―


―でも、仕方ないよ―


―だって君は僕を苦しめた―


―その苦しみを何倍にもして―


―君は償う義務があったんだよ―


―仕方ないよね―


―僕は悪くないよね―


―苦しんだのは僕だもん―


―殺意の一つくらい―



―湧いても仕方ないよね―




「はっ…」

夢から覚めた僕は汗で全身が濡れていた。 荒れていた呼吸を落ち着けながら枕元の目覚まし時計を見てみる。まだ目覚ましが鳴り響くまでまだ時間があった。

「何回目だよ」

まだ日が昇ってない明るさが部屋に居座る中、僕は呟く。

 最近、僕は凄い夢を見る。宝くじが当たって億万長者になるとか、幻の島に旅行に行くとか、恐竜と戯れるとかそんな夢という言葉がぴったり当てはまる夢なんかじゃない。

 僕が見る夢。それは―


『人を殺す夢』だ。


 決まって何時も同じ奴を同じ方法で殺している。

 そいつは何時も僕を苛めている所謂ガキ大将だ。今年でそいつとも六年となる。小学生の時から苛められていた。最初はちょっとしたことだったが、僕に対する苛めは日に日に酷くっていった。そして中学に上がっても苛めは無くならなかった。

 慣れたのか諦めたのかよくわからない。ただ、良い方向に進まず、逆に悪い方向に進むばかりの日々が過ぎるだけだ。


辛い―。


苦しい―。


 殺意なんて大したものは湧かない。ただ、やはり憎たらしい事には変わりない。逃げたしたい事には変わりない。

「学校…」

行きたくないなぁと一人愚痴る僕。

 でも行かないと行かないでまた何か言われる。行ったら行ったで苛められる。兎も角逃げ道が僕にはないのだ。

(夢の中の僕は強いんだろうな)

変わりたいよと思いながら自分の腕を見る。

 まるで女子のような白い腕や細くて長い指には引っ掻き傷や切り傷が無様に付いている。

「汚い…」

見つめながら呟く声は静かに自室に響く。

 こんな毎日、逃げ出したい。解放されたい。抜け出したい。そんなこと叶いはしないなんてもう判ってる。こんなつまらない希望を持っていても現状を切り開けないことは判ってる。

「いっそのこと…」

(夢を現実にしてやろうか)

そんなことを思っても実行に移せないのだ。所詮はそんなもんだと自嘲した。

 外は大分明るみがでてきた。太陽が地平線から顔を覗かせたのだろう。

 僕は再び時計をみる。そろそろ学校に行く準備を始めても良い頃だ。

 ベッドから抜けるとリュックに授業道具と筆記用具を詰め込む。そして、寝間着から学ランへと着替えてゆく。

(でも…)

僕は着替えながら考えた。


―もし、夢が現実になったら―。


 僕はこの苦痛と屈辱の日々から抜けられるんだろう。そんな幸せな日々が僕に訪れる。

(いいよなぁ…夢の中の僕は)

勇敢にも躊躇いもなく殺した夢の中の自分に羨ましい気持ちを残し、僕はリビングへと向かう。

 誰もいなくなった僕の部屋に声が響く。


―大丈夫。もう楽になるから―


 それに気づかない僕はこれからの悲劇に、夢見た筈の安息の日々がアカク変わる事を気づける筈がなかった。


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