第4話 まずはブラから。
片倉唯香はスリップを脱ぐ為に、腕を前に伸ばした。
そしてスリップという白くて長いトンネルから頭を抜け出した時、目の前には目を大きく見開いて、仁王立ちした橘いすゞがまだ立っていた。
「なに?」
驚いて思わず声を出す。
「気にしないで。いいから続けて」
そう言いながら、相変わらず瞬きなんかするものか! と言わんばかりに目を大きく見開いて、唯香の体をじっくりと眺めるいすゞ。
じっくりと見られる事に慣れていない唯香は、いすゞの目を意識して、少しもじもじしながら、スリップを腕から抜いた。
残りは白のAカップ、スクールブラと、これまた白の正面に小さな黄色いリボンの付いたハイカットタイプのショーツ。
唯香はなるべく目の前に立っているいすゞを意識しない様に、視線を斜め下に下げながら、若干緊張からか震える手でブラを脱ぐ為に手を交差させた。
「ちょっと待って! そのブラ、後ろにホックとかないの?」
「へ?」
いすゞの言葉に唯香は思わず変な声を漏らす。
「これは、上から着たり脱いだりするタイプだから…」
自分の今の格好と、ブラの話の恥ずかしさからか、唯香の声は徐々に消え入るように小さくなって行く。
「ふーん。スポーツブラみたいなものね。確かに形状も何処となく似ている。そんなブラだと小さな胸が更に小さくなるわよ。貴女ならそうね。普通の3/4カップブラがいいわよ。あれなら寄せて綺麗な谷間を作ってくれるし、可愛いのが一杯あるから。スクールシャツから薄っすら透けて見えれば、男子達も喜ぶわ♪」
「最後の男子はいらないから!」
顔を真っ赤にして思わず叫んだ唯香の声に、周りにいた女子達が着替えを終えて一斉に振り向く。
何事かと見られる視線に更に顔を赤くする唯香。
「なんでも、ないの」
誰にともなく小声でそういうのが精一杯だった。
「あらあらあら」
その様子に驚いた振りをするいすゞ。
そんないすゞの存在を無視するかの様に、紺色に肩紐から水着の縁にかけて白のラインが入ったスクール水着を着たクラスメイトの女子が二人、唯香の側に近寄って来た。
「どうしたの? 大きな声だして。早く着替えないと、始まっちゃうよ♪」
一人が声をかける。
「あ、うん。そうだね。急いで着替えるから、先に行ってて」
唯香は慌てて二人の方を向いてそう言うと、軽く微笑んで見せた。
その表情を見て安心したのか、女子二人も微笑む。
「そう。じゃあ、先行くね」
「遅れないでね♪」
彼女達は口々にそう言うと、唯香に背を向け、脇やお尻の水着の縁に指を入れ、その露になっている素肌を隠すかの様に水着を直しながら、歩いて出口の方へと向かって行った。
「行っちゃったね。お友達」
その去って行く後ろ姿を見ながらいすゞがポロリと呟いた。
その声に、いすゞがいた事を思い出した唯香は、そちらを振り返ると、ちょっときつい目つきで睨みつけた。
「あなたの所為でしょ! 着替えが遅くなったの!」
唯香のその言葉に逆にいすゞは微笑む。
「あら、じゃあ急いで着替えなくちゃ♪ 早くその小さな胸を見せて♪ 貴女は肌を見た感じ、なかなかの極上品よ。真っ白な雪の様な肌というのではないけれど、白桃の様な薄いピンクがかった肌だわ。桃の表面の様にその産毛が心地良さそう。貴女のその隠された小さな胸はもっと桃色なのかしら? 更にその先端は一体何色なのかしら?」
「んっ」
雄弁に語るいすゞの前に、もはや唯香は言葉も出ない。
ただ、この変態にだけは、絶対に裸を見られたくないとだけは強く思った。
「さあさあ、早く脱がないと授業に遅れるよ~♪ 脱げ♪ 脱げ♪ 脱げ!」
唯香が下着を脱ぎさるのを眼前で、今か今かと陽気に待ち構えるいすゞ。
腕を交差させ、スクールブラの下に手を掛けながらも、その腕を上げて目の前のいすゞの前に胸を曝け出す事に躊躇する唯香。
「そうだ!」
まさに九死に一生。土壇場で唯香はある事に気が付いたのだった。
急いでしゃがむと、足元の水泳バッグに手を入れる。
次の瞬間、立ち上がると大きく手をいすゞの方に突き出した。
「じゃじゃじゃじゃっじゃじゃーん! 巻きタオル~♪」
突き出した手に持っていたのは、オレンジや黄色のトロピカルな模様が入った、タオルの両端を繋ぎ合わせて、筒状にした巻きタオルだった。
「何て事はない。これを付けて着替えればいいのよ」
ご機嫌な表情でそう言うと、唯香は早速巻きタオルを頭から被り、ちょこんと頭だけ出した。
体は膝の辺りまでタオルで隠れている。その格好はまるで、てるてる坊主の様だ。
「最初からこうすれば良かった♪」
先程とは打って変わって上機嫌な唯香。
逆にいすゞは、途端につまらなそうな顔になったが、それでも負けじと言い返した。
「でもブラはどうするの? そのままではあのスクールブラは脱げない筈!」
「大丈~夫♪」
相変わらず上機嫌で唯香が笑いながらそう言うと、なんとブラは、ヒラヒラと下から落ちて来たのだった。
「別に肩紐の部分を下げれば、下からだって脱げるのよ♪」
そう言うといすゞを警戒してか、唯香はしゃがみ込むと急いでブラを掴み、水泳バッグにしまった。
いすゞはその姿を自失呆然、その場に立ち尽くして見ていた。
「ず…ずるい」
つづく
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