第9話 期末テスト対策
「もう1学期が終わっちゃうねー」
「いよいよ期末テストだよ」
「文ちゃんに去年の過去問もらったよ、コピーする?」
「いいの? サンキュー!」
「あんまり当てにするなって言ってた」
「うん、試験範囲、広いしね。でも先生の傾向は分かるから助かるよ」
今日は由香も美哉も部活が休みだが、文治郎は部活があるため、由香が美哉の家で一緒に試験勉強をしている。
由香は中学から美哉と仲の良い女の子の友人なので正宗も大歓迎だ。
「美哉ちゃん、由香ちゃん、おやつにゃ」
正宗がアイスを持ってきた。丸いアイスにチョコで猫の顔が描かれている。耳はクッキーだ。
「おじさん、ありがとう。でも無理しないで休んでいてください…」
「大丈夫にゃ〜」
頭にアイスノンを乗せた毛皮モコモコな正宗は、早くも夏バテだ。
「パパ、やっぱりカットしてもらおうよ」
「ダメにゃ…、露子ちゃんが惚れ込んだこの毛皮を刈るなんて出来ないにゃ…」
「ママが生きていたら、絶対に刈ってって言うよ! パパの健康が1番なんだから」
「露子ちゃん……美哉ちゃんが生まれる前、露子ちゃんに一服もられたにゃ。僕が眠らされている間に1cmの長さに刈られたにゃ…」
「ママがひどい…」
「目が覚めて泣いて怒ったら、露子ちゃんはもっと泣いたにゃ…。このままじゃ僕が死んじゃうって」
「パパ…」
「その時の写真にゃ」
正宗が差し出したタブレットにはスッキリとした短毛種のような正宗と嬉しそうに寄り添う露子が写っていた。
「わあ! シュッとしてカッコいい!」
「うん! パパがシュッとしてる! カッコいい!」
「……。」
正宗の耳とヒゲがピンと立った。
「美哉、やっぱり露子さんに似てるね! 目はおじさん似だ!」
「そ、そうかな〜」
「美哉はお人形みたいで可愛いよ!」
若い露子と正宗の写真で盛り上がる美哉と由香。
無言で考え込む正宗。
数日後、正宗は自慢の毛皮を1cmの長さにカットして夏バテから回復した。心配事の無くなった美哉は伸び伸びと期末テストを受けることができた。