新章 西条との再会から・・
島は、もう何も言えずここで美登と別れたのであった。美登に揺るぎない信念が見える以上、それ以上口を挟めるものでは無かった。確かに『ラブ・ピース』こそは、嘗て沢木 純氏が注力して活動していたグループであり、美登の宣言は、SKAグループと今後はやって行くと言う、これまで複数の者より、三木未優、妻鳥 環と美登が接触した情報を確実視する事となった。つまり、美登は島グループと今後は距離を開けると言う事だ。
だが、一人美登と共にやりたいと言う者が居た。永井が大学に辞表を提出したのだ。彼女と美登は、ある対話をしていた。
「美登さん、私が四国に居た理由の一つに、SKAグループ創始者の沢木 純氏の研究があるの。むしろ、私は島教授と一番近い者として周囲にも知られているし、活動もして来たわ。玲奈さんの件も私達が動き、匿いもした。けれど、貴女がもう別の舵を取った以上、私は貴女と共に動いて行きたい。適うかしら・・」
「永井さん、貴女はとても私にとっての身近な姉のような存在であり、ここまでも一緒にやって来たわ。貴女程の学識とマルチな才能が、野に埋もれている事が実に惜しいなと思っていたわ。だって、貴女の研究論文のかなりの部分は、島教授が盗用しているでしょう?知らなかったわ、この事は」
「・・美登さんは、その事を何時知ったの?」
「ある方が指摘された。確かに島先生には瞬間画像記憶能力があるのよね、しかし、それ以上の方は世の中には無数に居ると言う事。私にもそれはあるの。島先生以上とは決して言わないわ、勿論だけどね。でも、もっともっと凄い方に出会って少し分かった。その論文は理解出来てこそ、有効性が発揮されるけど、コピーではとても間違ったものになる。だって、そうでしょう?世の中の論文なんて殆ど、どこかの論文からの抜粋や、一文をくっつけ参照したもの。つまり、その記憶能力こそ、間違いまで正せる理解があってこそ、本物になる。つまり、永井さんが言いたい事は、その沢木 純氏と言う方になる」
「ふう・・やっぱり分かっていたんだ・・。ええ、島先生は私の研究論文を多用し、自分の論文として世に多く出している。しかし、その幾つかに間違いがあって、貴女もお会いしたんでしょ?妻鳥 環さんにも」
「ええ・・お会いしたわ」
「沢木 純氏の長女であり、この方にも瞬間画像認識能力があるけど、妹である三木未優さんには到底及ばないと言っていらしたわ。その三木未優さんも父である沢木 純氏には遠く及ばないと。美登さんが言いたかった事は、そこよね。私は、四国に居る時にそもそものSKAグループの発祥の地は、ここであり、本社も随分長い間あってお墓もある。そんな中で今は支店となっているけど、農業分野関連の会合で妻鳥 環さんにお会いした事があるの。私の論文を読まれた事があると言う事で、その時に、素晴らしい論文だと、参考になりましたと言われた後に、少しその時は改良工事中の老人医療施設の件で来られていたんだけど、時間があるかしら?と呼ばれた応接室で、医療と農業分野は密接なつながりもあると言う話の中から、論文の3か所の間違いを指摘されたのよ。当時はその論文内容が正しいと私は思っていて、そのままにしていたけれど、妻鳥 環さんは、不自然よねと言いながら、島先生の論文の中から、その部分を修正されたものを出して来られたのよ」
「ええっ!そんな事が?」