第五部 登壇の巻
「説く・・それが宗教的活動の意義ですか?今、私がお聞きした社会情勢をどう思われるか?のお答えにはなっていませんわ。貴女の宗教家としての活動を聞く場ではありませんけど、今のお言葉こそ、それって、一つの狭義のものになりませんか?一方的にご自身の信条を伝えるだけのものにならないでしょうか」
「あの!とても心外な言葉に聞こえますが?私の宗教はそんな安っぽいものでは決してありません。そもそも・・」
美登は反論させず、切り捨てた。
「重ねて申し上げますが、貴女の宗教観を聞く場ではありませんよ?その場で今聞こえて来る様々な不満、不安、抱える問題等。どう考えているかと言う事を聞いているのです。では、貴女はその聞く場を提供していると言う事なのですか?」
「だから、そう言う活動を通して、心の病を取り除こうとしているのです」
「いえいえ・・聞くと言う事をされておられますか?と言う問いです」
「勿論聞くと言う事と、それが悩みなり、解決出来ない事を相談する場ですから」
「聞く・・と言う事を主体としておられるのですね?」
「それは、主体では無く、まず間違った考えを正しい方向に導いてあげる為にです」
「正しい?それは、貴女の御信条である宗教感によるものとして?」
「今申し上げた宗教活動こそが、その場ですが」
「いえ、違います。そのテーマを主題にした場では無いですよね?貴女の宗教観を説法する場と、今の議論は違うと言う事を申し上げているのです」
美登は、どんどんと切り込んでいく。こう言う手法なのだ。
「良し、これでは討論会にならないな。美登さんに3人とも隙間なく攻め込まれて行くし、彼らでは役不足だよ。反論する事も出来ていない。よし、俺も参加する」
良治は近くに居たようだ。このやりとりを聞き、腰を上げるのだった。
「だから、重ねて、布教活動が今の実践内容とお答えしているんです」
「あの・・本日のテーマに沿って私は第一の問題提起をしております。秋山さんは、法改正をするべきだと仰った。憲法学者でもあられるのならば、どう言う具体的な法整備や、ご方便をお持ちか、或いは執筆活動をなさっておられるか、学識者の会議であるとか、TV、ラジオ等の媒体、著作、講演等・・この事についてご自身の言葉が著作にあるのかをお聞きしました。会場の皆様、いかがですか?登壇者様達にその答えがありますか?今の会話の中で」
美登が会場に質問をぶつけた。