40/803
出会い
「言いたくなければそれでもいいさ。でも俺達の夜もここまでだ」
加藤の言葉は、冷たい響きをもって聞こえた。
沈黙が流れる。
「一緒に死んでくれる?」
由利子が聞いた。
「聞こうか?・・それからだ」
「駄目だわ、それじゃ・・」
「もう一度だけ言う。死ぬ人間にとっては、恥も無ければ外聞も無い、君がこの時にためらうのは、彼に残された言葉があるからだろう、生きろ・と。一度俺は死んだ人間だ。そして、今、その全てを失った。俺を信用できなければこの場で殺してくれ。俺は美弥子と約束したんだ。生きるって。だから自分では死ねない」




