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愛をつたえる  作者: 川角檀弓
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序章

初めまして。読んで頂ければ嬉しく思います。よろしくお願いします。

全く、こんなことが現実に起こるとは想像もしていなかった。

それまでの僕は神はいるかどうかは分からないけれど、信仰するには個人の自由だと思っていたし否定もしていなかった。

 けれどたった今、僕はそれらの可能性を捨てた。


(この世に神はいない)


 降りしきる雨の中、僕の目の前には二人の人物がいた。

一人は僕と同じ、暗闇に呑まれたような暗い目をした男。

もう一人は奇声にも似た悲鳴を上げながら必死になって弁解をしている男。後者の男の言葉は容赦なく僕の心を抉り、怒りを煽っていた

そんな中、僕を横目に見ながら前者の男がゆっくりと歩み出すのが視界の端に映る。こんな大粒の雨が降りしきる中、足音など聞こえるはずもないのに、僕の耳にはその男が踏みしめる砂利の音が確かに聞こえた。

同じように僕も横目で見ると目が合い『何か』を告げられたような気がした。その『何か』は明確には告げられなかったが、きっと、僕が感じたことで当たっているのだろう。


神は、この時の僕らにはいなかった。


だから、僕らはこの時、互いの心の中で同じ、罪を犯す決断をした。

降りしきる雨は彼の歩を止めることは出来ず、僕の目の前にいる二人の距離はどんどんと詰められて行く。

 一層に激しさを増していく雨。叩きつけられる雨音に言葉が途切れ途切れになり意味を成さなくなり始めた頃。


「罪を犯す人は罪の奴隷なり」


 聞こえたような、聞こえなかったようなその言葉は僕にとって最後の選択の機会だった。

 強まる雨に全身を打たれながら僕は天を仰ぐ。閉じたままの目の、その目尻から温かいものが流れ落ちていくのを感じながら。

 僕は答えを選ぶ決意をした。視線を戻し、二人を見据える。

「ごめんな・・どうしても許すことが出来ないよ・・・お前が生きていることがどうしても許せないんだ。」

 体の奥底から込み上げてくるこの感情。それは『燃え盛る怒りが胸を焼き尽くす』なんて生易しいものではなかった。

抑えきれないままに僕が選び取った選択。

「だから・・・」

 こんな言葉を吐く日が来るなんて想像しただろうか。よりにもよって、この僕が。

 苦しみ抜いた末に待っていた結末は、僕の想像を遥かに凌駕していた。

 この世界に神はいない。

 いたらこんなことにはなっていない。


「死ね」


たった一言をつぶやく唇は、驚くほどに、震えていなかったのを覚えている。

そうして僕はこの日、人殺しになった。


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