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第2話 体育はプールですか?

 「ところで委員長」

 唯香を抱きしめながらいすゞは言った。

 「何?」

 キョトンとした顔で、身長158センチの唯香は、163センチのいすゞの事を5センチ分仰ぎ見るようにして聞き返した。

 「明日の体育は確か、プールよね」

 「確かじゃなくて、間違いなくプールだけど」

 「海パン…」

 「へ!?」

 いすゞのその言葉に思わず唯香は、抱きしめられていた腕を振り払い、後ろに三歩四歩と後退りした。

 異様な雰囲気がいすゞの周りには漂い始めていた。

 「フフフフ、上半身裸で海パン一枚の静君と悠利君。プールの中でもいつもの様にふざけて絡み合うのかしらあの二人。裸で…あっ! エロい。エロ過ぎる~ 組んず解れつ絡みう幼さの残る華奢な二つの体。もしかして、間違って静君が悠利君の海パンの大事な所に触れてしまうかも知れない。それに反応して悠利君のは大きくなって、あっ、もぞもぞと恥ずかしそうにするかも知れない。そしたらきっとそんな悠利君を見て、静君は側に来て言うんだ~ 『馬鹿だな~』って! そしてまたきっと、海パンの悠利君の大事な所に触・れ・る。きゃー!」

 妄想を口に出して語るいすゞに、唯香は完全に引いていた。

 (付いていけない…)

 「あ、でも何で平泉静君が触る方で、長谷川悠利君が触られる方なの? 何か法則でもあるの?」

 唯香は引きながらもつい、思いついた事を尋ねた。

 「そんなの静君が攻めで、悠利君が受けに決まっているからでしょ! 悠利君は見るからに華奢で、顔も女の子っぽいんだから。彼はアレよ。総受けよ。総受け…クラスの男子全員に攻められる…ムフフフ」

 言いながらまたも一人妄想の中に入って行くいすゞ。

 大体の言っている事は理解したのか、頬を赤くしながら、そんなニヤニヤの止まらないいすゞを唯香は眺めていた。

 「そういう事…か。尋ねるんじゃなかった」

 

 一通り妄想も終えるといすゞは目付きをキリッとさせて、また話し始めた。

 「それでね。プールの時、私が考えたサプライズの為に、貴女にやって貰いたい事があるのよ」

 その口調と表情は先程までとは打って変わって、まるで鷹が獲物を狙うかの様な威圧感があった。

 「サプライズ? 頼み事?」

 おおよそろくな事ではないと気付きながらもまたもつい聞き返す唯香。

 「たいした事じゃないの。私がサインをしたら、貴女は水着を直すふりをして、わざと食い込ませてくれれば良いだけなの。Tバックみたいに。後ろなんて勢い余って、お尻の穴くらい出しちゃってもOKよ♪」

 「なっ! な、な、な、なんて事」

 「男子生徒全員への私からのサプライズ。きっと皆喜んで、海パンもっこりよ♪ 楽しい~」

 「嫌だ! そんな事絶対する訳ないでしょ! 何考えてるの! そんなに海パンもっこり見たいなら、自分ですればいいでしょ! 私はしません! そんな事したらもう二度と学校に来れないじゃない!」

 ある程度分っていた事とはいえ、予想以上のいすゞの提案に唯香は怒り心頭して怒鳴っていた。

 「私は駄目よ。私はプールは見学だから」

 明らかに怒っている唯香を冷ややかに眺めながら、当然の事の様にあっさりといすゞはそう言った。

 「見学? なんで」

 唯香は変わらず怒った表情のまま聞き返す。

 「だって私はあくまでも観察者だから。少し離れた所からオペラグラスで主に静君悠利君をメインに堪能させてもらうわ♪ だから貴女はチョコチョコ私の方を見て、サインを確認して頂戴」

 「だからしないって言ってるでしょ!」

 「あらあらあら。胸はまだ小さいけれど、ショートヘアでちょっと可愛い系の委員長のエロい姿は、結構需要あると思うんだけどな」

 「需要なんてなくて結構! 私はただの中学生! 橘さんの変態ぶりにはもう付いて行けません!」

 唯香は怒りながらそう叫ぶと、いすゞの前を堂々と横切り、生徒会室の引き戸の前まで行き、それを開けて出て行ってしまった。

 (まったく、正直じゃないんだから)

 いすゞは心の中でそう思いながら、唯香の去って行った引き戸の方を眺めていた。

 勘違いは色々とまだ、終らなかった。



 二年二組。

 橘いすゞのクラス。

 「いすゞちゃんと委員長、何処行ったのかまだ帰って来ないな」

 「委員長が連れて出て行ったから。さっきのスカートめくりの事だろ」

 「委員長のパンツか~。俺も見たかったな」

 「馬鹿野郎! 浮気する気か! 俺たちは『橘いすゞアイドル化計画』実行委員会だぞ。余所見をするな!」

 「は、はい! すいません!」

 「分ればいい。それにしても俺たちのアイドルいすゞちゃんは何でいつも静と悠利の方ばかり見ているんだ。何かあるのか? スカートめくりもあの二人の前だったし」

 「あんな美少女のいすゞちゃんがあの二人のどちらかを好きな筈はないから。きっと深い理由があるに違いない」

 「それにしてもあの二人。ムカつくな~」


 「お前らさー。影で色々言ってないで、先ずは橘と話したらいいんじゃねえの?」

 教室の隅の机に集まり、橘いすゞアイドル化計画実行委員会の定例会議をしていた浅野・井上・上田・遠藤・小野に声をかけたのは、野球部エースでイケメンの岡田靖之だった。

 「は、岡田か。お前みたいに色々恵まれた奴には俺たちの事は分らないよ。いすゞちゃんに声をかける度胸が俺たちにあると思うか。それに、そもそもいすゞちゃんには特殊なオーラが漂っているから、殆ど皆声かけられないでいるしな。アイドルの風格とでも言うか」

 「馬っ鹿じゃねーの。じゃあ俺が付き合ってもお前らは文句言えねーな」

 「なっ! 野球部エースでイケメンで、既に女子にモテモテのお前が出て来るのはズルイだろ~」

 「馬鹿浅野! それじゃ岡田を褒めまくっているだけだぞ!」

 「はっ! しまった~!」

 浅野と井上の話を岡田は、ニヤニヤしながら聞きながら、目線を斜め前の方で相変わらずプロレスごっことかをしている静と悠利の方に移した。

 「ふーん」

 数秒眺めてから岡田は目線を橘いすゞアイドル化計画実行委員会の方に戻した。

 「お前ら、明日の体育の時間のプールで、俺と一緒に実験してみないか? 何か反応が返って来るかも知れない」

 「は? 何の話だ?」

 「謎の転校生、橘いすゞが静と悠利の先に、何を見ているか? だ」




         つづく


 そして次回は色々な思惑を浮かべたプール回です♪


読んで頂いて、有難うございます。

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