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「……さん、……グランさんっ!」
なんだよ、うるせぇな。分かってるよ、ギークだろ。
ぱちりと目を開けると、相変わらずけらりと笑うギークがいる。どこかロボットのような表情は、いつの間にか血の通った顔に、どこかいたずらで無邪気な表情に変わっていた。そのまま手を引かれ、立ち上がりながら言った。
「なぁ、ギーク」
「どうしました?」
「死ぬのって、すごく怖いな」
「はは、なんですか、それ!」
笑って言えば、ギークは腹を抱えた。カラカラ笑い合いながら帰る途中、この "はじまりの大地" にいるはずもない蝶がふわりと横切った気がした。
「グランさん! 今度は爆発2段階の爆弾とかどうっすか?」
ゴブリンの家に帰れば、生き生きとしたゴブリンたちがそこにいる。悔しそうにしながらも笑いながら提案するガンロに呼ばれ、作戦会議に参加した。そうした中、端末でちらりとレビューを見れば、散々爆弾や武器でプレイヤーを追い詰めていた俺たちは——こう評されていた。
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553.
小癪なゴブリンあらわる
554.
ゴブリンにやられるとか雑魚すぎだろwwww
555.
アプデが入ったんですーー。エアプ乙。
556.
雑魚モンスター、知恵つけてきててワロタ
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"小癪なゴブリン" の文字にからりと笑って掲示板を皆に見せつける。上がった雄たけびに、さらにカラカラ笑い、もっと追い詰めてやろうぜと俺は、俺たちゴブリンは机に向かい、気づけばもう寝る時間になっていた。布団に入ると、ふっと肩の力が抜け、気づけば陽が昇っている。
「……薬、飲んでないのにな」
珍しく途中で目が覚めることなく、すっきりとした朝を迎えた気がする。なにか心のつっかえがとれたような、体の軽さ。まだ少し早いかと寝ているゴブリンを横目に伸びをし、変化があったのかもしれないと、スライムに、あの医者に伝えに行くことに決めた。
トンっと端末をタップすれば、荒涼とした大地は、冷たいコンクリートの床へ。目の前のひび割れた扉の向こうには、きっと跳んで話をせびるスライムがいる。
——『聞ーかーせーて、聞ーかーせーて!!』
ごろごろ床を転がる、ゲームが大好きで、ガキ見たいな。そいつに頼まれていた "みやげ話" を頭に浮かべて、思わずカラりと笑ってしまった。……さて、どこから思惑通りなんだか。
イッテツ先生、か。
茶菓子でも持ってくればよかったな。きっと、長話になるだろう。