#2
二話です。よろしくお願いします。
「は、離してくれ!なんでパンツなんか!」
緑色の小さな生物の協力プレイを相手に、おじさんは必死の抵抗を続けていた。引っ張られた白いブリーフが伸びて、もう少しでおじさんのおじさんが姿を現しそうだった。
ガア!グエ!ガア!グエ!
すでに奪い取ったおじさんの服を取り合ったり、振り回したりしながら、小さな生き物たちが取り囲んで声援を送っている。まるで運動会の綱引きだ。
(おいおい・・・なんだこの画は・・・。)
予想外の場面に一樹は呆然としていた。
(これは助けに入るべきなんだろうか・・・。)
しかし助けに入ったとしても、自分が役に立てるか不安だった。なぜなら今脱がされているおじさんは筋骨隆々で、まるで海外のアクションスターのようだったからだ。そんな人間相手に戦えるほど、あの小さな生物の集団は手強いのだ。
(もし命にかかわる場面になったら助けよう・・・うん、そうしよう。)
そう自分に言い聞かせて、少し身を引こうとしたそのとき、一樹は地面の枝を踏んでしまった。ポキッという乾いた音に気付いた小さな生物が一斉にこっちを見た。
(やべっ!気付かれた・・・)
そのまま隠れていようと思ったが、小さな生物達はこっちに近づいてくる。しゃがみ歩きで逃げられるわけもない。一樹は観念して、手を上げながらゆっくりと立ち上がった。
「こ、こんにちは~。いや、ハローかな?あの~決して覗いてたわけじゃなくてですね・・・。」
グワ ガーガガー ググ
こちらにはわからない言葉で生物達は会話を始める。そしてなにか道具のようなものを手に取り始めた。
「逃げろ!」
ブリーフのおじさんが叫んだ。緑の生物達がその声を聞いて、一斉に一樹の方に向かってきた。一樹は踵を返して一心不乱に走り出した。
「ちくしょう!なんなんだよお!」
慣れない森の中を走るのは難しい。地面に落ちた枝や木の幹に足を取られる。(靴を履いていたのは幸運だった。)一方緑の生物達は慣れているのか、どんどん距離をつめてくる。そのうえパチンコなどの飛び道具も使ってきた。
「ハアハア・・・捕まってたまるかよ!」
しかしそのうちの一体に追いつかれて、背中に飛びつかれた。一樹はなんとか引き剥がして投げつける。小さいがそれなりに重い。
「よし!こうなったらかかってこい!」
一樹は慣れないファイティングポーズをとって迎え撃とうとする。飛んでくる飛び道具の弾が体に当たって痛い。よく見ると弾は木の実のようだ。
前方から飛び込んでくる敵を思いっきり蹴り飛ばし、横から来る敵は腕で薙ぎ払う。繰り返しているうちに、思いのほか戦えている自分に驚く。
(なんだ、大したことないじゃないか!)
「オラオラ!」
次から次へと飛び込んでくる敵を倒し、飛び道具を使ってくる敵には敵そのものをぶつけて倒す。
(俺って結構強いんだな。ハハハハハハハッ!)
「よし!どんどんこい!お前らじゃ俺は倒せ・・・」
かっこいい台詞を言おうとしたその時、ゴンッ!という鈍い音と共に脳が揺れた。意識が飛びそうになりながらも視線を下に移すと、そこにはものすごい太い筋肉質な腕が見えた。
グワーッガァ!(ラリアット!)
一樹の体は一回転して地面に倒れた。遠のく意識の中最後に見たのは、やたらと腕だけ太いあの緑色の生物だった。
(あっ・・・そういうのもいるのね・・・)
周囲ではわけのわからない言葉で小さな生物達が騒いでるのが聞こえた。
(お父さん・・・お母さん・・・僕は全然強くありませんでした。)
そのまま一樹は気を失った。