第五部 その1動く・・
「聞いているよ、もう注目がそこに集中しているようだけど、独裁政権と言うのは、常に戦争をする事で自分の存在感を示す必要性があるんだよね。尤も、もうこの独裁政権を終わらせる事は困難だ。また、仮にこの大統領を抹殺しても、そう言う組織が出来上がっている以上、第二、第三の者が首を擡げる。しかし、それは血と血を争う事にはなろうがね」
「経営者としてどうなの?一志君。影響は大きいでしょう?」
「ああ・・その事を心配しているんだよ。エネルギー価格が高騰すれば、もろ経費に響くからね。そして、国内の物価は上がる。デフレ時の影響下で、中小企業の給料が上がっていない現状下、国民は相当家計に響くよ。ここで賃上げなんかしたら、経営そのものが傾く所が出て来る」
「輸入品の高騰ね・・」
美登は憂い顔で頷いた。
「また、国債に頼るんだろうが、前政権でじゃぶじゃぶとお札を刷り、金利を下げた事で一時的に景気が上向いたように見えるかも知れないが、公共事業に大手ゼネコンや、建設業が潤っただけで、結局は借金まみれの中小企業の経営は苦しいばかり。そんな見せかけの経済対策は、失敗だったんだ。でも、それは全く効果が無かった訳じゃない。デフレが解消されたからね。でも、そこへこれだ。世界経済を破壊するとんでもない暴挙だよね。しかし、長引けば自国への間違い無く大ダメージになる。今度は高インフラだからね」
「ええ・・私もそう思う。一志君、ここで元老達の動きがあると思うのよ」
「ああ・・そうか、良治とは最近良く会っているようだけど、この件であいつがどう思うかなんて聞けないよね。柳社長にしてもそうだ。もう世界各国へ飛んでいるようだからね」
「動いていると思って間違いないのよね?」
「ああ・・当然だよ。総理には米国から戦争資金の提供を求められるだろう。現米国政権は必ず、武器供与、資金提供をする。同盟国が戦争を放棄し、非核三原則があろうとも何らかの形で資金提供がある。この国に今必要な金をどんどん外に出していかないとならないんだよ」
「ここで聞くけど、出すだけ?入って来る算段もある訳でしょう?」
一志はにこりとした。
「はは・・だからこそ元老が動くんだろう。第三国を通して当然武器供与がある。しかし、この者達は、どちらにでも提供出来るんだよ」
「・・自国の為じゃない、個人の為なら何でもありって事よね」