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人生終わってからの恋  作者: 平間 日和
7/12


土曜日。

今日は、僕のことをお祓いしに行くらしい。昨日、ハルが「明日、お祓い行くからね!」と散々言っていた。お祓いはまだされたことがないから効果は分からないけれど。


ハルに出会った日。何人も危ない目にあっているっていうのにまたひとりで女が通るのか…僕は呆れていた。またさっきのように女を助けた。そしたら、女は今までの女とは明らかに違う反応を示した。僕のことが見えているようだった。それが嬉しくて、初めて人に認識されて、この人ともっといたい。ただそれだけ思って一目惚れしました!なんて言った。彼女がどこか怯えて走っていくから憑いてはいかなかった。せっかく出会えたのにとブラブラ歩いているとコンビニから彼女が出てくるのが見えて、そのまま家に入った。思わぬ形で彼女の自宅を知った。一瞬ストーカーや住居侵入になるじゃないかといったセーブがかかったが、死んでしまった僕を取り締まる法律なんてないじゃないかと彼女の家に入り込んだ。


それから彼女と過ごす日々が始まった。彼女は僕を無視したり厄介そうにしている。だけど、僕は彼女と過ごす時間が楽しくて抜け出せずにいる。僕は彼女を本当に好きになってしまった。彼女はいつだって結局は優しくて、卵焼きを分けてくれる。僕の葬式以来、9年ぶりにきいた自分の名前をいつも呼んでくれる。嫌いな名前も好きになりそう。ハルって呼べることも嬉しい。ここから抜け出すにはお祓いされるのがいいのかもななんてぼんやりと考えてみる。だから、お祓いが怖いなんてことは無い。


ブーブーと携帯が鳴る。ハルの携帯。

「ハルー!携帯鳴ってるー!」

そう言うと、ハルは走ってこちらにやって来て携帯を手に取った。

「もしもし?」

「ねぇ、陽子。今日空いてる?急で悪いんだけど。」

「空いてるよ!」

どうやら彼氏からの電話のようだ。お祓いの予定はどうなったんだか。

「じゃあ、2時に迎えに行く。」

「ありがとう。待ってる。」

彼氏とやらと話している時のハルはとても乙女だ。可愛い。悔しいくらいに。


「デートのお誘い来たからお祓いはまた今度ねー」

「はいはい。」

「なんで残念そうなの?良かったじゃない。この世にいれる時間が増えて。」

「せっかく、ハルが僕のためにつくってくれた時間だったのに。」

「自分が消えるかもしれないのに?」

「好きな人が自分のために時間を捧げてくれたら嬉しいでしょ。」

「お祓いは、ゆうのためじゃなくて私のためだから!」


約束の時間が迫るとハルは忙しく準備を始めた。でも、化粧はいつもの何倍も丁寧だ。会社でも会ってるくせにな。最初にハルと出会った時のような化粧をしている。あの時も彼氏と会ってたのか、なんで送ってやらなかったんだと憤る。

「ハル。可愛いね。」

「な、何言ってんの!?幽霊に言われても嬉しくないからね!」

少し顔を赤らめて照れている。僕にも照れてくれることが嬉しい。そして、可愛い。ハルには思ったことを素直に言うのがいいことがわかった。


「あ!ついてこないでよね!?」

「大丈夫。デートには憑きません。ハルのかけがえのないデートの時間だし。」

そうは言ったけど、実際はそんなことじゃなくて、ただ単に彼氏の存在を知りたくないだけだ。幽霊にだって嫉妬心くらいある。出会って間もないくせに生意気だなと自分でも感じている。

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