第五部 登壇の巻
「いえ、それこそ今、人の心と言うものにある病を救おうと思っているのです」
「今の情報錯乱、誤情報発信を心の病と言われるのですか?」
「勿論、様々な要因があるでしょう。しかし、この世の中の事情は個々にとって、とても窮屈なもの。そこで自分の心の悩みを訴える機会が少ない事に尽きるのだと思います」
「でも、断言に近いお言葉に聞こえますけど・・一般論的ですね、それは」
美登が間髪を入れずに切り込んだ。
「ですので、我々はそう言う場を提供出来る場が必要だと思っております」
美登はその答えを無視した。そんな場等宗教であるのだから、当たり前の事。どこで、どうやっての答えになっていないのである。
「はい・・では、秋山さんに戻ります。どう言う活動をなさっておられますか?」
「それこそ、現政治的な側面から、各界の者と交流する事で、その声を文筆活動や色んな媒体で討論して行く事を主としております」
どこで、どうやって、どんな媒体での事が抜けている。美登はそう言う事を質問しているのだ。会場もざわざわとし始めている。
「それも、やはり具体的ではありませんわね・・それには余りにも一般的に見ても秋山さんの露出が少ない・・つまり、ここで披露されていない事も含めて、憲法のどこを改憲しようと言われるのですか?勿論そうなれば、政治家との接触や、もっと大学・有識者の会議が必要になりますわよね」
「はい・・そうなります」
どこでが答えになっていなかった。どう言う大学なり、知識者、会議等を通じてそう言う活動を行っていると言う返答が無いままだ。秋山は、それ以上深い部分まで返答しなかった。やはり出来ないのだろう。追い詰められているのである。会場の者達は、3人の登壇者の底がまるで知れるよと言う雰囲気が作られようとしている事を感じ始めていた。言葉に全く重みが無いのだ。一般論を述べるのなら、討論会の意味すら成さない。三波がまたそこで割って入る、三人はタッグだと勘づき始めた会場内は少しざわざわとする。
「私の考えの中では人間本来の生き様、心を保つ事ですわ。その事を説くのです」
美登は、今度は間髪を入れずにそこへ切り込んだ。