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出会い
「・・ああ、判っている・しかし、俺と美弥子の人生を賭けた広告代理店がその代償になった事を知っている妹は、俺の前には二度と立つ事は出来無いと思っているだろう・・でも、肉親の血のつながりなんて決して消える事は無いのに・・会社は俺と美弥子の命と思うものだったが、それと妹と比べる事なんか・・それが俺を二重に苦しめている原因だ・」
もう由利子は、こぼれる涙をこらえることが出来なかった。加藤のその崇高な魂がここに見えたのだ。その苦悩がありながら、なお由利子の魂すら揺さぶる大きな暖かな人間像が、はっきりと映っていた。




