魔人の狂想(41)
41
試着室に入り、着ていた服を全てストレージに突っ込む。
このゲーム時代から愛用しているアイテムストレージというものは、この世界がリアルになってもかなり有能だ。
何せ、一旦ぐしゃぐしゃにシワがついたとしても、一度中に入れてしまえば綺麗にアイロンがけされて戻ってくるのだ。
濡れたものもすぐに乾くしね。
壊れたものを修繕してくれるわけではないにしろ、しかし元の世界では服を脱ぎ散らかす癖があった俺にとって、とてもありがたい存在なのは言うべくもない。
さて、そんなわけで俺はアリスに手渡された衣装を試着してみることにする。
全体的に青系統と紫系統の色で統一された衣装を次々と装着していく。
試着室に設置されている等身大の姿見で確認してみれば、全体的に見て深夜アニメの魔法少女みたいな印象を受ける。
魔女が被る様な大きな三角帽子に、革製のベルトがあしらわれた丈の長い青いケープコート。
裾には星を象った飾りレースがあしらわれていてとてもかわいらしい。
その下には白いブラウスと無い胸を強調する様にコルセットベルトが巻かれている。
そこには手裏剣みたいな形の星の切り抜きがあしらわれていて、ブラウスの白をチラ見せさせている。
スカートの丈は短く、裾には白い一本のラインが引かれていて、それを止まり木に一羽のフクロウが刺繍されていた。
そんな、星とフクロウをモチーフとした意匠が施された、シンプルかつかわいらしいデザインに、心の奥底で名前の知らない感情がふつふつと湧き上がってくる感じがする。
羞恥か、それともかわいいと言う感情か、何かはわからないが、なんだか心の奥底から力が湧いてくる様な……例えるなら、小さい頃にやった、戦隊モノごっこで戦っている時に、なりきりすぎて心がハイになるようなそれに少し似ていた。
「どう、着替え終わったかしら?」
アリスの声が聞こえて、俺は思わず肩をびくつかせた。
ああ、ロゼッタが恥ずかしがっていた感情がなんとなくわかる気がする。
これから友達に、いつもと違う姿を見せることになるのだ。ワクワクドキドキして緊張が止まらないのである。
きっと、さっきの彼女も、表面上恥ずかしがってはいたが、本心は褒められて嬉しかったに違いなかった。
「どう、かな?
ちょっと恥ずかしいけど……似合う?」
短いスカートがヒラヒラするのが気になって、無意識に手で押さえながら二人に尋ねた。
「「……」」
しかし、二人から反応が何も来ない。
「え、えっと……?」
少し不安になって顔を覗き込んでみる。
目の前で手を振ってみて、おーいと呼びかけてみたりするが、しかし二人とも唖然として動こうとしない。
「……なんか、そのケープのスリットんとこから見えてる肩とか、大胆に露出してる太ももとかみてたらさぁ、こう、なんて言うの? えっちやなぁ……って感じになってくるわ……」
「えぇ……」
しみじみと批評するロゼッタに、若干困惑気味な声を出す。
だって、評価の仕方がまるでおっさんなんだもん……。そりゃそんな声も出るよ……。
ちなみにロゼッタは着替えずにそのままの格好を継続していた。
フーデッドケープについていた値札が外れているのをみるに、おそらく購入したのだろう。
「そうね、あとは……タイツとブーツも合わせようかしら」
言って、いつの間にか用意していたらしいそれらをカゴから引っ張り出してくる。
「タイツ用意してたなら先に言ってくれれば良いのに」
そしたら、こんな恥ずかしさも少しは軽減できたかもしれない。
受け取って、再び試着室に引きこもり、装着する。
何も履いてないと股下がスースーして落ち着かないんだよな……。
うわ、でもこれ結構薄手だ……。
下手したらパンツ透けそうなんだけど……。
「これでどうかな?」
再び試着室のカーテンを開く。
すると、アリスは満足げに頷いてこう言った。
「うん、余計にえっちになったわね!」
「余計にえっちになっちゃった!?」




