『日本改造計画』外伝:その捌<『多夫多妻』ドラマ(5)主婦はつらいよ.
「ホント、ムカつくぅぅぅぅっ!」
今日はママ友同士の女子会、フランス料理店に集まっていた。
ランチの通常価格が1998円の所、レディースデーだけ1499円。
こう言う『気配り』が、できる店を厳選して選ぶ賢い女である事を誇っていた。
「ジョーダンじゃないわよ! ワタシャ、オクサンだっていうのに!」
「アイツラ! なにかってぇーと、『ケンポー』をタテにしやがるぅぅぅ!」
「オマエが、かせいだカネは、アタシのナイジョのコーのオカゲでしょーー!」
「しかも、ドニチは、イエでぐーたら。カジてつだえ!」
「こっちは、24ジカン365ニチ、ハタラキヅメなのにぃぃぃぃっ!」
* * *
女子会が、終わると家に帰り、洗濯物を取り込む。
「……以上から専業主婦の年収は、一千万円に該当する事となります。」
「ホント。テレビだけが、シュフのシゴトのタイヘンさをわかってるわぁ。」
「あら、タイヘン。ドラマのサイホーソーのジカン。ぽちっとな。」
そんなこんなしていると、長女が、帰宅した。
「ただいまぁ。」
「おかえりぃ。」
そう、テレビから視線を移すことなく返答した母親だった。
その為、娘の視線が放置された洗濯物の山を一瞥した事には、気付かなかった。
「あたし、出かけてくるね。お母さん。」
ランドセルを片づけて、身軽な服装で外出する長女だった。
「いってらっしゃい。遅くならないようにな。」
そんなこんなしていると、長男が、帰宅した。
「……。」
「『ただいま』くらい、いーなさいね。」
帰宅すると学生服から私服に着替え、洗濯物をたたみ仕分けした長男だった。
そして、自身の服を片づけると、塾へ急ぐ長男だった。
「……。」
「『いってきます』くらい、いーなさいね。」
そうこうする内に、夕方になる。
「あらタイヘン。コドモタチにオットが、かえるジカンだわ。でもダイジョーブ。
いそがしいシュフのミカタ。レートーショクヒン! スーパーのオソウザイ!」
これで、今晩の献立は、問題ないとばかりに洗濯物に視線を向ける母親だった。
「マッタク……。あのコったら、ジブンのことばっかり。キクバリが、たりないのよねぇ。」
* * *
こうして父母娘息子の四人による一家団らんが、始まった。
「お父さん、今日もあたしが、洗濯物たたんだのよぉ。」
「そうか。『継続は力なり』だ。しっかり励みなさい。」
「……。」
露骨にしかめっ面をした長女だった。が、別段、特段、仏壇、何も言わなかった。
「ちょっと、ゴハンにミソシルかけてタベルのやめなさい。オギョウギワルイでしょ!」
「お母さん、お父さんも同じ事してるよ。キモチワルぅ。」
こうしてご飯を流し込むと、『ごちそうさまでした』を置いて部屋を後にした。
「お母さん、お父さんとお兄ちゃん、おかず食べてないよぉ。」
「しょーがないわ。スキなだけたべなさい。」
「わぁい。」
* * *
時と場所は、移って夫婦の寝室だ。
「君、今日の料理は、どうやって作ったのかな。」
「はぁ! だったら、アンタは、どうやってカネかせいでいるのよ!
たいしたかせぎもないくせに、シュフのシゴトにクチだすな!
そんなにいうならカネ! カネだしなさいよね!」
「つまり、何を使ってどんな料理をしたのか教えてくれないんだね。」
「アンタこそ、どんなシゴトすりゃ、こんなビンボーくらしになるのよ!
ウチが、ビンボーなのは、ゼンブアンタのセーなんだかあらね。もっとかせぎなさい!」
「全て、私のせいにするんだね。」
「こっちは、ケッコンしてやってんのよ! カジしてやってる! カネかせぎなさい!
オトコのくせにヤクタタズ! こっちは、ケッコンしてやってんのよ!」
* * *
「本当にお世話になりました。転職先だけじゃなく、新しい嫁まで紹介して下さった。
しかも、新しい妻は、私の実家暮らしを受け入れ、私の連れ子とも仲がよい。
転職先も実家に近い。本当にありがとうございます。」
「いえいえ、あなたを必要としている会社があるのです。『三方一両の得』ですよ。」
「それに、新しい妻は、手作り弁当を毎日作ってくれます。しかも、今の会社には、
愛妻弁当を愛用する社員も多く、方々とのコミュニティも形成出来ています。
おかずの交換会もできています。全て今の妻のお陰です。」
「それは、なにより。」
「本来なら、前の妻との離婚をしなければならないのに、新憲法のお陰で必要ない。
本当にありがたい話ですよ。相談に乗ってくださって本当にありがとうございます。」
* * *
ある日、某SNSに書き込みがあった。
「38歳専業主婦です。中学二年生の長男と、小学六年生の長女の二児の母です。
ある日、夫が何の事前連絡も無く息子だけ連れて蒸発しました。
しかも、夫に家のローンも解約されたせいで、来月には家から追い出されます。
娘を一人抱えて、今後の生活もあります。夫との連絡を試みています。
が、ブロックされ、養育費すらままなりません。
私は、家事も全て分担し、夜の生活も拒否していませんし、浮気もありません。
皆様、このような仕打ちをする男をどう思われますか。」
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