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運命の人はあなたですか?  作者: ゆめ猫
9/14

クリスマス

 池の畔に石田君を呼び出した。祐ちゃんに言われたように、ちゃんと好きな人がいる事を打ち明けるつもりだった。

 石田君はもう来ていてベンチに座っていた。


「こんなに寒い所に呼び出してごめんなさい」


 石田君は慌てて立った。


「いえ、大丈夫ですよ。僕の好きな場所にしてくれたんですよね」


 そう言うとまた座った。私も横に座った。なんて言おう……、こういうの苦手。モジモジしていると石田君が先に話してくれた。


「柑菜月さんから呼んでくれたの初めてですね、とても嬉しかったです」

「あ、いえ……でも」

「分かってますよ。僕にとっては楽しくない話がある事」

「え」

「好きな人が出来たんですか?それとももう恋人になったんですか?」

「いえ、あのね、好きな人がいるんです。ごめんなさい」

「謝らないで下さい。涼風君ですか?」

「はい……」

「そうですか。恋は実らなくても素敵なものです。それを教えてくれたのは柑菜月さんです」


 返す言葉がなかった。はっきりしない私のせいで石田君に辛い思いをさせてしまった。


「まだちゃんと言ってなかったので、言わせて下さい。柑菜月さんの事が本当に本当に好きでした。今頃って感じですよね」

「いえ、こんな私の事想ってくれてありがとうございます」

「まだ自信持てませんか?あなたは素敵な方なんですよ」

「私なんか……」

「次は柑菜月さんの番です。自信を持って涼風君に打ち明けて下さい」

「ありがとうございます。本当にありがとうございます」

「ここに僕はもう少しいます。柑菜月さん、先に帰ってもらえますか……」


 そう言われ後ろ髪を引かれる思いで席を立ち、石田君を残し歩き出した。

 振り返ると石田君の肩が震えていた。


「石田君……」


 私は深々とお辞儀をし、その場を後にした。石田君の悲しみが伝わった。次は私が振られる番かも知れない。



    ♡    ♡    ♡



 今日は楽しいクリスマス。なのにクリスマスケーキを店頭で売らなくては行けい。昨日からシフトの時間が早くなった。

 朝10時から夜8時まで、店頭に立ってクリスマスケーキを売る。

 体が芯まで冷え足が痛くなった頃、粉雪が舞い始めた。クリスマスに雪はとてもロマンチックだろうな。でも私にとってはただ寒いだけだった。


「お疲れさま!もういいよ、よく売れたね」


 店長は嬉しそうにそう言った。


「お先に失礼します!」


 着替えて店を出ると、石田君が雪の中に立っていた。


「石田君……、どうしたの?」

「お疲れさま。今日はクリスマスだから」


 そう言って紙袋を渡された。


「プレゼント」

「え、でも私……、こんなの貰えない」


 返そうとすると石田君は大きく首を横に振り、受け取らなかった。


「実は柑菜月さんから話しを聞く前に、用意してたんです。僕、初めて女の子にプレゼントを買ったんです。君を想いながら選ぶのは、とても楽しかったです」

「石田君……」

「最初のクリスマスプレゼントだから、受け取って欲しいんです。勝手なのは分かってます。でもこれも良い思い出になります」

「……うん、分かった。石田君ありがとうございます。大切にしますね」

「こちらこそありがとう。じゃ!」


 そう言うと走って暗闇に消えた。空を見上げると黒い空に白い雪が舞う。とても綺麗だった。



    ♡    ♡    ♡



 マンションに戻ると、食卓に並んだご馳走に驚いた。


「すごーい、どうしたの?!」

「クリスマスだからね、着替えておいでよ」


 曜はそう言いながらスープを温めてくれていた。

 私とクリスマスを過ごそうと思ってくれた事に、びっくりしたが凄く嬉しかった。


 着替えて食卓につくと、曜はシャンパンを開け注いでくれた。


「アルコールじゃないからね。ジュースだよ」


 二人で乾杯をした。まるで恋人同士のように思えた。


「メリークリスマス!」


「カボチャのスープ、ローストチキン、マルゲリータ、ポテトサラダだよ」

「もしかして全部手作りなの?」

「今日は一日家にいたからね」


 今日の曜はとても嬉しそうだった。

 沢山のご馳走を前にしても、残念ながら食欲がなかった。

 こんなに幸せな時間を作ってくれているのに、身体はだるく話も浮かばなかった。


「ん?華美どうしたの?」

「え、ううん、なんでもないよ」

「顔が赤いな」


 そういうと曜は席を立ち、私のおでこに手をあてた。


「……熱い」


 イスに座っていた私を軽々と抱き上げた。


「え、いいよ、大丈夫だよ」


 その言葉を無視し、曜は大切な宝物のように私を部屋のベッドまで運んでくれた。


 「暖かいパジャマに着替えてて、体温計持ってくるよ」


 熱は39℃近くまであった。曜は急いでドラッグストアに行ってしまった。

 雪の中で立ってたからかな……、せっかくのクリスマスなのに。そう思いながらいつしか寝てしまった。


 目を覚ますとおでこに冷却シートが貼られていて、曜が床に座りベッドに(もた)れ眠っていた。


「ん?起きたか……」


 曜は目を擦りながら私の顔を見た。


「スープかお粥どっちがいい?何か胃に入れてから薬を飲もう」


 言われるがままスープを飲み、薬を飲んでまた深い眠りについた。



 目覚めるとまた曜はベッドに凭れ寝ていた。素敵な寝顔。

 私は横になりながら顔を近ずけ、その寝顔を脳裏に焼き付けるように、いつまでもいつまでも見ていた。



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