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こちら、モンスター心療内科  作者: 泉 佑理
はじまりのゴブリン
5/25

5

「……さん、……グランさんっ!」


 なんだよ、うるせぇな。分かってるよ、ギークだろ。


 ぱちりと目を開けると、相変わらずけらりと笑うギークがいる。どこかロボットのような表情は、いつの間にか血の通った顔に、どこかいたずらで無邪気な表情に変わっていた。そのまま手を引かれ、立ち上がりながら言った。


「なぁ、ギーク」

「どうしました?」

「死ぬのって、すごく怖いな」

「はは、なんですか、それ!」


 笑って言えば、ギークは腹を抱えた。カラカラ笑い合いながら帰る途中、この "はじまりの大地" にいるはずもない蝶がふわりと横切った気がした。


「グランさん! 今度は爆発2段階の爆弾とかどうっすか?」


 ゴブリンの家に帰れば、生き生きとしたゴブリンたちがそこにいる。悔しそうにしながらも笑いながら提案するガンロに呼ばれ、作戦会議に参加した。そうした中、端末でちらりとレビューを見れば、散々爆弾や武器でプレイヤーを追い詰めていた俺たちは——こう評されていた。



 ===


 553.

 小癪なゴブリンあらわる


 554.

 ゴブリンにやられるとか雑魚すぎだろwwww


 555.

 アプデが入ったんですーー。エアプ乙。


 556.

 雑魚モンスター、知恵つけてきててワロタ


 ===


 "小癪なゴブリン" の文字にからりと笑って掲示板を皆に見せつける。上がった雄たけびに、さらにカラカラ笑い、もっと追い詰めてやろうぜと俺は、俺たちゴブリンは机に向かい、気づけばもう寝る時間になっていた。布団に入ると、ふっと肩の力が抜け、気づけば陽が昇っている。


「……薬、飲んでないのにな」


 珍しく途中で目が覚めることなく、すっきりとした朝を迎えた気がする。なにか心のつっかえがとれたような、体の軽さ。まだ少し早いかと寝ているゴブリンを横目に伸びをし、変化があったのかもしれないと、スライムに、あの医者に伝えに行くことに決めた。

 トンっと端末をタップすれば、荒涼とした大地は、冷たいコンクリートの床へ。目の前のひび割れた扉の向こうには、きっと跳んで話をせびるスライムがいる。


 ——『聞ーかーせーて、聞ーかーせーて!!』


 ごろごろ床を転がる、ゲームが大好きで、ガキ見たいな。そいつに頼まれていた "みやげ話" を頭に浮かべて、思わずカラりと笑ってしまった。……さて、どこから思惑通りなんだか。

 イッテツ先生、か。

 茶菓子でも持ってくればよかったな。きっと、長話になるだろう。

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