ピンクブロンドの息子が王になった話
「遅い。遅い。遅い・・・」
「警戒心を持つのが遅い。逃げるのも遅い。そして・・何よりも」
俺はラインハルト・フォン・ノース。第19代目ノース王だ。
妻の一族を縛り上げて、見下している状態だ。
妻、ミリアは俺にとって二番目の王妃だ。
「・・・反乱を起すのも遅い!」
すると大サバト侯爵夫人は懇願した。
「ミリアは?ミリアだけは助けて下さいませ。妻は愛するものでございましょう」
「ほお、お前も妻を愛するべきだと思うのか?」
「ヒィ」
取り調べで分かっている。一番目の王妃、リリーを毒殺したのは、この女だ!
長かった。20年はかかった。
☆☆☆
20年前、俺は辺境に住んでいた。羊の番をしていたら、騎馬兵たちが来た。いや、鎧が立派だ。騎士と言うものだろう。騎馬の他に馬車がある。
これは何だろうと思い。頭を下げていると・・・
騎士達が馬から下りた。
「ハンス様!お迎えに上がりました!」
「はあ?状況を教えて下さい・・」
「貴方様は元王太子殿下ゲオハルト様のお子にございます!」
そのまま養父の家に行った。男爵家だ。
俺は男爵家の養子、自分でも言うのも何だが金髪碧眼で見目麗しい姿だ。いや、髪は若干ピンクがかった髪だ。だから引き取られたと思った。
もちろん、男爵位は義兄が継ぐ。もう嫁さんと暮らしている。良好な関係だ。
養父から事情を聞いた。
「・・・ゲオハルト殿下は平民の学生に恋をして、当時の婚約者の公爵令嬢との婚約を破棄されました」
「えっ、じゃあ、父と母は?」
「殿下はこの地に来てから生活の為に身重の妻を置いて兵士になり出征したが、帰って来ない。母は・・・生活の苦しさからハンスを置いて行方不明だ」
との事だ。
王の血がある者を市井に出すときはカゲがつくそうだ。反乱の首謀者に担ぎ上げられてもたまらない。そのカゲの役割が養父だった。
「じゃあ、行くか、リリー、行こうぜ!」
「ハンス、私、王宮は無理だわ」
リリーは俺の婚約者だ。平民だ。彼女は俺に尽くしてくれた。同い年の16歳だ。
これには偉い役人が異議を申し出たが。
俺は言い返した。
「ハア?父上は婚約者に不義理をして追放刑にあったのだろう?今、俺がそれをしても王に相応しくないだろう」
「・・左様ですか。でも、リリー様が不幸になるのかもしれませんよ」
「ハア?何故、お前が人の幸不幸を論じるのだ!」
いろいろ言い返して王都に向かう。
「ハンス、見て!建物デカいわ」
「スゲー!」
馬車から見える景色にはしゃぎながら王宮に向かう。
そこには、父上が婚約破棄をした王妃殿下と、その夫にして国王陛下の元第二王子がいた。
子は産まれず。王族にも高齢の男子しかいないらしい。
だから俺か・・・これは。
「ふつつか者でございますが、よろしくお願いします」
「はい、私はハンスの婚約者リリーでございます」
村の長老に敬意を表するように、丁寧に礼をした。
すると、陛下からお言葉をもらった。
「兄上に似ている。似すぎているな。あのピンクの血も引いているのが髪から分かるな・・」
と仰られた。
王妃殿下からは凝視されている。
俺、そんなに父上に似ているのか?
俺から見れば、伯母さんか?でも伯母さんと言っては失礼だろう。
と考えていたら。
「ノース王国の王位を譲る。ハンスが第19代ノース国王である」
陛下は宣言し。周りにいた大臣達が手をあげて。
「「「ジークハンス!ジークハンス」」」
と叫びやがる。
「さあ、ハンス様、玉座にお座り下さい」
「さあ、さあ、リーベルク様、ミリオネス様は臣下の位置に!」
おかしい。今日まで王、王妃だったのにこの仕打ち。離宮に行くのだと言う。
後に失脚したのだと知った。
王宮で勢力を持っているのは、サバト侯爵家だ。宰相府も形骸化している。
その他、諸勢力あり。俺は全くの後ろ盾がないから擁立された。
母は何の後ろ盾がないから王妃に不適格とされたが、全くの逆だ。
これはサバト侯爵の言う事を聞いた方がいいかな。ルールを変えられる奴だ。
「陛下、家庭教師をご用意しました」
「有難う」
「まだ、政治は無理です。難しいことは私にお任せ下さい」
「そうする。簡単なことからやりたい」
「では、王宮の役人をご紹介します」
役人と言っても、手紙の管理、庭の手入れ、王宮の経理官を紹介された。
何でも言うことを聞いたが、これだけは聞かなかった。王妃の事だ。
「娘のミリアでございます。どうぞご寵愛下さい」
「ミリアでございます」
「いや、俺、妻がいるし」
「それは金品をご用意します。離縁をされては如何ですか?」
「断るし、どうしてもと言うのなら、俺、田舎に帰る」
まだ、俺に利用価値があるのだろう。それ以来、その件は突っ込まなくなった。
さすがに、王でハンスは『ないない』と言われて、賢者から名をもらった。
ラインハルトだ。何か河の名前みたいだが、かっこよい。
一方、リリーだが、意外でもないが、社交界で愛された。
「奥様、ご挨拶申し上げます。リリーです」
「まあ、王妃殿下、大変でございましょう」
「フフフフ、ハンスの隣にいられるのですから」
メイドや侍従にも親切だ。
皆に愛されるが、サバト侯爵家の専横を苦々しく思っている勢力も接近してきたが、
サバトの息のかかった貴婦人からは、嫌みを言われた。
「まあ、杉の切り株に楡の木を添え木しても育ちませんわ。育ちってとても大事ですわね」
「まあ、陛下は羊飼い出身ですわ。・・・そのような事を言ったら不敬罪と言うものにあたるのかしら・・お気をつけ下さい」
「それは貴方のことです!本当に察しの悪い!」
「なおのこと、陛下がお決めになったのですわ」
村娘の素朴な疑問で返したらしい。
王だがやることがない。離宮に行き。前の陛下、王妃に挨拶に行ったりした。義理の父母だ。
王宮では役人たちと話をするようになった。
そして、即位して三年後にリリーは男の子を出産した。
「オギャー!オギャー!」
「あなた」
「母子ともに元気で嬉しい」
だが、この時、異変に気がつくべきだった。
「あなた。坊やは・・・乳母にお預けになって」
「何故?いや、」
「毒を盛られるわ・・・念のために」
「分かった」
「ウゥ」
「どうした」
あのとき、産後で体調が悪いのだとばかり思っていた。
3日後なくなった。遺体を確認しようと思ったが、早々に埋葬された。
俺は狂った。騎士団に命じてリリーの出産に関わった者を取り調べたが・・・
サバトが進言した。
「陛下、出産は命がけでございます。よくあることです。犯人捜しは疑心暗鬼を生じます。おやめになった方が宜しいでしょう」
「うむ・・」
俺は言うことを聞いた。
その後、ミリアを王妃に迎えた。
寵愛をした。その子が生まれればザバト家は安泰だ。
リリーとの子は乳母と共に離宮に預けた。
元王妃にとって複雑な心境があるが、元王太子の子の子だ。可愛がって無聊を慰めてくれたのもあるだろう。すくすくと成長したと報告があがる。
則妃は取らない。
ミリアだけを寵愛した。ザバトは大喜びだ。
後ろ盾のある子が生まれれば王になる。と信じて疑わない。
それから、20年待った。子は産まれない。もう王妃は子を産むには危険な年齢だ。
一族の娘を則妃にと要求されたが、断り続けた。
そしたら、サバトは死んだ。既に高齢だった。
「サバト侯爵殿!」
侯爵が死んだ。葬式で俺は泣いた。盛大に泣いた。だが、悲しみからではない。喜びからだ。復讐のチャンスだ。
俺は王宮の役人達の支持を得ていた。
まずしたことは情報源を失わせることだ。
尚書には、手紙を俺に直接届けることにさせた。
今まではザバトが検閲していた。
信じられないことであるが、ザバトは王宮の役職はなかった。故にあちこちに口を出すことが出来たのだ。
手紙を閲覧することで諸候と王の関係を監視していた。
俺は手紙を書き。諸候を取り立てることにした。
サバトの息子達には、名誉職や地方の官吏に任命した。
権力を削られると思ったのだろう。
その苛立ちが王宮雀たちが噂を始めるくらいになった。
そして電撃的に王太子の指命だ。子供はリリーとの子しかいない。
後見人を俺の義父の王族、義母上の家門に依頼した。公爵家だ。
これで勢力を巻き返せる。
ミリアとの子?いない。王宮の薬役人に依頼して、子が生まれなくなる魔道薬を飲んで性行為に励んだのだ。もしかして、サバトは義父上に飲ませていたのか?それは知るよしもない。
そして、サバトの息子達が、王妃を仲介して勢力を巻き返そうとしたが。
既に遅かった。
遂に反乱を起したが、国軍でサバトに付く者はいなかった。
・・・・・・・・・・・
「旧サバト侯爵家は全員処刑だ」
「お待ち下さい。本当に私の一存で行いました。息子達は許して下さい」
「ほお、調べで、我が息子を殺そうとしたことも分かっている。離宮にやったから、勝手に王位につける気なしと判断したとある」
やはり、リリーは賢かった。
子供も、他家に嫁いだ娘も全員四肢をもぐ車裂きの刑にしたが、意外な事に義母上はミリアの処刑には反対をした。
「・・・ミリアだけはやめなさい。王妃でも処刑される前例をつくりましょう。そしたら諸候は妃を差し出すことはなくなります」
これは言う事を聞いた。辺境の修道院にやった。
かくして、ザバトの墓まで掘り起こした王国史上最も凄惨と言われる大粛清を行ったが、後悔はない。
息子は離宮の役人の子と仲が良い。
この話をして、それでも娶りたいのなら許可をするつもりだ。
最後までお読み頂き有難うございました。




