新章 西条との再会から・・
「妻鳥 環さんは、永井さんが研究されたのが先。しかし、その論文を盗用した形で修正して新に論文を書いたのが島先生と断言したわ。そこに三木未優さんも丁度、四国に大きなロボット製造工場建造の事で来ていたので、今度は一緒に夜食を取ろうと言われて、びっくりするやら、何やらで・・だって、お二人共貴女も知ったでしょうけど、とんでもない才女達ですものね。今は65歳、63歳となられて、息子さんや娘さんがあらゆる事業の指揮を取られているけど、凄い女傑で何度もTVや雑誌で取り上げられていて、著作も多い方達なのだから。私なんて博士号こそ取得していても、名も無き助教授だった頃ですもんね」
「いえ・・永井さんに初めて会った時、私は信念があって、自分と言うものをお持ちの方だと思いました。貴女こそ学者であると思うの。初めて私もこんな話になったから言いますが、島先生の知識は素晴らしいけれど、どこか教序的・・人間味の感じない部分がずっと心にあったの。しかし、永井さんはジェイ夫人との鉱物談義や、逸見さんの曲にも心から自然的な評価もしたし、好きなものは好きと素直に感情表現も出来る。私ね、三木未優さんにもそのポーカーフェイスで、無表情ながら端正なお顔の中でも、特に澄み切った眼を見て思ったの。ああ・・この方は心底信用出来る女性だと。そこに邪念等一切無いのよね」
「あ・・そこが同感部分。それは、美登さん、貴女からも感じるものでもある」
永井は、にこっと笑った。もう二人には確かな信頼関係が出来ていたのだ。
「美登さん、でもね、島先生は怖い方でもある。これからどうするの?」
永井はその会食の話をする前に、こう聞いた。美登はにこりとして、
「うふふ・・その事なんだけど、三木未優さんが主催するシンポジウムで、島先生の経済学の講座があるの、三木未優さんが飛び入りでその講座の討論会に参加するそうよ、永井さん」
「もう・・そんな動きになっているの。実はね、先ごろ竜胆総理が学術会議で島グループと称される6人を不認定したの。前代未聞の事と大騒ぎをしているけど、あのリークをしたのも島グループなのよ。島ネットワークと言っても、はっきり言うわ。敵対する派閥の非を徹底につき排除するの。そして、学内にその自分の息のかかった者を配置する。そんなネットワークでもある訳よ」
「知っていたわ」
「え・・」
美登があっさり肯定したので、永井は少し驚いたようだ。