魔人の狂想(21)
21
その日、俺は謎の腹痛で目を覚ました。
「っ!?」
痛みの発生源は下腹あたりで、妙にじんじんするというか、今まで感じたことのないタイプの痛みに、俺の頭は警鐘を鳴らした。
(胃が痛いわけじゃない、腸のあたりという訳でもなさそう……。なんだ、何だ何が起こってるんだ……!?)
訳のわからない痛みが、波のように下腹を刺激して、まともに頭が働きそうもない。
「と、とりあえずトイレ……!」
上にかけてあったタオルケットを押し退け、足を床に下ろす。
部屋には昨晩のパーティーで散々騒いだ、この世界で初めてできた二人の友人が、各々自室から持ってきた布団にくるまって眠っていた。
俺は、そんな二人に少しだけ癒しを覚えつつも、耐えられそうにない強い腹痛に顔を歪めながら、部屋に設置されていた個室トイレへと駆け込んだ。
「痛い痛い痛い痛い……なんだ、昨日変なもん食ったっけ……?」
『白い紐パン』の紐を引っ張って装備を解除し、便座に腰を下ろす。
この腹痛は、大の方とは全く別種のものだったが、知らない俺にはこうするより他に、対策する方法が思いつかなかったのである。
そうやって便座に腰を下ろし、とりあえず小さい方の用を足すべく前に身を屈める──と、不意に、自分のおろしたショーツの裏面が、赤く汚れているのに気がついた。
「……ん? 何これ、なまぐさ……ってなんだ血……。
……えっ、血!?」
一瞬、脳裏に血尿という単語が思い浮かぶ。
しかし、現在絶賛放尿中のその部分からはヒリヒリとした痛みは感じず、というかむしろ痛いのはもっとお腹の奥の方で。
「待てよ? これなんか聞いたことがある……」
そこで、俺はピンときた。
異世界に来て、ちょうど今日で一ヶ月になる。
一ヶ月。女の子。ショーツに血。
これらの要素が示す結論は一つしかなかった。
(あっ、これ……生理だ……ぁ!?)
その後、トイレから出た俺は、助けを求めるべくアリスとロゼッタに声をかけて対処法を知り、とりあえずなんとかなった。
(これで俺も、立派な女の子か……。ハハ……)