明るい兆し
日曜日、姫那ちゃんと祐ちゃんと三人でファミレスにやって来た。
「こんなにゆっくりと姫那ちゃんといるの久しぶりだね」
「ごめんねぇ〜、なんかいつもバタバタしちゃって」
「ううん、そんなことはいいの!で、どうなの?上手くいってる?」
「うん、いってるよ。クリスマスプレゼントなんて手編みのセーターだよ」
「いいな〜!羨ましいよ、ね!華ちゃん!」
「うん、凄く羨ましい」
姫那ちゃんはポニーテールをやめ、髪を下ろしていた。とても綺麗に見えたし輝いていた。
「でもさ、華ちゃんはまだいいよ。想ってくれてる人がいるんだもん!」
「え、そうなの?!誰?」
「F組の石田君!F組だよぉ!」
「そうなんだ〜、華ちゃんすごいじゃない!」
「え、うん」
そんな返答しか出来なかった。これが本当に好きな人なら、嬉しいんだろうな。
「あまり乗り気じゃないんだ?」
姫那ちゃんが心配そうに尋ねた。
「もしかして華ちゃん、他に好きな人いるんでしょ?だってなんか綺麗になったもん。恋してる証拠だよ」
「え、そうなの!?」
私も姫那ちゃんに言われて驚いたけど、もっと驚いたのは石田君を応援している祐ちゃんだった。
「うん、たぶん……?」
「誰?」
祐ちゃんも姫那ちゃんも、身を乗り出して聞いてきた。凄く困ったけど、二人に悩んでいる自分を助けてもらいたかった。
「……涼風君なの」
二人は顔を見合わせて驚いた。
「えらく高いとこ、狙ってるんだね!」
「てか……、もっと早く言ってよぉ!あたし石田君推しちゃったじゃない。ごめんねぇ〜華ちゃん」
「ううん、いいの。だって私が黙ってたのがいけないんだもん」
「てか、あまり涼風君の事知らないでしょ?本当に本当に好きなの?」
姫那ちゃんが心配してくれるのは解る。だって一緒に住んでる事知らないんだから。本当の事は言えないし、どう言えば分かってもらえるか困った。
「私……、少し話したりした事あるの。涼風君も私の事知ってる。こんなに人を好きになったのは初めて。苦しくて本当に辛い……」
「そうだったんだ……」
祐ちゃんは私の表情を見て、自分の事のように落ち込んだ。
「そんなの簡単よ!告白すればいいんじゃない!」
姫那ちゃんが笑顔で言った。
「姫那ちゃんは上手くいったからそう言うけど、それが怖くて辛いんだよね?」
祐ちゃんは私の背中を擦りながらそう言った。
「私の事なんて何とも思ってないと思うよ、涼風君」
「振られたら辛いよ、けど自分の気持ちに正直になったら今の辛さは無くなる!どっちみち辛いなら、ちゃんと告白した方がいいよ。後悔するよ?」
「その勇気が出ないんだよね、あたしは華ちゃんの気持ち解るよ。今まで石田君の事ばかり言って本当にごめんなさい。あたし応援するからね!」
二人にいろいろ言ってもらえて嬉しかった。一人で空回りしていた自分の気持ちが少し楽になった気がした。
でも上手くいかなかったら同居は難しい。そのことを二人に言えないのが、とてももどかしかった。
♡ ♡ ♡
お昼休み祐ちゃんと食堂にやって来た。
「よぉー!」
見ると曜といつも一緒にいる前田君だった。
「おっちゅ〜」
祐ちゃんが気さくに挨拶した。一体どういう事?
「ここ空いてるじゃん!」
「うん、ここにしようか。華ちゃんおいでぇ」
二人は仲良く席についていた。私も遅れて祐ちゃんの隣に座った。
「こちら前田元君。そして柑菜月華美さん」
祐ちゃんが紹介してくれた。
「よろしくっ!」
「よろしくお願いします」
挨拶が終わると二人は嬉しそうに、お弁当を広げた。そこに石田君がやって来た。
「こんにちは、あ、前田君」
「よぉー!今日から一緒に食べるからよろしくなっ」
「ねぇ、どういう事?」
祐ちゃんに小声で聞いた。
「あのね、あたし一人でよくボルダリング行ってんの!そしたらそこで元と会うようになって」
「そうす!コイツマジ上手いから楽しくてな!」
「ウンウン、意気投合しちゃってさ、友達になったんだよね!んで、お昼休みも誘ったってわけ!」
「んだんだ!」
「無断でごめんねぇ〜、でも多い方が楽しいしね!」
そこに曜が通りかかった。
「曜!ここで一緒に食べようぜ!」
何故か前田君は曜を誘った。あ、そういう事かあ。祐ちゃんは私を応援するって言ってたから、前田君にも打ち明けたんだ。
曜は止まって一瞬私を見た。
「いや、ごめん。今日はあっちで食べるよ」
そう言って曜は離れた席に歩いて行った。
「珍しいな、曜が断るなんてな」
前田君は首を傾げながら言った。私がいるからかな。やっぱり学校では一緒にいたくないのかな。軽く落ち込んだ。
「まぁ、また誘ってみよう!」
祐ちゃんが私を気遣って、明るくそう言った。
「そだな!」
前田君も明るかった。祐ちゃんと前田君は以前から知っているかのように、凄く意気があっていてお似合いに思えた。
石田君は前田君の到来に圧倒されているようで、終始静かだった。
♡ ♡ ♡
「今日はごめんね」
バイトから帰ると、曜がいきなりそう言った。
「ん?何のこと?」
「お昼一緒に食べれなくて」
「あ、うん。そんなのいいよ」
忘れてたのに思い出して、気持ちが落ち込んだ。
「先に食べたからこれ温めて食べて」
「ハンバーグだ、美味しそう。お味噌汁もあるんだ」
曜が鍋に火をつけながら言った。
「まさか一緒にお弁当食べる事になるとは思わなかった」
「え?うん」
「同じおかずだから焦ったよ」
そう言って笑った。
「え、それで断ったの」
「そうだよ」
「私と一緒なのが嫌なんだと思った……」
「なんでだよ、華美は悪い方にとるのが得意だな」
「だって……」
「嫌な理由なんかないだろ?明日から弁当のおかず変えるよ」
「え、じゃあ、一緒に食べれるって事?」
「そうだね、これお味噌汁置いとくよ。明日の準備するから」
そう言って曜は部屋に入って行った。
一緒に食べるの嫌じゃなかったんだ。これから毎日一緒に食べれるんだ。私は嬉しくなってニヤニヤしながらご飯を食べていた。




