やはり世界はシビアだった
二度目に瞼を開けると、目に入って来たのは木製の板だった。つまり、木造の天井だ。
「目が醒めたようだね」
「……こ、こは」
ムクリと上半身を起こして声のする方を見ると、先程の美少女ーーの皮を被った馬鹿力ゴリラ女が腕を組んで俺を見下ろしていた。
「パヴェストの街の宿屋だよ。一番近かったから、勝手ながら運ばせてもらった」
「ぱべすと……?何だそれ?」
「……は!?」
そう言うと、ゴリラは驚愕に双眸を見開いた。
「パヴェストの名前知らない!?キミ本気で言ってる!?よっぽど打ち所悪かった!?」
「えええ!?だって知らないもんは知らないし!!つか今の状況を誰か説明してくれ」
「……」
慌ててそう返答すると、今度は神妙な面持ちで黙り込んでしまった。しばしの沈黙が俺たちの間に流れる。
何なんだよさっきから……。ああダメだ、また頭パンクしそう。
時間にして数秒ほど、ややあってゴリラが、小振りな唇を小さく開いた。
「……の予言通り……?」
「え?」
「なんでもない」
よく聞こえずに聞き返すと、そっけない言葉を返されて。
おもむろにゴリラは、自身の胸に手をあてた。
「私、ベルジュール・ネルファ。ルタンの国のネルファ家の次女。と言っても分からないでしょうけど……。キミ、名前は?」
「……大原悠太」
「っ!」
ボソッと名乗ると、ゴリラーーベルジュールが、はっと息を飲む気配がした。