第53話 宗平3歳
本日は複数話を投稿しています
「美哉ちゃんにゃあ〜! 会いたかったにゃ!」
宗平が猫なで声で美哉に抱きつく。
獣人の子供の中でも特に暴れっぷりの酷い宗平だが、美哉の前では借りてきた猫のように大人しい。お行儀良くできるのに家ではやりたい放題な宗平にモヤっとする時宗と宗一郎。
「宗平君は良い子にしてた?」
「もちろんにゃ! 僕は良い子にゃ」
「嘘はダメだよ」
「嘘じゃないにゃ!」
「良い子は家中の壁に落書きはしないし、テレビを床に倒して、その上でジャンプしたりしないし、家の中で忍者ごっこをして家中のカーテンをダメにしたりしないよ。そういうことをするのは悪い子だよ」
「そ、それは…」
気まずそうに両親と兄達をみる宗平。
「美哉ちゃんに言いつけるなんて酷いにゃ!」
「酷いのは嘘をつく子でしょ! 宗平君は悪い子な上に嘘つきなの?」
「俺は良い子にゃ!」
「今までは悪い子だったけど、これからは良い子になれる?」
「出来るにゃ!」
「約束ね」
「2人の約束にゃあ。恋人同士みたいにゃ」
── 予想どおり宗平は約束を守れなかった。
この翌日にはやらかした。洗濯機に洗剤ではなくごま油を1本まるごと投入して大惨事だ。
すぐに美哉に報告され、約束を守れなかった宗平は美哉の家に出禁になった。
その週末、時宗と宗一郎が2人だけで美哉の家に泊まりに行き、残された宗平は大泣きした。宗平の育児を通じて強さを増した吉宗と志津に確保され、宗平は逃亡もままならず両親のもとでお行儀良い週末を過ごしていた。
その後も度々、いたずらを繰り返す宗平はお正月に祖父母の家で集まった時にようやく美哉に会えたが、数々のいたずらを直接叱られた。
美哉に会いたい宗平は、少しずつ普通の子供に近づいていき、吉宗一家に平和が訪れた。




