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第4話 いつもの晩ご飯

「ただいま〜」

「お邪魔しまーす」


「おかえりにゃ」

「今日は何にしようか」

美哉が冷蔵庫の中身を確かめる。

「鮭はダメにゃ、明日のお弁当に入れるからにゃ」

「じゃあお肉が良いかな。お祝いっぽいご飯にしたいんだ」

「お祝い? 何かあったにゃ?」

「俺が次の県大会でレギュラーに選ばれたんだ」

「それはめでたいにゃ! ハンバーグがいいにゃ!文治郎の好物にゃ」

「パパの好物でもあるよね」

「ハンバーグの日は幸せにゃ!」

「俺、玉ねぎ切るよ」

「ありがとう私はお弁当箱を洗うね。ここは2人で大丈夫だからパパはお仕事してて」

「ありがとうにゃ、美哉ちゃんは良い子だにゃあ」


正宗が嬉しそうに仕事に戻る。

文治郎の両親は美容師で、2人が経営するサロンは営業時間が22時まで。ぴったりに終われない日もある上に片づけもあり両親の帰宅は深夜になる。


文治郎が幼い頃は、両親のどちらかがいったん帰宅して文治郎にご飯を食べさせてお風呂に入れて、またサロンに戻る…という生活だった。


文治郎に食べさせている食事がお弁当屋さんやスーパーで買ったお惣菜やお弁当と知った正宗が1人も2人も一緒にゃ! と言って一緒に晩ご飯を食べるようになった。

そんなご迷惑をお掛けする訳にはいかないと断りまくる文治郎の両親を2人まとめて壁ドンして説得した。脅したとも言う。


小学生になると2人は競ってお手伝いするようになり、文治郎は料理上手になった。


今日のハンバーグもほぼ文治郎が作った。

「文ちゃんのお祝いなのに…」

「うん、一緒に作って楽しかった」

「美味しそうにゃ、いただきますにゃあ」

ハンバーグの目玉焼き乗せと大根おろしを乗せた和風ハンバーグ。和風と洋風の欲張り定食だ。大根は味噌汁にもサラダにも入っている。1本を使い切るのは大変なのだ。


「美味しいにゃあ!」

「うん! 美味しい! 今日もパパのハンバーグと同じ味」

「俺にとって1番のご馳走はおじさんの料理だから。おじさんの味を再現出来るようになれて嬉しい」

「照れるにゃ」

正宗の目とヒゲが波型に崩れる。


「そうだ、余ったタネはピーマンに詰めておいたから」

「助かるにゃ、明後日のお弁当に入れるにゃ。文治郎は気がきくにゃ」

「俺こそ、いつも俺の分までお弁当作って貰っちゃって…」

「成長期だからにゃ、栄養バランスと量をしっかり管理する必要があるにゃ。パンを買って済ませるようになったら今までの食育の苦労が水の泡にゃ」

これからもお弁当を作る宣言だ。断ったら壁ドンされるだろう。

答えは、はいorイエスしか許されない。


「あのね、パパ」

「何かにゃ?」

「来年、文ちゃん予備校に通うんだって」

「またすぐに受験にゃあ」

正宗のヒゲが下を向く。

「それでね、私も通ってみたいかなあ…って」


「さすがに大学受験は予備校に通ってプロの指導を受けたいと思って」

「私も同じ予備校に通ったら行き帰りは一緒だからパパも安心でしょ?」


「それは良い考えにゃ! 文治郎、美哉ちゃんに変な虫がつかないようガードするにゃ!」



── 文治郎こそが美哉についた虫だとは言えない2人だった。


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