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第1話 パパと美哉

「美哉ちゃん、お弁当にゃ。忘れ物はないかにゃ?」

「ありがとうパパ、忘れ物はないよ。行ってきます!」

「気をつけてにゃ!」


身長180cm超えで毛足の長いケットシーの正宗が玄関で愛娘に手を振る。キジトラかメインクーンかノルウェイジャンフォレストキャットっぽい毛並みで可愛い。


「さて、あとは洗濯が終わったら仕事にゃ」

ルンバとブラーバに掃除を任せた正宗は、忙しいにゃ〜 忙しいにゃ〜 と言いながらエプロン姿で洗濯機に向かう。


人族の妻を病気で亡くして10年、妻の出産をきっかけに仕事を在宅に切り替えた正宗。家事も好きなので充実の毎日だ。


ケットシー族の正宗の見た目は巨大な猫だが、妻は人族だった。2人の間に生まれた娘の美哉は猫耳と猫尻尾付きの人族というあざとい程に可愛い見た目だ。小さい頃からとても可愛かった美哉を溺愛する正宗は超過保護だ。


正宗たちの暮らすコンドミニアムの、ちょうど下の階に住む美哉の幼馴染みの文治郎ぶんじろうは幼い頃から正宗の要注意人物であり、頼りになる美哉のボディーガードでもある。


ベランダで洗濯物を干す正宗の目に映るのは可愛い美哉と一緒に登校する文治郎の姿だ。2人の距離が近過ぎて思わず爪が飛び出すが、洗濯物を傷つけそうで慌てて引っ込める。


美哉のボディーガードとして一緒の登校を許しているが正宗の許すラインを踏み越えてきたら遠慮無く猫パンチをお見舞いするつもりだ。


美哉は高校一年生で文治郎は高校二年生。美哉が三年生になると一人で通学することになるので、正宗は美哉を毎日送り迎えするつもりである。


美哉が中学三年生の頃に毎日送り迎えしようとして親子喧嘩になったことは、もう忘れた。ケットシーは都合の悪い過去は振り返らない。


結局、高校一年生の文治郎がそれまで通り美哉を中学に送り届けていたが正宗は納得できていない。

中学三年生の美哉が放課後に毎日、文治郎から勉強を教わっていたことにもジェラシーだ、未だにヤキモチでモヤモヤしている。


── 美哉ちゃんは文治郎に気を許し過ぎにゃ、毎日のように放課後も文治郎と一緒にゃ。もっと小さな頃はパパにべったりだったのににゃ。


プリプリと怒りながらチラシアプリを起動して、本日のお買い得商品をチェックする。


── 今日は丸エッツで魚が安いにゃ。野菜はムギゲヤにゃ。業務用スーパーで調味料も買うにゃ。メールチェックと返信を済ませてから家を出れば開店時間にぴったりにゃ。丸エッツの鮭は明日のお弁当にするにゃ。


PCを起動してメールをチェック、スケジュールアプリと手帳に予定を書き込みながら返信してゆく。Backlogも確認するが特に返信はない。


── どの案件もオンスケにゃ。新しい案件もボチボチ入ってきているにゃ。


正宗の仕事はWEB制作やWEBデザインだ。継続して良い条件の仕事を受注するため、家事の合間に最新の技術やWEBマーケティングの勉強も欠かさない。自宅で仕事をしているがセミナーで外出することも多い。


買い出しや洗濯などの家事を午前中に済ませて午後に集中して仕事をこなすのが正宗のお仕事スタイルだ。

最近は美哉が夕食当番などを請け負ってくれるようになり、仕事にかけられる時間が増えた。


── 美哉ちゃんは可愛くて良い子なのにゃあ。さて、ブログのコメントもチェックするにゃ。


正宗は美哉が生まれる前から雑記系ブログを運営していたが、美哉が生まれてから家族のエントリーが中心となり、美哉が幼い頃には子育てブログとして人気を集めていた。子育てがひと段落した最近は再び雑記ブログに戻っている。珍しいケットシーの顔出しブログなので猫好きな固定ファンが少なくない。

ちなみにブログからの広告収入はなかなかの金額だ。


ブログのコメントに返信し、今日の美哉のお弁当をブログとインスタにアップして閉じる。


日課のスクワットとエクササイズで身体をほぐし、お財布とエコバッグを手に取る。


── さて、お買い物に行くにゃ。


将来、文治郎が美哉とお付き合いしたいと言い出したら、許す代わりに文治郎をボコボコにしてやろうと軽い運動を続けている。



すでに美哉と文治郎が付き合っていることに正宗だけが気付いていない。

2人は学校やご近所で評判の、初々しく可愛らしいカップルだ。

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