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出会い
二筋、三筋・・加藤の頬に涙がこぼれた。由利子の枯れた哀しみがよみがえって来るように、彼女自身も、それにつられて目が潤んだ。加藤の涙は全身全霊で美弥子を愛した証だったのだ。
「彼女は癌だった。もう、手遅れと言う医者の言葉に、俺の目の前が真っ暗になってしまった。俺は・・・運命を呪った。全てがうまく行きかけていたのに、やっと俺達の努力が報われようとしていたのに・・美弥子のいない会社など考えられなかった。日増に衰弱していく彼女、もう、病床から立ち上がる事はなかった。でも、苦しいだろうに、会社の心配ばかりして・・う、うう・・」




