曜 ごめんなさい
朝早く目覚めた。いつものように洗濯をする。曜のシャツ……曜の匂い、って私は変態か!曜のブリーフ……キャッ!今まで平気で洗ってたのに、これってまずいんじゃない?
「おはよう!いつもありがとうね」
「い、いえ……、大丈夫」
曜の目を見れない。俯いたまま横をすり抜けた。どうしちゃったんだろ、私は。
♡ ♡ ♡
お昼休み祐ちゃんと食堂にやって来た。
「なんか今日ボッーとしてない?」
「え、そんなことないよ」
「あっ、涼風君だ!」
「え、どこ?」
「ほら、あそこ!隣にいるのが佐々原さん」
「祐ちゃんって女子にも詳しいの?」
「だって佐々原さんは超有名な人なんだよ。ずっと涼風君が来るまでトップだったんだから!美人で男なんてって感じだったんだけどねぇ〜やっぱ自分より上の人には惹かれるのかね〜」
「ぇ?涼風君に惹かれてるって事?」
「だっていつも一緒にいるよ?あ、その隣が前田君、3番手。頭がいい人で固まってるね」
「……そうなんだ」
私は頭悪いし入れないな。曜もやっぱり頭がいい人が好きなんだろうな。佐々原さんととてもお似合いに見えた。
「石田君とはどうなってるの?」
「ん?なんも」
「進展なし?LINEとか交換しなよ」
「だってまだ石田君の事よく知らないんだもん」
「だ〜か〜ら〜、もっと知るためにLINE交換したり遊びに行ったりするんだよ!」
「こんにちは」
噂をすれば……、石田君がやって来た。
「石田君ここ座って!あたし用事あるから!じゃあ!」
また祐ちゃんは気をきかせたんだ。石田君はお礼を言って座った。
「バイトは毎日あるんですか?」
「月曜日が休み」
「今日ですね!予定はありますか?」
「いえ、特には」
「じゃ、この間言ってた池行きませんか?それとも他の所でもいいですよ」
どうしよう……、祐ちゃんは押してくれるけど、曜が気になる。あ、私曜に石田君の事尋ねたんだった。ぼんやり曜を見てたら目があった。ヤバい。
「柑菜月さん?」
「あ、ごめんなさい。えっと……、池行きます」
何となく答えちゃった。
「本当にいいんですか。ありがとう。じゃ帰りに校門で待ってます」
祐ちゃんに事情を説明したら、凄く喜んでくれた。気が乗らないけど、帰ってドキドキしながら曜を待つのも嫌だった。
♡ ♡ ♡
「じゃ、行きましょう」
10分位歩いて池に入る道があった。凄く大きな池で周りは遊歩道になっていて、ウォーキングしている人や犬の散歩をしている人がたくさんいた。
「ここから見る池が一番好きなんです」
遊歩道から中に入った所に桜の木があり、ベンチもあった。石田君が座ったので隣に座った。
「無理なお誘いではありませんでしたか?」
「いえ、凄く綺麗な所で癒される」
「ここからの夕日は格別ですよ」
「石田君、なぜ私を誘ってくれたの?」
「え、それは……」
珍しく石田君が困っている。私やっぱりおバカな質問しちゃったかな。
「僕、転校生が涼風君だけじゃないって知って、柑菜月さんを見に行った事があるんです。お友達が出来ていて良かったな、なんて思ったんですが……」
石田君はそのまま下を向いてしまった。
「ごめんなさい、なんか私変な質問してしまって……実は内向的でこういうの慣れてなくて」
「いえ、それは僕の方です。謝らないでください。実際女の子に話しかけたり、お誘いしたりするのは初めてなんです」
「そうなんですか?」
「はい、かなり勇気がいりました。貴方を見てると凄く心が穏やかになるんです。それに笑顔が素敵です。なので是非話してみたくなってしまって」
「私……、外見とは違います。小心者で消極的でなんも取り柄無くて、それに頭悪いし本当にいいとこ無し」
「そんな風に言わないで下さい。貴方は素敵な方です。優しさをいっぱい持ってます。ただ、自信がないだけだと思います。あ……、偉そうな事言ってすいません」
「いえ、大丈夫。自信かぁ〜本当にないですね」
「自信持って下さい。僕も人の事言えない位消極的で、クラスには友達もいないんです。でも貴方が僕に勇気をくれた」
「勇気……」
「これから少しずつでいいですから、お互いを知っていきませんか?」
「はい、私で良ければ」
石田君を見ていると自分を見ている気がした。でも勇気を出して話しかけてくれたんだ。話していて楽しいって感じではないけど、どこか安心する。それって大切な事なんじゃないかな。
無理して良く見せる必要もないし、ありのままでいられる心地良さ。良いお友達になれるといいな。
♡ ♡ ♡
「今日の昼休み、石田君といたね」
夕飯時に曜に言われた。私はまだ曜を直視出来ないでいた。
俯いたまま「うん」と答えた。
「クラスの人に聞いたけど友達もいないみたいで、よくわからないけど悪い人ではなさそうだよ」
「うん、そうだね。私もそう思った」
「華美?何かあった?僕を避けてる?」
「えっ!」
曜の問いにびっくりして顔をあげた。何故か照れて見れないだけなのに、私悪い事してる。
「ごめんなさい、そんなんじゃない」
「じゃなに?」
「なにって……」
いつもは突っ込んだ質問なんかしないのに。私はまた俯いてしまった。
「好きな人でも出来たかな?」
「え……」
「思うんだけど好きな人が出来たら、やはり同居はまずいと思うんだ。もし付き合い始めたら相手にも悪いし、家にも呼べないしね」
「曜の事?」
「ん?」
「家に呼びたいのは曜でしょ」
「僕の事じゃないよ、華美の事心配して――」
「だって曜は佐々原さんと仲いいじゃない!」
初めて曜に声を荒げてしまった。私何言ってるんだろ。そんなこと言うつもりなんて無かったのに、別居に動揺しちゃって……。違う、きっとこれはヤキモチだ。私って嫌な女。
「今朝から華美おかしいぞ」
そう言って曜は席を立ち、部屋に入ってしまった。まだ食べてないのに、怒らせちゃったんだ。
洗い物を片付けて部屋に入った。隣に曜がいるのに、なんか遠い存在に思えた。曜は私の事を心配してくれたのに……。やっぱり私ってダメな子。
涙が流れて、そのままベッドに倒れ込んだ。曜に見放されたらもう私は無理だ。本当に情けない。石田君はこんな私のどこがいいんだろう。自分で自分が嫌い。
そのまま寝てしまった。物音で目が覚めた。
「曜……」
リビングに行くと曜が水を飲んでた。
「起こしたか?ごめん」
いつもの優しい曜がいた。
「まだ起きてたの?」
「あぁ、明日のテスト作ってた」
「テスト?」
「そう、子どもにやらせるテスト。家庭教師のバイトね」
家庭教師してたんだ。そう言えばバイトの事何も知らなかった。もしかして、私は曜の事何も知らないのかも。
「曜、さっきはごめんなさい」
「大丈夫だよ、気にしてないから」
それはそれで寂しい気がする。私ってわがままだな。
「曜、もっと曜の事が知りたい」
「毎日いれば解るよ、ゆっくりいこ」
「一緒にどこかに出かけたいし、いろんな話がしたいし、学校でも……」
私また何言ってるの?!曜を独占したいって事じゃない。やっぱり好きなんだよ、きっとそうだよ。
「華美?」
曜は優しく頭を撫ぜてくれた。どうしようもない私に優しく接してくれる。めんどくさい私の相手をしてくれる。どこまでも優しいんだね。
顔を上げると曜のまた悲しげな顔があった。なぜいつも悲しいの?学校ではそんな顔してないじゃない。きっと私が悪いんだね。
「ごめんなさい、忘れて……」




