3/803
出会い
その時になって、初めて男は女の方を向く。
「や・・これは失礼。隣にこんな美人が座っていようとは」
男の間の悪さと、抑揚のない響きに女は眉に不機嫌なものを浮かべたが、タイミングを測った様にマスターが、ジンを男の前にすっと置いた。
「あなたが?」
「ごめんなさい、ご迷惑だったかしら」
「とんでもない、酒はジン、音楽はジャズ。女性に酒を奢って戴くのは初めてですが、喜んで戴きます」
グラスをカチンと合わすと、男は改めて女を見た。程良い照明の中で、その美しさは眩いばかりだった。