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人生終わってからの恋  作者: 平間 日和
6/12

5


良い奴なのは分かった。だけど幽霊に付き纏われるのはごめんだ。そして、幽霊は帰路にも現れた。

「いい加減帰ってよ!」

「帰るって…家ないし。」

「ストーカーで警察に言うよ!?」

「それ本気で言ってる?」

幽霊は、馬鹿にしたように笑った。

警察に言ってもダメだ。信じるわけがない。私もまだ信じてないのに。

「ねぇ、幽霊見えるのは何回目?」

幽霊に尋ねられた。

「はじめて。」

「そうなんだ。」

「そもそも、私は幽霊の存在を信じてないタイプだから。今も夢なんじゃないかって思ってる。」

「ほっぺつねってみたら?」

「昨日から何度もつねってるけど必ず痛い。」

「じゃあ、現実だよ。」

「そうみたい。」


夜道は人が少なくて幽霊と喋っていても問題なかった。

「名前!教えてよ!」

「幽霊に名乗る名前などございません。」

「けち。」

幽霊はどう見たって私より若い。年下にケチと言われるなんて。

「年上に向かって失礼。」

「生まれたのは僕の方が早いと思うけど?」

そうか。幽霊は、私より若く死んだってことだ。

「可哀想って思った?」

「まぁ。」

「人間は、いつ死ぬか分からないから。今を精一杯生きた方がいいよ。」

「それじゃあ、こんな風に幽霊と話す時間が無駄かも。」

「説得力のあるアドバイスになると思ったんだけどな。」

「説得力はあるわね。」


そんな話をしていたら私の住むアパートに着いた。ポストから薬局からのキャンペーンのはがきを取り出して部屋へ向かう。

鍵を開けて、中へ入った。玄関に置いた昨日の盛り塩が減っている。

「あなた、舐めたの?」

「この塩は、あんまりおいしくなかったよ。」

「卵焼きは食べれないのに塩は舐められるのね。」

「卵焼き食べれないのバレてたんだ。」

「だって、減ってなかったもの。」

「そっかぁ。」

靴を脱いで、部屋へ上がる。幽霊も勝手についてくる。はがきをテーブルに投げ捨てる。幽霊がそのはがきに顔を近づけている。私は、その間に部屋着に着替えた。

すると、幽霊が興奮した様子でこちらへ向かってきた。

「わかったよ!あなたの名前!ようこ!」

「残念。違います。」

「嘘つかないでよ。これ!」

幽霊が指したのは先程投げ捨てたはがきの宛名。-永沢 陽子と書いてある。

「嘘じゃない。」

「ながさわようこって書いてあるじゃん。」

もう名前なんて隠さなくていいか。

「ながさわ、はるこだよ。」

「はるこ?」

「そう。はるこ。」

「じゃあ、ハルだね!」

「ハル?」

「うん。」

私はそれからこの幽霊に、ハルと呼ばれるようになる。

「私の名前だけ聞いて、あなたは名前を言わないのは不公平だと思う。」

「ささや、ゆう」

「ささや、ゆう?」

「あんまり、好きな名前ではなかったんだけど。」

「漢字は?」

「パンダの好物の笹に谷。それと優しいの優。」

「なんで、好きじゃないの?」

「優って女みたいって笑われたことがあって。」

「私はいいと思うけど。幽霊のゆうだね。」

私はそれから幽霊を、ゆうと呼ぶようになる。


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