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異世界の水族館でバイトライフ!  作者: ふくろうなぎ
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倫理と解説

展開と話しの進むスピードが遅くてすみません。

ジンベイザメのナブラさんはアロハシャツを着ています。

ジンベイザメは沖に住んでいるのですが、あったかいところに住んでいるイメージがあったので珊瑚区に入れました。

寒い。冷たい。凍える。絶対零度。こんな言葉が似合う町。それは寒水区。常に温度が0度近くに保たれており、防寒具なしでは生身の人間など五分も持たないだろう。今その町に奈緒はワニ男と来ていた。なぜワニ男と一緒にいるかって?それは………みんな!一話と二話を読んでくれ!


「やっぱりここは寒いな。行こう、区役所はあっちだ」


奈緒は街中を眺めながら歩いている。珊瑚区の魚達とは違い、ここの区の魚達は皆白かったり、灰色をしている。その魚達の中に異質な存在を見つけた。それは全身が真っ白いモコモコの毛で覆われ、明らかに魚とは違う顔をしている。


「ロロさん、あれってシロクマですか?」

「あ、ああ。でも、シロクマという言い方聞き捨てならないね。正確にはホッキョクグマだ。シロクマという言い方は………」

「わかりましたから。なんで魚達の中に動物がいるんですか?」

「ここ水族館でしょ。水族館にはホッキョクグマは必須さ。それによく見てごらん。他にも動物はいるから」


たしかによく見るとアザラシやトドなどの特徴を持った者達が歩いていた。彼らのような海に住む哺乳類は魚を主食としている。だが今はその魚達と並んで歩いている。不思議な光景だった。


「水族館は魚だけを見られる場所ではない。水族館とは海に住む生き物達と会える場所だからね」


そういうところは忠実に従っているところがロロらしかった。


そうこうしているうちに奈緒達は区役所の前に来ていた。その建物はクジラのような形をしており、口が入り口になっていた。


この建物はエレベーターが設置してあった。


「なんでここの区役所にはエレベーターがあるのにさっきの区役所にはないんですか?」

「それはね……………………」


ロロは淡々と話し出す。この海都は各省庁がある中央区を中心に八個の区で構成されている。ここの仕組みはなんら私たちの世界と変わらない。この海都を治める首相がいてその下にそれぞれの区を治める区長がいる。また議会で法律や予算を決める。各区に同じだけの予算が配布されるため、その使い道は各区に委ねている。珊瑚区は別のことに使ったのかエレベーターは設置できていなかったのである。


エレベーターは奈緒達を乗せゆっくりと上昇する。エレベーターが上昇するのとともに、エレベーター内部の数字のバーも上昇する。


そしてエレベーターは数字が4のところで止まった。


「ここの区役所は四階まであるんですね」

「ああ、さっきの珊瑚区の区役所は横に長かったから」


無駄話をしながら廊下を進む。区長室の前まで歩いて来ると区長室の扉は開いていた。

そして中から「どうぞ入ってください」と聞こえたので奈緒達は中に入る。


区長室の中にいたのは顔の真ん中から剣のように鋭いツノが生えたシロイルカのような生き物。でも体は人間の物と同じだった。そして軍服を着ている。

そのツノが生えたシロイルカのような生き物が話し出す。


「どうもはじめまして。私がここの区長、イッカクのカクルです。ノルトルク殿そちらのお嬢さんの紹介を」

「彼女は奈緒だ。この水族館でバイトしてもらうことになった」

「はじめまして!宮内 奈緒です」

「よろしく」


二人は握手を交わす。カクルの手は細いながらもガッチリと引き締まっていた。

ガッチリとした手の余韻を味わう奈緒に予期せぬことが起こる。

ロロがカクルに横から話しかけたのだ。別に話しかけたことは悪いことではない。だがカクルの特徴はその顔から生えた長いツノ。カクルがロロの呼びかけに反応しその方を向いた瞬間、その長いツノが奈緒の頭に直撃したのだ。


「どぅべし!!」


どこぞの世紀末の雑魚キャラのような叫びをあげ、頭を抱える奈緒の姿は丸まったダンゴムシのようだった。


「大丈夫か!すまない、ツノを磨いてる途中だったものだからツノをしまっていなかった。一生の不覚!」


カクルは慌ててツノをしまう。その姿は灰色の模様のあるシロイルカだった。

奈緒は「そのツノしまえるんかい!」と内心突っ込みながらも頭を抱える。


「この一撃で何人やられたか。奈緒君、カクルは悪気はないんだ。許してやってくれ。しかし私もヘルメットを持ってくればよかった」


お前も呑気に反省している場合じゃないだろ!目の前でか弱い女子が倒れているんだから助けろよ!カクルさんは許すけどお前は許さん!そう誓った奈緒だった。



「次はどこなんですか?」


頭に包帯を巻き、少し不機嫌そうな顔でロロに質問する。

あの後、頭にできたたんこぶに包帯を巻いてもらった。


「次の区は……と行きたいところだが全ての区を周っていたら1日じゃ足りないから直接、中央区に行こう。そこで君が質問したことに答えるよ」


奈緒が質問したことにとは魔法のこと。どんな魔法がこの海都にかかっているかが奈緒のなかでは重要だった。


中央区に行くためには路面電車に乗って行く。電気はどのように作っているのか。そういう魔法があるのか、などいろいろ聞きたいことはあるがそんな質問は後回しにする。それよりも重要な疑問が奈緒の頭の中を占めているからだ。


そうこうしているうちに中央区に到着する。珊瑚区、寒水区と見て来たが中央区はどの区よりも近代的だった。ビルが立ち並び、ほかの区にあったような公園やカフェなどのものは一切ない。ここはあくまで政治をする場所。暮らす場所ではないのだ。


農業省や財務省などの需要施設がある一点を中心に円形に並んでいる。その一点にあるのが首相がいる議会堂である。ここでは区の長や各省庁の大臣、種族の代表者が集まりいろんなことを話し合う。


「今から君に会ってもらうのはこの海都のトップ、首相だよ」

「マジですか?」

「至ってマジ」


中に入ると今まで行ってきた区役所よりも静かで、中にいる人数が多かった。

エレベーターに乗り込むと中にはエレベーターさんがいた。にこにこしていてとても可愛い。おそらくここが議会堂のオアシスなんだろうなと思った。


「その寝癖はどうにかなんないのかい?」


エレベーターを降りてからロロに頭の上のものを指摘された。


「すみません。無理です。こいつはもう私の好敵手(ライバル)なんすよ」

「言ってる意味がわかんないんだが、無理ってことでいいかな?」

「…はい」



「ここが首相室だ。緊張するだろう。なんせ、この中にいるのはこの水族館で一番ご高齢な方だからね」


ロロはいつになく引き締まった顔でドアをノックする。中から「どうぞ」と聞こえてから入る。これが大人のマナーだ。

首相はとんでもなく貫禄ある方だった。一見、茶色い魚に見えるだろう。だがよく見るとシワシワで細い目があって、中にうっすらと見える目は宝石のようの光っている。だが首から下はさっきのカクル同様人間のようだった。


「彼がこの海都の首相のオンデン首相だ。オンデンザメだよ」


オンデン首相は貫禄ががありすぎてもはや仙人という感じだ。シワシワの茶色い肌に大きな体。そして常にエラが開いたり閉じたりしている。


「君がバイトの子かい?噂で聞いとるよ。どうだい海都はなかなかいい街じゃろう」

「はい。とっても楽しそうな街です」

「そうかそうか。それは良かった。お主らの街を見本に作っとるのじゃが、まだまだ足りんのう」

「首相、耳が早いですね」

「もちろんじゃ。この海都の情報は全てここに集まるからのう」


オンデン首相は話すスピードがとてもゆっくりで、いかにもおじいちゃんだなぁ、と思ってしまった。


「オンデン首相は今年で420歳だ。それでも現役でやっているんだ。立派だよ」

「ロロよ。わしはただ他人(ひと)よりも多くのことを知ってるだけの老いぼれじゃ。じゃが、その知識がほかの者の役に立つのであればいくらでも現役を続ける気じゃ。立派などでは無い」

「奈緒。この人はな、これでもたまに水族館の方にも顔を出してくれるんだ。子供たちからは『おじいちゃんザメ』って言われて大人気なんだよ」


おじいちゃんザメ。確かにぴったりのあだ名だ。


「すまないが、そろそろわしは行くぞ。議会が始まる時間じゃからのう」


おじいちゃんザメ、違った。オンデン首相はゆっくりとした足取りで議会に向かって行った。


「あれだけ寿命が長い魚はここで暮らした時間も長いですよね。ダンゴウオとか、寿命が一年しかない魚はなんか可哀想ですね」

「あ、その点に関しては安心してくれ。私の擬人化魔法には寿命を延ばす効果もある。だいたい人間と同じ、80歳くらいに設定してあるから」

「でもだったらさっきのおじいちゃんはどういうことなんですか?」


寿命を80歳くらいまで伸ばすというのはわかった。しかし、あのオンデン首相みたいな80歳以上生きる魚はどういうことになるのか疑問だった。


「彼らはもともと寿命が長い魚だ。でもそれを短くは出来ないよ。時間に矛盾ができるから。もし短くしたら、彼らが今まで生きてきた時間が無かったことになる。だから伸ばすことはできても短くすることはできないってわけ。わかったかな?」

「……なんとなく」


やはり魔法で自然の理を崩すのはどこか心に引っかかる。寿命が伸びるのはいいことかもしれない。だが、どこか彼らはそのまま生きていた方が幸せだと思ってしまった。


「そろそろ君の質問に答えようか」


ロロは真剣な顔で話し始める。


「ここにかかっている魔法は、魚たちをこの姿に変える『擬人化魔法』。この魔法はとても強力だから。あとこの魔法は魚たちの知識レベルを人間と同じくらいまで上昇させる。これの効果で彼らは社会性を持っている。社会性がなければこの海都を維持はできないからね」

「……気になっていたんですけど、なんで肉食の方までベジタリアンになっているんですか?」

「魚たちは我々と違って、好んで他の魚を食べているわけじゃない。肉食をするというふうに進化したからだ。だから食べる必要がなくなれば食べなくなる。それに、この魔法で社会性が作られた結果、彼らは今まで捕食対象としか見ていなかった者たちを同等の市民としてみるようになった。君は同じ市民を食べたりはしないだろう?」

「はい」


一つ疑問が解けた。だが疑問はまだある。


「じゃあですよ、彼らは魔法の効果を受けることを望んでいるんですか?もし望んでいないのであれば、それは少し可哀想だなって。自然の海の中に住んでいる方がいいんじゃないかって」


水族館とは魚を捕まえてきて展示するところだ。奈緒は少し可哀想とおもっている。しかし水族館には絶滅危惧種を保護し、増やして自然界に返すという働きもある。そこに関しては奈緒は納得していた。それに身近で魚を見れるのは水族館しかない。


「たしかに魚達は自然界にいた方がいいかもしれない。それを承知で彼らはここにいてくれてる」

「えっ、それはどういうことですか?」

「私は彼らを捕まえるのではなくスカウトしてきた。彼らにここのこと、魔法のことを全て話した上でここに来たいと言ってくれた希望者だけにここに来てもらっている。無理やり連れてくるような鬼畜なことは私はしないよ」

「そうだったんですか……なんとなくわかった気がします」


心の中のモヤモヤした物はなんとなく晴れたような気がした。


「彼らが今まで住んでいた海に帰りたいと言ったら、私は元の場所に帰すようにしている。彼らにだって権利はある。彼らは展示物じゃない。彼らは私と一緒に水族館を運営してくれる大事な魚達(スタッフ)だからね」


こんな顔をしているのに相手の権利を尊重するような優しい人だった。彼らは同じスタッフ。私も最初からそういうふうにスタッフって思えたらこんな質問は出なかったんだろうな、と奈緒は思った。



「着いたよ。ここが中央管理室だ」


ここは議会堂の最上階。三角屋根の中である。中はいかにも異世界という感じだった。

壁一面に本棚があり、真ん中には大きな祭壇のようなものがある。


「あの大きな紫色の石がわかるだろう。あれが魔法石だ」


祭壇の上には宙には浮かびながらゆっくりと回る紫色の巨石。そしてその外側を回る見たことのない文字の書かれた紙の帯。


「魔法石の周りを回っている紙は魔法文字配列(マジックグラフ)。あの紙に魔法を書き込んで使うんだ。書き込んだ魔法は魔法石によって発動され、指定した範囲にかかるようになっている。ちなみにこの水族館にかかっている魔法のほとんどをあれが担当しているんだ」


マホウセキ?マジックグラフ?奈緒にはさっぱりわからなかった。あの大きな石がとっても重要ってことしか頭に入ってこない。


「君、あんまりよくわかってないって顔だね。簡単に説明するとあの魔法石がコンピュータで、魔法文字配列(マジックグラフ)がプログラムだ。百聞は一見にしかず。実演してみよう」


ロロは持っていた紙の帯になにやら文字列を書き出す。文字の感じからしておそらく巨石の周りを回っているマジックなんちゃらと同じものだろう。ロロは書き終わると紙を巨石の方に放り投げる。放り投げられた紙は文字が光り、巨石の周りを回り出した。


ボンッ!!


奈緒は煙に包まれる。煙がはれると奈緒は頭が重かった。ロロに鏡を見せられる。


「うわっ!なんじゃこりゃ!!」


奈緒の頭が魚になっていた。しかも奈緒が口を動かそうと思うと魚の口も動く。おそらくこのまま外に出て行っても他の魚達に紛れこめるだろう。

その光景を笑いながら見ていたロロは先程放り投げた紙を巨石から引き剥がす。


ボンッ!!


また奈緒の体は煙に包まれ、元の姿に戻っていた。

やっと巨石の能力がわかった奈緒だった。



二人はバックヤード(海都)を出て水族館の事務所まで戻って来ていた。残りの区長はのちのち挨拶に行こうとのことだった。


「そろそろ12時だな。お昼にしよう」


奈緒はこの時間を待っていた。先ほどからお腹の中の虫がなるどころじゃない。悲鳴をあげていたのだ。やはり朝、パン一枚じゃなく二枚食べてくればよかったと後悔したほどだ。

カバンのなかから弁当箱を取り出すとフタを開ける。中はいちごジャムを挟んだサンドウィッチだった。

またパンか、と言ってしまいそうになったがそれは抑える。今はどんなものでも大歓迎だ。

ふと前を見るとロロも弁当箱を出していた。魚の形になっている可愛い弁当箱。


「それ可愛いですね」

「これかい?これは海都のお弁当屋さんで作ってもらったんだ。あそこは弁当箱を持参すれば中にオカズとご飯を入れてくれるからね。料理ができない私からしたら大助かりだよ」


魚の弁当箱の中には色んな野菜のお惣菜が入っていた。その中に奈緒は異物を見つける。


「館長や魚達は野菜しか食べないのになんで唐揚げ入っているんですか?」

「これは大豆ミートさ。魚達は肉を食べないけど、やっぱり肉食のスタッフはタンパク質を多く取らないといけないっぽくてさ。だから大豆や豆類で大豆ミートを作ってるんだ。一ついるかい?」

「あっ、ありがとうございます」


ロロからもらった大豆ミートの唐揚げを口に放り込む。味や食感は鶏肉そのものだ。美味しい。

ロロが言い忘れたことを付け加える。


「君もここにお弁当持ってくるときは肉や魚が入っていないものにしてくれ。彼らの前で生き物を食べている姿を見せるのは気分が悪い。もし難しいようだったら君の分もお弁当もらってこようか?」

「あ〜、じゃあお願いします」


お昼を食べながらロロはバイト内容を確認する。奈緒のバイト内容とは水族館の案内スタッフだった。どうやらスタッフが足りてないらしい。


「でもあんなに人間のスタッフがいるのに私が案内ですか?私よりも詳しい方はいらっしゃると思いますけど」

「残念。彼らは人間じゃない。彼らは海都にいたスタッフと同じ魚さ」

「でも、人間と全く同じ姿をしてましたけど」

「個人差があるんだが、『擬人化魔法』はタコ達やイカ達に効きやすいみたいでさ。特に『ミミックオクトパス』って種類は効きやすいからね。彼らの擬態と私の魔法を合わせて使うと人間と同じ姿になるんだ」


昨日電話に出たのも、今日入場ゲートに立っていたのもその種類とのことだった。ほとんど人間と見間違えるほどだ。


「そのようなことからこの仕事は君にしかできないんだ。たのんだよ」

「………分かりました」

「そのほかにも色々やってもらうから」

「マジっすか」


こうしてバイト初日の午前中は終わった。午前中は色んなところを回って大変だったが午後はもっと大変になるだろう。戦士は戦いに備えてランチ休憩を取るのだった。

色々と説明口調になってしまいました。

オンデンザメは500歳くらいまで生きると言われています。初めてそのことを知ったときはびっくりしましたね。

次回もぜひ、当水族館にお越しくださいませ。

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