魔人の狂想(37)
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そんなこんなで紆余曲折ありながらも、俺たちはフォルルテ先生の部屋の前に到着した。
事務室で目的地の部屋番号が載った資料を探しているうちにアリスとも合流できたので、三人一緒である。
これは余談であるが、結局あの警備員はアリスが殴って気絶させたことにより事無く終えたらしい。
いやいや、全然事無くじゃないんだけど、というツッコミは、とりあえず喉の奥に押しやったのは、今から数分前の話だが。
閑話休題。
「んじゃ、開けんで」
ガチャ。今度は一秒も待たずに解錠に成功する──が、ロゼッタが少し怪訝な顔をしている事に気がつく。
「鍵……閉まっとらんやん……」
「「!!」」
その瞬間、三人は嫌な予感を覚えていた。
俺たちは急いでドアを開けると、玄関で靴の土を落とすのもそこそこに一気に寝室まで駆け込んだ。
するとそこには──
「チッ、遅かったか!」
捲れ上がった布団。
開け放たれた窓と、風に靡く白いカーテン。
どうやら彼は既に行方不明になっていたようだった。
「連れ去られた……?
いや、だとしたら動機がわからない。
もしかして、もう一度発狂させられて自分から失踪した……?」
頭の中に、一瞬だけ山月記の一幕が駆け巡る。
「まずいことになったわね……」
アリスの言葉に、俺は頷いた。
フォルルテ先生は、たとえ腐っても冒険者学校の教師だ。それなりにレベルは高いし、そんな人物が夜街で暴れているとなると被害は甚大になりかねない。
ということは、既に暴れているというのなら、もう騎士団に連行されている可能性がある。
つまり俺たちは最後の情報源を失ったのである。
それにしても、フォルルテ先生を二度も発狂させる理由は何だ?
何が理由で彼を二度も?
「……とりあえず、考えるのは後にするわよ。
ここに長居するのは危険だわ」
アリスの提案にロゼッタも承諾する。
俺たちは──正確にはアリスだけだが──さっき警備員に一回見つかっているのだ。
同じところに長居しては、また見つかって面倒なことになりかねないことは、想像に難くない。
こうして、俺たちの夜の作戦は失敗に終わったのだった。




