次のステップ
何時の時代にあっても、やはり人間である以上、感情が先行し、意見の対立は起きる。それは避けようのない事である。故に徒党を組み派閥と言うものが出来る。滝沢の提案した無線LANについては、真向に意見が2分されたのだった。一つは絶賛、もう一方は今まで使用した事の無いコードで危険性を否定出来ないと言う意見だった。優すらも、これについては判断が出来ずに居た。
これは、派閥による意見の対立では無さそうだ。プログラムの有効性については、10名全員が認めていたからだ。
「優博士、今後これをどう進めるつもりでしょうか。優先LAN形式であれば、相当優れたものである事は、全員一致なのですが」
集まった10名の若いとは言え、19歳から21歳の現役大学生だ。とても優秀でそのまま博士号の認定が与えられるレベルだ。つまり、優が率いるこの特別チームは、日本国内で最高レベルのプログラム検討会議メンバーだと言う事になる。
そこで、優は一つの提案を出した。
「チームは違うんだけど、この無線LANは、もう一つのAI開発チームも参加して貰うって言うのはどうだろうか」
「え・・それは、特機事項では?優博士の一存で決まるものでは無いのでは?」
「そうなんだけどね、特にこの無線LANシステムは、定間1メートルなんだよ。それを超えても、少なくても十分な機能を発揮出来ない。つまりね、今これは自分がもう一つのプロジェクトである、AI開発ともかなりの部分でヒントと、関連性が出てくるんだ。いっそ、君達この両方のチームと合流するって言う事に反対はあるかい?元々君達はこのLANに関するプログラムは主体じゃ無かっただろう?もっと密度の高い追跡プログラムにしても、破壊プログラムにしても、それは主目的じゃ無かったんだから」
「勿論、AI開発に参加出来るのであれば、反対等ありません」
ここは全員が賛成した。しかし、渡辺が待ったをかける。
「三木博士・・そんな大それた提案は、今の竜胆総理のお立場をご存じですか?任期が特別法によって2年延長されたとは言え、もう政権党の地盤は風前の灯なんですよ」
「おっと、ここで政治とプロジェクトの事を混同しないで欲しいなあ。これは政治的な枠組が変わろうと、もう法律的に変わらない筈だよ?違う?政権が変わったら、法律が又変わるって言うのですか?」
珍しく優が血相を変えて渡辺に向かっている。