第三十二話 虫だけど、漁業します?
どうも皆さん、台風で雨がひどいですね。
皆さんもお気を付けください。
『「サンドギル」 砂漠地方に生息する大きな群れを形成する水妖族 水妖族だが砂中を泳ぎ移動するために視覚が退化し聴覚と嗅覚が発達している 雑食性であり、大群で砂中の小さな虫やサボテンなどを食らいつつ回遊を行う 繁殖期になると数個の群れが集まり巨大な魚群を形成する』
ひゃっほー!
そんな気分で乗り込んでいるのは帆船だ。
しかも水上ではなく砂の上を走る船だ。
形状は小型のヨットに似たような形でサンドギルの群れをドラを鳴らして追い込んでいる最中だ。
豊漁祭のサンドギルの漁は追い込み漁だ。
小型のヨットで魚群を追い回して大型の砂上船二台の間に張っている網へと追い込む。
ほとんど海での追い込み漁と似たような感じで水が砂に変わっただけだ。
だがここの砂は見た目は俺たちが歩いてきた砂漠の砂と見分けがつかないが、落ちたら沈んでいく。
落っこちたら砂をかき続けなければおぼれ死んでしまう底なしの砂原だ。
水と違って砂で見えないため視界も悪い。
だから視覚よりも聴覚と嗅覚が発達したサンドギルは大きな音に驚いて逃げ惑うというわけだ。
このヨットも風で動いているというわけではなく空気中から薄い魔力をかき集めるための帆を張りその魔力を動力として船が前に進んでいるらしい。
追い込みはうまくいっているように思えたが、魚群が集まるということは俺たちと同様によってくる輩がいるということだ。
海ではイワシの魚群の周りをサメやカツオ、マグロのような肉食の魚が寄ってくる。
ここでもそれは同じようだ。
俺たちが追い込んでいる魚群めがけて数体の大きな魚影が襲い掛かった。
『「トルペドノドス」 砂漠地方に生息する中型の水妖族 水妖族だが砂中を泳ぎ移動するために視覚よりも聴覚と嗅覚が発達している 肉食性でサンドギルの群れを見つけては襲い掛かる 砂中で体内のたんぱく質を燃焼させて爆発的に速度を上げることが出来る』
数体のトルペドノスが魚群に突っ込んでは、離脱を繰り返していく。
別にこいつらが魚群に突っ込んだところで漁獲量に大差はない。
問題は、、、、
一匹のトルペドノスが砂中から宙に飛び上がった。
そしてそのまま砂の中から出てきた巨大な影に飲み込まれた。
砂の中から出てきたのは恐竜図鑑で見たことがあるような姿のモンスターだった。
『「サンドラプノドン 砂漠地方に生息する大型の竜族 砂中を泳ぎ移動するために四肢がひれ状に変化し、平たい尾を持ち強靭な尾の筋肉によって急激な加速を可能にしている 普段は骨が折りたたまれて収納されている首を長くのばすことができる のびる首を筋力で勢い良く射出し獲物を捕食する』
鑑定の結果そのままに、砂の中から勢いよくのびた首が宙に逃げたトルペドノスを丸のみにするのを目の前で見た。
今回の護衛依頼の理由がこいつだ。
こいつは雑食で、サボテンでも死肉でも喜んで食べる食い意地の張ったモンスターらしく、船体にかじりついてきて被害が出るらしい。
そうこう考えていると、首をこちらに伸ばしてきた。
たしかに船体の方がデカいからこっちの方が食いがいがあるってか?
まったく単純な考えのやつだな。
俺は勢いよくのびてきた首を、吸収していた魔道具「雷神の怒り」を取り出して思いっきり打ち付けた。
発動条件の魔力を流すことによりその衝撃を雷撃へと変換する。
それが魔道具雷神の怒りに込められたスキルだ。
もう一つの炎神の鉄槌は、砂漠の生物が暑さというか熱に強そうなイメージだったのでやめておいただけだ。
勝手なイメージだけどな。
目のくらむような雷撃はサンドラプノドンの頭蓋に雷が落ちた衝撃と電流を流し込むと体から煙を上げさせた。
からだの内部も上手に焼けましたよっと。
俺はすかさず無限吸収を発動して、サンドラプノドンの体が沈む前に回収することに成功した。
この後にもそんな攻防が三度あり、サンドギルの大量確保に成功した。
たまに混じって逃げ遅れたトルペドノスもいた。
因みに今回ルクレは体が重すぎて大型船にのれなかったので、集合テントにお留守番だ。
見送るときの悲哀に満ちた顔が印象的だった。
ドラゴンまで進化すると表情筋が発達でもするのかと思うほど悲哀に満ちた顔だった。
まぁそれは置いておいて。
今回の漁に連れて行ったメンバーは、大型船の方にゴブリン達が投擲用の大型銛を備えて乗り込み、小型ヨットの方に俺とカヨ、ブルスラが漁師ゴブリンと一緒に乗り込んでいた。
サンドギルを追い込んでは網で捕まえるをその後二度繰り返し、漁は完了した。
サンドラプノドンは最初の追い込みのときに三体を倒した後は現れなかった。
聞くに、サンドラプノドンは縄張り意識が高く今回の漁を行った場所ではその三匹がなわばりを形成していたようだ。
いたとしても警戒して出てこなかったのかもしれないな。
だが食い意地が張ったやつらのことだから、それはなさそうだけどな。
船団は海で言う海岸部分にあたるテントまでたどり着くとそこからは、パルパ達が引く馬車へと運搬が切り替わった。
そのままサンドギルはテントへと運ばれると、コック姿のゴブリンたちが待っており、おのおのサンドギルを品定めして各自持って行ってしまった。
その品定めの時間は僅かでテレビで見たことがあるセリのような勢いだった。
とかくもこれで依頼は完了したわけだ。
あとは報酬をもらって豊漁祭を楽しむだけだな。
中央のテントに向かう最中、前の方からものすごい勢いでこっちに走ってくる影が見えた。
最初はルクレが駆け寄ってきてるのかと思ったが、違った。
正体はあの素材屋のおっさんだった。
おっさんはこっちの姿を見つけるとすっごいうれしそうな顔をしてこっちに向かってきた。
正直気味が悪かったがな。
おっさんは背中の袋を開けると俺に何かを渡してきた。
それは、モンスターの素材でできた何か道具のようなものだった。
おっさんが言うにはこの前貰った素材のコレクションの余りを使って作った道具だそう。
使い方はいたって簡単、耐火性と耐熱性に優れるアイランドクラーケン歯をくり抜いてそこにあるモンスターの器官を詰め込み魔道具にしたものらしい。
詰め込んだ器官とはヘルハウンドと呼ばれる幻獣族モンスターのもので口から炎を吐く。
魔道具と言ってもスキルが込められたような代物ではなく、モンスターの特性を用いたもので、魔力を流すと腐ることなく活性する特性を持つヘルハウンドの内臓を加工したとかなんとか、えらく楽しそうに解説していた。
このおっさん、実はすごいやつなのではと思い始めた。
というか素材をどこにしまってたんだろうな明らかに取りだした袋より大きいぞこの道具。
聞くに、そういう魔道具なのだそうだ。
ますますおっさんのイメージが変わっていく。
何者なんだおっさん!?
俺が聞こうとした時にはスキップしながらどこかえといってしまった。
おっさんスキップ速いな。
結局おっさんの正体を知ることなく唖然としていた俺たちは我に返ってもらった道具を回収してアブドラのいるテントへと向かった。
お読みいただきありがとうございました。
次回は、豊漁祭本番とおっさんからもらった道具の説明に入っていこうと思っております。
ではでは、また来週の水曜日夜十時にまたお会いしましょう。




