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運命の人はあなたですか?  作者: ゆめ猫
11/14

別居

「今日からバイトなの?」

「そう、受験生だからな。可哀想に正月も勉強だよ」


 曜はそう言いながらバイトの準備をしていた。


「華美もだろう?コンビニは休みがないからな」

「うん、でも夕方からだからね」

「じゃ、行ってきます。夜は温かいもの作るよ」

「ありがとう。行ってらっしゃい!」


 まるで新婚夫婦のようで、本当に楽しい。洗濯を干し掃除が終わった頃、インターフォンがなった。

 セールスかな。ドアを開けると驚いた事に佐々原さんが立っていた。


「やっぱりね〜、おかしいと思ったら当たったわ!ここは曜の家よね、なぜあなたがいるのかしら?」

「そ、それは……」


 不意の事で返事ができなかった。


「同棲よね〜」

「違います!訳あって一緒に暮らしてるだけです」

「同じ事じゃない。高校生が二人で暮らしている。学校に知れたらどうなるかしらね〜」

「学校に……?」

「あら、私が通報するのよ。まぁ、退学になるわよね」


 退学?!そんな事になったら、曜の夢が消えてしまう……。


「私もそんな事はしたくないわ。そこまで悪くないつもりよ」

「お願いします!学校には言わないで下さい!」

「そうね、いいわ!その代わりすぐに別居しなさい!」

「え……」

「当たり前じゃない。悪い事をそのままにしておけないからね〜。引越ししたら石田君が確認するから連絡しなさいよね。ねぇ、石田君?」


 ドアの影で見えなかったが、石田君もいた。なぜ……?!石田君は申し訳なさそうに俯いたままだった。


「別居したら学校には通報しませんか?」

「この事は曜には内緒ね。あ〜、それと……」


 佐々原さんはそう言うと隣にいる石田君を見た。


「お昼ご飯は石田君と二人で食べてねぇ」

「それは……」


 石田君が躊躇した。


「何よ?良い考えじゃない!今思いついたんだけどね。じゃ、そういう事で!しっかり約束を守ってくれたら、私も約束を守るわ」


 そう言うと石田君と一緒に帰って行った。途中石田君は振り返ったが、何も言わずまた俯いて歩き出した。



    ♡    ♡    ♡



 この楽しかった曜との生活が終わってしまう。悩んでる暇はなかった。冬休み中に引越しをしなければ、曜が退学になってしまう。


 不動産屋に行き手頃なアパートを見つけた。今のマンションからそう遠くなく、コンビニのバイトも続けられそうだ。


 そのままバイトに行ったが、曜に何と説明しようかと、その事で頭がいっぱいだった。




「ただいま〜」

「おかえり。今日も寒かったなぁ。風呂先に入って暖まっておいでよ。今日は鍋焼きうどんだぞ」


 曜はいつもと変わりなく優しく明るかった。そうよね、私が暗かったら怪しまれちゃう。それに最後の最後まで曜と楽しく過ごしたい。


 お風呂に入り食卓についた。


「すごーい!エビまで入ってる!」

「まだ正月だから贅沢した。いただきます」

「いただきま〜す」


 曜の顔を見た。二人での夕飯はこれが最後かな。しっかり見ておこう。そうだ、学校でもお昼ご飯一緒に食べれないんだった。


「何見てんの」


 曜は優しく笑った。笑顔ももう見れないかも知れない。


「ううん、美味しそうに食べるなと思って」


 そう言って私が笑うと曜もまた笑った。幸せな時間、短かったな……。



 洗い物が終わってから曜に話をした。


「あのね、曜」

「ん?」

「私、曜と別に暮らそうと思うの」

「どうした?何かあったのか?」


 曜は驚いた様子もなく、心配そうな顔をした。


「何かって……、ほら、曜も以前言ってたでしょ?好きな人が出来たら同居はまずいって!それ、そう、それよ!」

「そうか……、じゃあ、新しい所探さないと」

「わ、私はもう見つけて来ちゃった!」

「え、もう?いつ引越すつもり?」

「明日かな……」

「なんでそんな急に?」

「そ、そう、急にね、何か好きになってしまって」


 私は一生懸命つくろって、笑顔を絶やさなかった。曜以外の人を好きになんてなれないよ。他に好きな人がいるなんて言いたくないよ。本当は泣きたかった。


「分かった。僕もここの家賃は高いから探すよ。先に引越していいよ。後華美が必要なものは全部持って行っていいからね」

「うん、ありがとう。明日はバイト?」

「明日は朝からだ」

「何時に出るの?」

「9時位」

「分かった。それから荷造りするね。部屋の荷物片付けるから……、これで」

「うん」


 私が部屋のドアを閉めようとすると、声をかけられた。


「華美、無理するなよ。困った事があったらいつでも言って来いよ」

「……うん」


 涙が溢れて慌ててドアを閉めた。ベッドに顔を押し当て、声をひそめていつまでもいつまでも泣いた。



    ♡    ♡    ♡



「おはよう、そろそろ行く時間だね」

「今日は起きるの遅かったね」

「う、うん。昨日遅くなったから」

「華美……目が腫れてる」

「え、うん。なんでかな……、疲れたのかな」

「そうか……、じゃ、行く時間だ」


 曜はそう行って玄関に向かった。私も後を付いて行った。最後のお見送り。


「曜、今まで本当にありがとう。楽しかったよ、凄く」

「こちらこそありがとう、僕も楽しかった。じゃ、行ってきます」

「うん。行ってらっしゃい!」


 曜は最後まで笑顔だった。これで良かった。これで良かった……、自分に言い聞かせた。





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